異世界もふもふのお医者さんっ!! 〜獣人村でみんなから愛されるお医者さん目指します〜

花月夜れん

文字の大きさ
30 / 42
第一章

第30話 番外編・追跡した先に(イツキ視点)

しおりを挟む
 数人が家に戻っていき、この場に残ったのはオレと二人の男。一人は報告をする相手。もう一人は報告相手がそれを聞かせる為に残した男。
 オレは二人に目配せし、本題に入った。

「このあたりから薬師がどんどん消えてる。同時に毒や病気を意図的に増やしてる奴らがいる」
「それは本当か、イツキ」
「あぁ、ジューイの件でまわってたのもそれだった。毒を配り、治療のためにと金を集め、これ以上絞れないとわかればもうあとは終わりだったろう」
「ヒナツが言っていた……やはりあれは毒だったのか」

 この村でおそらく一番地位が高いウルズが悲しげにため息を吐く。
 オレに依頼してきたジューイも同じ様にため息を吐き、考えていた。

 オレ達魔物使いは一つの場所に留まれない。魔物を使うからだ。
 人と契約した魔物は魔素を定期的に摂取しなければならない。定期的に摂らなければ契約している魔物は狂暴化し暴れだすからだ。魔法使い等のスキル持ちならば魔力を操作し魔素に変換、与える事ができるだろう。
 だが、ほとんどの魔物使いは魔力の魔素変換が出来ない。そしてこの魔素は契約主が作ったものでないと使役獣は受け付けない。もしくは魔物使いの聖域に行き契約主が採ってくるか――だ。
 だから、こうやって旅をしながら請け負う仕事をこなす。狂暴化するとわかってる魔物を飼う人間を受け入れる場所なんてない。

「どうするんだ? アイツは消えたんだろ。探すのか?」
「いや、賢いヒナツの事だ。逃げたならもうだいぶ遠くに、だろう」
「そうだろうか。ヒナツ君がそんなに簡単に諦めるのだろうか……」
「回復薬を大量に持つ魔物使いの少女か?」

 二人がいっせいにこちらを見た。

「どうやってあんな高価なもん貯め込んだのかしらねーが、ホント村にすれば救世主だったな。まー、まだ持ってるとすればあの子、これからアイツ以外からも狙われるだろう」
「その話は――」

 ウルズが睨みをきかせてくる。この男の子どもも少女に世話になったらしい。
 魔物使いの少女の名前はハルカ。同業で名前を聞いた覚えがない。最近、魔物を使い出したばかりなのだろう。

「オレは少女の事は口外しないぜ。ただ、逃げたアイツは誰かに言うだろうな」
「……ヒナツ君」
「なんとか、遠くに行く前に確保出来ないだろうか」
「お、新しい依頼ですか?」
「あ、っと、すまない。うちは今出せるほど余裕がなかった」
「目の前にお宝がいるじゃないですか」
「いや、彼女はオレ……我が子にとって神様みたいなものだ。そんな彼女を金蔓なんかにしたら、スクや子ども達に嫌われてしまうよ」
「ウルズさん、それでいいと思います。彼女は私にとっても他人に思えないのです。皆の病気を治してもらうんだと言って神のもとに向かった娘。イーシャがここに連れてきてくれたんじゃないかなと……」

 ジューイが手で目を覆い隠す。神のもとにむかった、つまりそれは死んだことを意味するのだろう。
 オレに依頼を寄越したのも死の原因を突き止めたかったからだろう。それが、周辺国にまで影響しそうな大事の一部であったのは驚きだった。
 もう少し詳しく調べればこの情報、いい金額で買い取ってくれる人間がいるかもしれない。
 それと、少女の事は口外しないけれど、回復薬を吐き出す魔物の情報を口外しないとは言っていない。

「ヒナツの情報はこれぐらいだ。追加もないならオレは行くぜ」
「あぁ、ありがとう。あとは私達の問題だ。なんとかする」

 出入り口の布を手でまくりあげ、下をくぐり抜ける。外に出ればメシの時間なのかあちこちいい匂いが漂う。
 幼い頃の記憶が蘇る。魔物使いだと知る前までは一緒に暮らしていた、家族の思い出。

「あー、あの女の子。ハルカだったか……魔物使いの先輩として知っとかなきゃならないことを教えておいてやるか」

 親しい人間との別れが来る事。魔物使いの生き方。魔物使いの聖域の場所。知っておいた方がいいだろう。
 彼女の魔物の情報を売るかもしれない対価として。

「よっぽど親に疎まれたのかねぇ」

 珍しい能力があるかもしれないが、弱すぎるスライムなんか仲間にするなんて、親から魔物使いのことを何も教えてもらえていないからだろう。そう思うと、彼女に少しだけ同情した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

憧れのスローライフを異世界で?

さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。 日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。

こわいかおの獣人騎士が、仕事大好きトリマーに秒で堕とされた結果

てへぺろ
恋愛
仕事大好きトリマーである黒木優子(クロキ)が召喚されたのは、毛並みの手入れが行き届いていない、犬系獣人たちの国だった。 とりあえず、護衛兼監視役として来たのは、ハスキー系獣人であるルーサー。不機嫌そうににらんでくるものの、ハスキー大好きなクロキにはそんなの関係なかった。 「とりあえずブラッシングさせてくれません?」 毎日、獣人たちのお手入れに精を出しては、ルーサーを(犬的に)愛でる日々。 そのうち、ルーサーはクロキを女性として意識するようになるものの、クロキは彼を犬としかみていなくて……。 ※獣人のケモ度が高い世界での恋愛話ですが、ケモナー向けではないです。ズーフィリア向けでもないです。

一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?

たまご
ファンタジー
 アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。  最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。  だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。  女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。  猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!! 「私はスローライフ希望なんですけど……」  この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。  表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。

異世界ほのぼの牧場生活〜女神の加護でスローライフ始めました〜』

チャチャ
ファンタジー
ブラック企業で心も体もすり減らしていた青年・悠翔(はると)。 日々の疲れを癒してくれていたのは、幼い頃から大好きだったゲーム『ほのぼの牧場ライフ』だけだった。 両親を早くに亡くし、年の離れた妹・ひなのを守りながら、限界寸前の生活を続けていたある日―― 「目を覚ますと、そこは……ゲームの中そっくりの世界だった!?」 女神様いわく、「疲れ果てたあなたに、癒しの世界を贈ります」とのこと。 目の前には、自分がかつて何百時間も遊んだ“あの牧場”が広がっていた。 作物を育て、動物たちと暮らし、時には村人の悩みを解決しながら、のんびりと過ごす毎日。 けれどもこの世界には、ゲームにはなかった“出会い”があった。 ――獣人の少女、恥ずかしがり屋の魔法使い、村の頼れるお姉さん。 誰かと心を通わせるたびに、はるとの日常は少しずつ色づいていく。 そして、残された妹・ひなのにも、ある“転機”が訪れようとしていた……。 ほっこり、のんびり、時々ドキドキ。 癒しと恋と成長の、異世界牧場スローライフ、始まります!

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

【完結】平凡な魔法使いですが、国一番の騎士に溺愛されています

空月
ファンタジー
この世界には『善い魔法使い』と『悪い魔法使い』がいる。 『悪い魔法使い』の根絶を掲げるシュターメイア王国の魔法使いフィオラ・クローチェは、ある日魔法の暴発で幼少時の姿になってしまう。こんな姿では仕事もできない――というわけで有給休暇を得たフィオラだったが、一番の友人を自称するルカ=セト騎士団長に、何故かなにくれとなく世話をされることに。 「……おまえがこんなに子ども好きだとは思わなかった」 「いや、俺は子どもが好きなんじゃないよ。君が好きだから、子どもの君もかわいく思うし好きなだけだ」 そんなことを大真面目に言う国一番の騎士に溺愛される、平々凡々な魔法使いのフィオラが、元の姿に戻るまでと、それから。 ◆三部完結しました。お付き合いありがとうございました。(2024/4/4)

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

処理中です...