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第一章
第8話 本当か嘘かって何?
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そのまま寝てしまった私は、朝お腹の音と一緒に目が覚めた。
「おはよ、ハルカ! ごはん食べるか?」
「おはよう、カナタ。うん、ごはん食べたい」
「わかった! 用意するな」
布の仕切りの向こう側にカナタが消える。ベッドの横に昨日着ていた服がたたんで置いてあった。
『おはようございます、ハルカ』
『おはようラム』
『ハルカ、おはようモャ』
夢じゃなかった。三人はそれぞれ挨拶をしてくれた。
「おはよう、もふちゃんー。ライムー。ソラー」
挨拶を返し、ベッドから出る。
昨日の服を着て私はカナタが出た布をめくった。その先からとてもいい匂いがしてきた。
「野菜食べられるか?」
「うん、大丈夫」
「熱いから気をつけろ」
「ありがと」
木で出来たテーブルと椅子。座るところには布で出来た座布団みたいなのが置いてあった。
無いとちくちくしそうだもんね。切ったそのままみたいな丸太テーブルと丸太椅子だった。
テーブルに並ぶのは湯気があがるドロッとした緑色のスープ。中に焼いたお肉の欠片みたいなのとキャベツや白菜みたいに見える葉っぱが角切りでいくつか浮かんでいた。
「俺は野菜苦手だから、これ嫌いなんだけど。もっと肉いっぱいのごはんが良かったよな?」
「ううん。私、野菜好きだよ。病気に勝つ体になるにはお野菜いっぱい食べなさいって教えてもらったし……」
お母さんのこと思い出しそうになって、鼻をすすった。カナタがここだぞと教えてくれた椅子に腰掛け、手を合わせる。
「いただきます」
「何だそれ、変な食事前の挨拶だな」
カナタが不思議そうに合掌する様子を見てくる。そっか、ここじゃあいただきますはしないんだ。
「カナタ達はしないの?」
「ん、俺達? 俺達はこうだぞ」
カナタは手を合わせるのではなく、胸の前でお祈りするみたいに手を組む。
その手に頭をつけ目をつぶった。
「今日も食べられる事に感謝を……って、こんな感じだ。俺一人のときはやったりやらなかったりだけどな」
「こらっ」
ペシリとスクさんに頭を叩かれ、カナタが渋い顔になる。
「食事に感謝をきちんとしてないと、ありつけなくなるよ」
「はーい」
スクさんは私の方を向き、笑顔で挨拶した。
「おはよう、ハルカちゃん」
「おはようございます。スクさん」
「そうそう、お連れちゃん達は朝ごはん何にするんだい? 魔物が食べる物は流石にわからなくてねぇ」
「あ、そっか。ライム、ソラ、もふちゃんはごはん何食べる?」
『何でも食べるラム。でも熱いのは好かんラム』
『草! 草食べるモャ』
『ハイ、ハルカ。スキルのワタシにごはんは必要ありません』
三者三様の答えをもらい、私は困ってしまった。
『ハルカ、朝の散歩に出てくれればその辺で草食べるモャ』
『ライムもそれでいいラム』
「そっか。スクさん、このあと朝散歩に出てもいいですか? 二人ともお外で草を食べたいって」
スクさんは少し珍しいものを見るようにこちらを見ていた。
「そうかい。わかった。本当に魔物使いなんだねぇ。苦労も多かっただろう」
頭を優しく撫でられた。髪の毛がぐしゃぐしゃになってしまったけど、なんだか嬉しかった。お母さんもお父さんも頭を撫でてくれることがなかったから。
「さぁ、あったかいうちに食べな。冷えると苦味が出てくるよ」
「え!? いただきます!」
スプーンを持って、一匙口に運ぶ。
お肉の出汁が大根おろしみたいなスープに絡んで美味しかった。
「美味しいです」
「そうか、良かった。わたしはミラの世話をしてるから、何かあったら呼んでおくれ」
スクさんは立ち上がり、ミラのいる部屋に入っていった。それを見送ったカナタはふぅと大きく息を吐いた。
「すげぇ、母ちゃんが明るい顔だ。久しぶりに見れた。あんな顔。ありがとうな、ハルカ」
お礼を言われ、顔があつくなりなった。なんだか照れくさい。スープを掬ってふーふーしながら私は小さく「うん」と答えた。
まだ、毒の方は残ってる。それは伝えておかないと。いつ再発するかわからない。そうだ。散歩の時に一緒に解毒薬の材料を探そう。
「あのね、カナタ。一緒に探して欲しい物があるの」
「ん? なんだ?」
「ミラの――」
「ミラがどうした?」
冷めたら苦くなるという言葉を思い出し、私は先に食べ終える事にした。
せっかく用意してくれたごはんを無駄にしないために。
「ごめん、あとで言うね」
「おぅ、そうだな」
「カナタは食べないの?」
じーっと見られながら食事するの、なんだか恥ずかしいんだけど……。
「俺はもう食べた」
という事で、食事が終わるまでずっと眺められながらだった。
一人きりの食事じゃないって嬉しいけど、すごく恥ずかしいんだね。
◇◇◇
「何、肺毒症!」
「知ってる? カナタ」
「知らない!」
全力の否定にカクッと力が抜ける。
「えっと肺はわかる?」
「肺ってなんだ?」
「うぅ、えっと息をすると胸のとこが動くよね」
「動くな!」
「それ、それが肺」
「そうか。で、肺がなんだ?」
「その肺にミラは毒があるの」
「毒……」
「毒はわかる?」
カナタはこくりと頷く。
「なら、薬草だけじゃ治らなかったのはそのせいか」
「そう、だと思う」
「でも、解毒薬なんて俺のうちじゃ買えないぞ。回復薬だって……」
「あの、今から言う事、カナタは秘密にしてくれる?」
「なんだ?」
言っても大丈夫だろうか。調合も珍しいスキルだって言ってたよね。
『ハルカ、朝言った風に言うラム』
わかってる。私はライムに頷いてから、カナタに言った。
「実は、このライムが調合スキル持ちなの」
「………………」
目がまんまるで可愛い。そんなにびっくりしたのかな?
「えぇぇぇぇぇぇぇ!?」
長いタメの後、驚きの声をカナタはあげた。
「そ、そうか。じゃあ、あの薬も」
「うん。カナタも見たでしょ? あそこにある材料を組み合わせればライムはいろんなお薬がつくれるみたい。ただ、解毒薬の材料は持ち合わせがなくて、……って聞いてる? カナタ」
キョロキョロと辺りを見回す彼。何してるんだろ。
「いやいや、そんなのバレたらお前ら捕まって売り飛ばされちゃうぞ。てか、今までよく無事だったな」
あ、やっぱり調合でもそうなっちゃうんだ。これは想像よりずっと回復というものが貴重なのかもしれない。
「これに気がついたのは本当に最近で(というか昨日だし)、ライムは他人の為に作る気はないんだって。だから」
「それこそ、ハルカの為ならってことだろ。いいか、絶対に誰にも言うな。俺以外には絶対に」
「うん」
本気で心配してくれてる目だ。病院にずっといた私は人の目を見て本当か嘘かをなんとなくわかるようになっていた。お母さんも先生も何度か嘘をついていた。二人とも笑顔だったのに。
だから、わかる。カナタは私の事を心配してくれてる。これは嘘じゃない。
「私、ミラを助けてあげたい。だから、手伝って」
「もちろんだ。むしろ俺からお願いするのが筋じゃないか?」
「そ、そうかな」
「そうだろ」
二人でぷっと吹き出しえへへと笑いあう。そして、私達は解毒薬の材料、解毒草を探し始めた。
「おはよ、ハルカ! ごはん食べるか?」
「おはよう、カナタ。うん、ごはん食べたい」
「わかった! 用意するな」
布の仕切りの向こう側にカナタが消える。ベッドの横に昨日着ていた服がたたんで置いてあった。
『おはようございます、ハルカ』
『おはようラム』
『ハルカ、おはようモャ』
夢じゃなかった。三人はそれぞれ挨拶をしてくれた。
「おはよう、もふちゃんー。ライムー。ソラー」
挨拶を返し、ベッドから出る。
昨日の服を着て私はカナタが出た布をめくった。その先からとてもいい匂いがしてきた。
「野菜食べられるか?」
「うん、大丈夫」
「熱いから気をつけろ」
「ありがと」
木で出来たテーブルと椅子。座るところには布で出来た座布団みたいなのが置いてあった。
無いとちくちくしそうだもんね。切ったそのままみたいな丸太テーブルと丸太椅子だった。
テーブルに並ぶのは湯気があがるドロッとした緑色のスープ。中に焼いたお肉の欠片みたいなのとキャベツや白菜みたいに見える葉っぱが角切りでいくつか浮かんでいた。
「俺は野菜苦手だから、これ嫌いなんだけど。もっと肉いっぱいのごはんが良かったよな?」
「ううん。私、野菜好きだよ。病気に勝つ体になるにはお野菜いっぱい食べなさいって教えてもらったし……」
お母さんのこと思い出しそうになって、鼻をすすった。カナタがここだぞと教えてくれた椅子に腰掛け、手を合わせる。
「いただきます」
「何だそれ、変な食事前の挨拶だな」
カナタが不思議そうに合掌する様子を見てくる。そっか、ここじゃあいただきますはしないんだ。
「カナタ達はしないの?」
「ん、俺達? 俺達はこうだぞ」
カナタは手を合わせるのではなく、胸の前でお祈りするみたいに手を組む。
その手に頭をつけ目をつぶった。
「今日も食べられる事に感謝を……って、こんな感じだ。俺一人のときはやったりやらなかったりだけどな」
「こらっ」
ペシリとスクさんに頭を叩かれ、カナタが渋い顔になる。
「食事に感謝をきちんとしてないと、ありつけなくなるよ」
「はーい」
スクさんは私の方を向き、笑顔で挨拶した。
「おはよう、ハルカちゃん」
「おはようございます。スクさん」
「そうそう、お連れちゃん達は朝ごはん何にするんだい? 魔物が食べる物は流石にわからなくてねぇ」
「あ、そっか。ライム、ソラ、もふちゃんはごはん何食べる?」
『何でも食べるラム。でも熱いのは好かんラム』
『草! 草食べるモャ』
『ハイ、ハルカ。スキルのワタシにごはんは必要ありません』
三者三様の答えをもらい、私は困ってしまった。
『ハルカ、朝の散歩に出てくれればその辺で草食べるモャ』
『ライムもそれでいいラム』
「そっか。スクさん、このあと朝散歩に出てもいいですか? 二人ともお外で草を食べたいって」
スクさんは少し珍しいものを見るようにこちらを見ていた。
「そうかい。わかった。本当に魔物使いなんだねぇ。苦労も多かっただろう」
頭を優しく撫でられた。髪の毛がぐしゃぐしゃになってしまったけど、なんだか嬉しかった。お母さんもお父さんも頭を撫でてくれることがなかったから。
「さぁ、あったかいうちに食べな。冷えると苦味が出てくるよ」
「え!? いただきます!」
スプーンを持って、一匙口に運ぶ。
お肉の出汁が大根おろしみたいなスープに絡んで美味しかった。
「美味しいです」
「そうか、良かった。わたしはミラの世話をしてるから、何かあったら呼んでおくれ」
スクさんは立ち上がり、ミラのいる部屋に入っていった。それを見送ったカナタはふぅと大きく息を吐いた。
「すげぇ、母ちゃんが明るい顔だ。久しぶりに見れた。あんな顔。ありがとうな、ハルカ」
お礼を言われ、顔があつくなりなった。なんだか照れくさい。スープを掬ってふーふーしながら私は小さく「うん」と答えた。
まだ、毒の方は残ってる。それは伝えておかないと。いつ再発するかわからない。そうだ。散歩の時に一緒に解毒薬の材料を探そう。
「あのね、カナタ。一緒に探して欲しい物があるの」
「ん? なんだ?」
「ミラの――」
「ミラがどうした?」
冷めたら苦くなるという言葉を思い出し、私は先に食べ終える事にした。
せっかく用意してくれたごはんを無駄にしないために。
「ごめん、あとで言うね」
「おぅ、そうだな」
「カナタは食べないの?」
じーっと見られながら食事するの、なんだか恥ずかしいんだけど……。
「俺はもう食べた」
という事で、食事が終わるまでずっと眺められながらだった。
一人きりの食事じゃないって嬉しいけど、すごく恥ずかしいんだね。
◇◇◇
「何、肺毒症!」
「知ってる? カナタ」
「知らない!」
全力の否定にカクッと力が抜ける。
「えっと肺はわかる?」
「肺ってなんだ?」
「うぅ、えっと息をすると胸のとこが動くよね」
「動くな!」
「それ、それが肺」
「そうか。で、肺がなんだ?」
「その肺にミラは毒があるの」
「毒……」
「毒はわかる?」
カナタはこくりと頷く。
「なら、薬草だけじゃ治らなかったのはそのせいか」
「そう、だと思う」
「でも、解毒薬なんて俺のうちじゃ買えないぞ。回復薬だって……」
「あの、今から言う事、カナタは秘密にしてくれる?」
「なんだ?」
言っても大丈夫だろうか。調合も珍しいスキルだって言ってたよね。
『ハルカ、朝言った風に言うラム』
わかってる。私はライムに頷いてから、カナタに言った。
「実は、このライムが調合スキル持ちなの」
「………………」
目がまんまるで可愛い。そんなにびっくりしたのかな?
「えぇぇぇぇぇぇぇ!?」
長いタメの後、驚きの声をカナタはあげた。
「そ、そうか。じゃあ、あの薬も」
「うん。カナタも見たでしょ? あそこにある材料を組み合わせればライムはいろんなお薬がつくれるみたい。ただ、解毒薬の材料は持ち合わせがなくて、……って聞いてる? カナタ」
キョロキョロと辺りを見回す彼。何してるんだろ。
「いやいや、そんなのバレたらお前ら捕まって売り飛ばされちゃうぞ。てか、今までよく無事だったな」
あ、やっぱり調合でもそうなっちゃうんだ。これは想像よりずっと回復というものが貴重なのかもしれない。
「これに気がついたのは本当に最近で(というか昨日だし)、ライムは他人の為に作る気はないんだって。だから」
「それこそ、ハルカの為ならってことだろ。いいか、絶対に誰にも言うな。俺以外には絶対に」
「うん」
本気で心配してくれてる目だ。病院にずっといた私は人の目を見て本当か嘘かをなんとなくわかるようになっていた。お母さんも先生も何度か嘘をついていた。二人とも笑顔だったのに。
だから、わかる。カナタは私の事を心配してくれてる。これは嘘じゃない。
「私、ミラを助けてあげたい。だから、手伝って」
「もちろんだ。むしろ俺からお願いするのが筋じゃないか?」
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