異世界もふもふのお医者さんっ!! 〜獣人村でみんなから愛されるお医者さん目指します〜

花月夜れん

文字の大きさ
8 / 42
第一章

第8話 本当か嘘かって何?

しおりを挟む
 そのまま寝てしまった私は、朝お腹の音と一緒に目が覚めた。

「おはよ、ハルカ! ごはん食べるか?」
「おはよう、カナタ。うん、ごはん食べたい」
「わかった! 用意するな」

 布の仕切りの向こう側にカナタが消える。ベッドの横に昨日着ていた服がたたんで置いてあった。

『おはようございます、ハルカ』
『おはようラム』
『ハルカ、おはようモャ』

 夢じゃなかった。三人はそれぞれ挨拶をしてくれた。

「おはよう、もふちゃんー。ライムー。ソラー」

 挨拶を返し、ベッドから出る。
 昨日の服を着て私はカナタが出た布をめくった。その先からとてもいい匂いがしてきた。

「野菜食べられるか?」
「うん、大丈夫」
「熱いから気をつけろ」
「ありがと」

 木で出来たテーブルと椅子。座るところには布で出来た座布団みたいなのが置いてあった。
 無いとちくちくしそうだもんね。切ったそのままみたいな丸太テーブルと丸太椅子だった。
 テーブルに並ぶのは湯気があがるドロッとした緑色のスープ。中に焼いたお肉の欠片みたいなのとキャベツや白菜みたいに見える葉っぱが角切りでいくつか浮かんでいた。

「俺は野菜苦手だから、これ嫌いなんだけど。もっと肉いっぱいのごはんが良かったよな?」
「ううん。私、野菜好きだよ。病気に勝つ体になるにはお野菜いっぱい食べなさいって教えてもらったし……」

 お母さんのこと思い出しそうになって、鼻をすすった。カナタがここだぞと教えてくれた椅子に腰掛け、手を合わせる。

「いただきます」
「何だそれ、変な食事前の挨拶だな」

 カナタが不思議そうに合掌する様子を見てくる。そっか、ここじゃあいただきますはしないんだ。

「カナタ達はしないの?」
「ん、俺達? 俺達はこうだぞ」

 カナタは手を合わせるのではなく、胸の前でお祈りするみたいに手を組む。
 その手に頭をつけ目をつぶった。

「今日も食べられる事に感謝を……って、こんな感じだ。俺一人のときはやったりやらなかったりだけどな」
「こらっ」

 ペシリとスクさんに頭を叩かれ、カナタが渋い顔になる。

「食事に感謝をきちんとしてないと、ありつけなくなるよ」
「はーい」

 スクさんは私の方を向き、笑顔で挨拶した。

「おはよう、ハルカちゃん」
「おはようございます。スクさん」
「そうそう、お連れちゃん達は朝ごはん何にするんだい? 魔物が食べる物は流石にわからなくてねぇ」
「あ、そっか。ライム、ソラ、もふちゃんはごはん何食べる?」
『何でも食べるラム。でも熱いのは好かんラム』
『草! 草食べるモャ』
『ハイ、ハルカ。スキルのワタシにごはんは必要ありません』

 三者三様の答えをもらい、私は困ってしまった。

『ハルカ、朝の散歩に出てくれればその辺で草食べるモャ』
『ライムもそれでいいラム』
「そっか。スクさん、このあと朝散歩に出てもいいですか? 二人ともお外で草を食べたいって」

 スクさんは少し珍しいものを見るようにこちらを見ていた。

「そうかい。わかった。本当に魔物使いなんだねぇ。苦労も多かっただろう」

 頭を優しく撫でられた。髪の毛がぐしゃぐしゃになってしまったけど、なんだか嬉しかった。お母さんもお父さんも頭を撫でてくれることがなかったから。

「さぁ、あったかいうちに食べな。冷えると苦味が出てくるよ」
「え!? いただきます!」

 スプーンを持って、一匙口に運ぶ。
 お肉の出汁が大根おろしみたいなスープに絡んで美味しかった。

「美味しいです」
「そうか、良かった。わたしはミラの世話をしてるから、何かあったら呼んでおくれ」

 スクさんは立ち上がり、ミラのいる部屋に入っていった。それを見送ったカナタはふぅと大きく息を吐いた。

「すげぇ、母ちゃんが明るい顔だ。久しぶりに見れた。あんな顔。ありがとうな、ハルカ」

 お礼を言われ、顔があつくなりなった。なんだか照れくさい。スープを掬ってふーふーしながら私は小さく「うん」と答えた。
 まだ、毒の方は残ってる。それは伝えておかないと。いつ再発するかわからない。そうだ。散歩の時に一緒に解毒薬の材料を探そう。

「あのね、カナタ。一緒に探して欲しい物があるの」
「ん? なんだ?」
「ミラの――」
「ミラがどうした?」

 冷めたら苦くなるという言葉を思い出し、私は先に食べ終える事にした。
 せっかく用意してくれたごはんを無駄にしないために。

「ごめん、あとで言うね」
「おぅ、そうだな」
「カナタは食べないの?」

 じーっと見られながら食事するの、なんだか恥ずかしいんだけど……。

「俺はもう食べた」

 という事で、食事が終わるまでずっと眺められながらだった。
 一人きりの食事じゃないって嬉しいけど、すごく恥ずかしいんだね。

 ◇◇◇

「何、肺毒症!」
「知ってる? カナタ」
「知らない!」

 全力の否定にカクッと力が抜ける。

「えっと肺はわかる?」
「肺ってなんだ?」
「うぅ、えっと息をすると胸のとこが動くよね」
「動くな!」
「それ、それが肺」
「そうか。で、肺がなんだ?」
「その肺にミラは毒があるの」
「毒……」
「毒はわかる?」

 カナタはこくりと頷く。

「なら、薬草だけじゃ治らなかったのはそのせいか」
「そう、だと思う」
「でも、解毒薬なんて俺のうちじゃ買えないぞ。回復薬だって……」
「あの、今から言う事、カナタは秘密にしてくれる?」
「なんだ?」

 言っても大丈夫だろうか。調合も珍しいスキルだって言ってたよね。

『ハルカ、朝言った風に言うラム』

 わかってる。私はライムに頷いてから、カナタに言った。

「実は、このライムが調合スキル持ちなの」
「………………」

 目がまんまるで可愛い。そんなにびっくりしたのかな?

「えぇぇぇぇぇぇぇ!?」

 長いタメの後、驚きの声をカナタはあげた。

「そ、そうか。じゃあ、あの薬も」
「うん。カナタも見たでしょ? あそこにある材料を組み合わせればライムはいろんなお薬がつくれるみたい。ただ、解毒薬の材料は持ち合わせがなくて、……って聞いてる? カナタ」

 キョロキョロと辺りを見回す彼。何してるんだろ。

「いやいや、そんなのバレたらお前ら捕まって売り飛ばされちゃうぞ。てか、今までよく無事だったな」

 あ、やっぱり調合でもそうなっちゃうんだ。これは想像よりずっと回復というものが貴重なのかもしれない。

「これに気がついたのは本当に最近で(というか昨日だし)、ライムは他人の為に作る気はないんだって。だから」
「それこそ、ハルカの為ならってことだろ。いいか、絶対に誰にも言うな。俺以外には絶対に」
「うん」

 本気で心配してくれてる目だ。病院にずっといた私は人の目を見て本当か嘘かをなんとなくわかるようになっていた。お母さんも先生も何度か嘘をついていた。二人とも笑顔だったのに。
 だから、わかる。カナタは私の事を心配してくれてる。これは嘘じゃない。

「私、ミラを助けてあげたい。だから、手伝って」
「もちろんだ。むしろ俺からお願いするのが筋じゃないか?」
「そ、そうかな」
「そうだろ」

 二人でぷっと吹き出しえへへと笑いあう。そして、私達は解毒薬の材料、解毒草を探し始めた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

憧れのスローライフを異世界で?

さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。 日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。

こわいかおの獣人騎士が、仕事大好きトリマーに秒で堕とされた結果

てへぺろ
恋愛
仕事大好きトリマーである黒木優子(クロキ)が召喚されたのは、毛並みの手入れが行き届いていない、犬系獣人たちの国だった。 とりあえず、護衛兼監視役として来たのは、ハスキー系獣人であるルーサー。不機嫌そうににらんでくるものの、ハスキー大好きなクロキにはそんなの関係なかった。 「とりあえずブラッシングさせてくれません?」 毎日、獣人たちのお手入れに精を出しては、ルーサーを(犬的に)愛でる日々。 そのうち、ルーサーはクロキを女性として意識するようになるものの、クロキは彼を犬としかみていなくて……。 ※獣人のケモ度が高い世界での恋愛話ですが、ケモナー向けではないです。ズーフィリア向けでもないです。

一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?

たまご
ファンタジー
 アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。  最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。  だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。  女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。  猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!! 「私はスローライフ希望なんですけど……」  この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。  表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

異世界ほのぼの牧場生活〜女神の加護でスローライフ始めました〜』

チャチャ
ファンタジー
ブラック企業で心も体もすり減らしていた青年・悠翔(はると)。 日々の疲れを癒してくれていたのは、幼い頃から大好きだったゲーム『ほのぼの牧場ライフ』だけだった。 両親を早くに亡くし、年の離れた妹・ひなのを守りながら、限界寸前の生活を続けていたある日―― 「目を覚ますと、そこは……ゲームの中そっくりの世界だった!?」 女神様いわく、「疲れ果てたあなたに、癒しの世界を贈ります」とのこと。 目の前には、自分がかつて何百時間も遊んだ“あの牧場”が広がっていた。 作物を育て、動物たちと暮らし、時には村人の悩みを解決しながら、のんびりと過ごす毎日。 けれどもこの世界には、ゲームにはなかった“出会い”があった。 ――獣人の少女、恥ずかしがり屋の魔法使い、村の頼れるお姉さん。 誰かと心を通わせるたびに、はるとの日常は少しずつ色づいていく。 そして、残された妹・ひなのにも、ある“転機”が訪れようとしていた……。 ほっこり、のんびり、時々ドキドキ。 癒しと恋と成長の、異世界牧場スローライフ、始まります!

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

【完結】平凡な魔法使いですが、国一番の騎士に溺愛されています

空月
ファンタジー
この世界には『善い魔法使い』と『悪い魔法使い』がいる。 『悪い魔法使い』の根絶を掲げるシュターメイア王国の魔法使いフィオラ・クローチェは、ある日魔法の暴発で幼少時の姿になってしまう。こんな姿では仕事もできない――というわけで有給休暇を得たフィオラだったが、一番の友人を自称するルカ=セト騎士団長に、何故かなにくれとなく世話をされることに。 「……おまえがこんなに子ども好きだとは思わなかった」 「いや、俺は子どもが好きなんじゃないよ。君が好きだから、子どもの君もかわいく思うし好きなだけだ」 そんなことを大真面目に言う国一番の騎士に溺愛される、平々凡々な魔法使いのフィオラが、元の姿に戻るまでと、それから。 ◆三部完結しました。お付き合いありがとうございました。(2024/4/4)

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

処理中です...