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第一章
第30話 番外編・追跡した先に(イツキ視点)
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数人が家に戻っていき、この場に残ったのはオレと二人の男。一人は報告をする相手。もう一人は報告相手がそれを聞かせる為に残した男。
オレは二人に目配せし、本題に入った。
「このあたりから薬師がどんどん消えてる。同時に毒や病気を意図的に増やしてる奴らがいる」
「それは本当か、イツキ」
「あぁ、ジューイの件でまわってたのもそれだった。毒を配り、治療のためにと金を集め、これ以上絞れないとわかればもうあとは終わりだったろう」
「ヒナツが言っていた……やはりあれは毒だったのか」
この村でおそらく一番地位が高いウルズが悲しげにため息を吐く。
オレに依頼してきたジューイも同じ様にため息を吐き、考えていた。
オレ達魔物使いは一つの場所に留まれない。魔物を使うからだ。
人と契約した魔物は魔素を定期的に摂取しなければならない。定期的に摂らなければ契約している魔物は狂暴化し暴れだすからだ。魔法使い等のスキル持ちならば魔力を操作し魔素に変換、与える事ができるだろう。
だが、ほとんどの魔物使いは魔力の魔素変換が出来ない。そしてこの魔素は契約主が作ったものでないと使役獣は受け付けない。もしくは魔物使いの聖域に行き契約主が採ってくるか――だ。
だから、こうやって旅をしながら請け負う仕事をこなす。狂暴化するとわかってる魔物を飼う人間を受け入れる場所なんてない。
「どうするんだ? アイツは消えたんだろ。探すのか?」
「いや、賢いヒナツの事だ。逃げたならもうだいぶ遠くに、だろう」
「そうだろうか。ヒナツ君がそんなに簡単に諦めるのだろうか……」
「回復薬を大量に持つ魔物使いの少女か?」
二人がいっせいにこちらを見た。
「どうやってあんな高価なもん貯め込んだのかしらねーが、ホント村にすれば救世主だったな。まー、まだ持ってるとすればあの子、これからアイツ以外からも狙われるだろう」
「その話は――」
ウルズが睨みをきかせてくる。この男の子どもも少女に世話になったらしい。
魔物使いの少女の名前はハルカ。同業で名前を聞いた覚えがない。最近、魔物を使い出したばかりなのだろう。
「オレは少女の事は口外しないぜ。ただ、逃げたアイツは誰かに言うだろうな」
「……ヒナツ君」
「なんとか、遠くに行く前に確保出来ないだろうか」
「お、新しい依頼ですか?」
「あ、っと、すまない。うちは今出せるほど余裕がなかった」
「目の前にお宝がいるじゃないですか」
「いや、彼女はオレ……我が子にとって神様みたいなものだ。そんな彼女を金蔓なんかにしたら、スクや子ども達に嫌われてしまうよ」
「ウルズさん、それでいいと思います。彼女は私にとっても他人に思えないのです。皆の病気を治してもらうんだと言って神のもとに向かった娘。イーシャがここに連れてきてくれたんじゃないかなと……」
ジューイが手で目を覆い隠す。神のもとにむかった、つまりそれは死んだことを意味するのだろう。
オレに依頼を寄越したのも死の原因を突き止めたかったからだろう。それが、周辺国にまで影響しそうな大事の一部であったのは驚きだった。
もう少し詳しく調べればこの情報、いい金額で買い取ってくれる人間がいるかもしれない。
それと、少女の事は口外しないけれど、回復薬を吐き出す魔物の情報を口外しないとは言っていない。
「ヒナツの情報はこれぐらいだ。追加もないならオレは行くぜ」
「あぁ、ありがとう。あとは私達の問題だ。なんとかする」
出入り口の布を手でまくりあげ、下をくぐり抜ける。外に出ればメシの時間なのかあちこちいい匂いが漂う。
幼い頃の記憶が蘇る。魔物使いだと知る前までは一緒に暮らしていた、家族の思い出。
「あー、あの女の子。ハルカだったか……魔物使いの先輩として知っとかなきゃならないことを教えておいてやるか」
親しい人間との別れが来る事。魔物使いの生き方。魔物使いの聖域の場所。知っておいた方がいいだろう。
彼女の魔物の情報を売るかもしれない対価として。
「よっぽど親に疎まれたのかねぇ」
珍しい能力があるかもしれないが、弱すぎるスライムなんか仲間にするなんて、親から魔物使いのことを何も教えてもらえていないからだろう。そう思うと、彼女に少しだけ同情した。
オレは二人に目配せし、本題に入った。
「このあたりから薬師がどんどん消えてる。同時に毒や病気を意図的に増やしてる奴らがいる」
「それは本当か、イツキ」
「あぁ、ジューイの件でまわってたのもそれだった。毒を配り、治療のためにと金を集め、これ以上絞れないとわかればもうあとは終わりだったろう」
「ヒナツが言っていた……やはりあれは毒だったのか」
この村でおそらく一番地位が高いウルズが悲しげにため息を吐く。
オレに依頼してきたジューイも同じ様にため息を吐き、考えていた。
オレ達魔物使いは一つの場所に留まれない。魔物を使うからだ。
人と契約した魔物は魔素を定期的に摂取しなければならない。定期的に摂らなければ契約している魔物は狂暴化し暴れだすからだ。魔法使い等のスキル持ちならば魔力を操作し魔素に変換、与える事ができるだろう。
だが、ほとんどの魔物使いは魔力の魔素変換が出来ない。そしてこの魔素は契約主が作ったものでないと使役獣は受け付けない。もしくは魔物使いの聖域に行き契約主が採ってくるか――だ。
だから、こうやって旅をしながら請け負う仕事をこなす。狂暴化するとわかってる魔物を飼う人間を受け入れる場所なんてない。
「どうするんだ? アイツは消えたんだろ。探すのか?」
「いや、賢いヒナツの事だ。逃げたならもうだいぶ遠くに、だろう」
「そうだろうか。ヒナツ君がそんなに簡単に諦めるのだろうか……」
「回復薬を大量に持つ魔物使いの少女か?」
二人がいっせいにこちらを見た。
「どうやってあんな高価なもん貯め込んだのかしらねーが、ホント村にすれば救世主だったな。まー、まだ持ってるとすればあの子、これからアイツ以外からも狙われるだろう」
「その話は――」
ウルズが睨みをきかせてくる。この男の子どもも少女に世話になったらしい。
魔物使いの少女の名前はハルカ。同業で名前を聞いた覚えがない。最近、魔物を使い出したばかりなのだろう。
「オレは少女の事は口外しないぜ。ただ、逃げたアイツは誰かに言うだろうな」
「……ヒナツ君」
「なんとか、遠くに行く前に確保出来ないだろうか」
「お、新しい依頼ですか?」
「あ、っと、すまない。うちは今出せるほど余裕がなかった」
「目の前にお宝がいるじゃないですか」
「いや、彼女はオレ……我が子にとって神様みたいなものだ。そんな彼女を金蔓なんかにしたら、スクや子ども達に嫌われてしまうよ」
「ウルズさん、それでいいと思います。彼女は私にとっても他人に思えないのです。皆の病気を治してもらうんだと言って神のもとに向かった娘。イーシャがここに連れてきてくれたんじゃないかなと……」
ジューイが手で目を覆い隠す。神のもとにむかった、つまりそれは死んだことを意味するのだろう。
オレに依頼を寄越したのも死の原因を突き止めたかったからだろう。それが、周辺国にまで影響しそうな大事の一部であったのは驚きだった。
もう少し詳しく調べればこの情報、いい金額で買い取ってくれる人間がいるかもしれない。
それと、少女の事は口外しないけれど、回復薬を吐き出す魔物の情報を口外しないとは言っていない。
「ヒナツの情報はこれぐらいだ。追加もないならオレは行くぜ」
「あぁ、ありがとう。あとは私達の問題だ。なんとかする」
出入り口の布を手でまくりあげ、下をくぐり抜ける。外に出ればメシの時間なのかあちこちいい匂いが漂う。
幼い頃の記憶が蘇る。魔物使いだと知る前までは一緒に暮らしていた、家族の思い出。
「あー、あの女の子。ハルカだったか……魔物使いの先輩として知っとかなきゃならないことを教えておいてやるか」
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彼女の魔物の情報を売るかもしれない対価として。
「よっぽど親に疎まれたのかねぇ」
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