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第二章 赤の瞳と金の瞳
第108話 ながらダイエットの先で
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「あの、エマ様。何をしているんですか?」
「え、ダイエットよ」
ただたどり着くのを待ってるだけは時間がもったいないと思い、どうせお父さんのところに行くのなら体重はもう関係ない。今から足掻いてもしょうがないけれど、私は動く範囲で運動していた。会ってそうそう「丸くなった」って言われたくないし。今は、変身の薬が効いてるけど……。
「こちらです」
「本当に大丈夫なの?」
数刻もしないうち私は聖女達のいる国クフノシトキへと運ばれた。
ここは赤い瞳の聖女アメリアが誕生したと言われる場所。
その中で大きな建物の上に悠々とフレイルは降り立った。
「ここから中央区研究棟に向かう事が出来ます。任せて下さい」
扉を開け階段を下り、すぐ近くの部屋に入る。私はその後を恐る恐るついていった。
大人の姿のフレイルはどこから出したのか白い衣装を纏い、同じ物を私にも着せる。
「ここは僕用に作られてますから、大丈夫ですよ」
「フレイル用!?」
「はい。僕用の研究室です」
どうしてこんなところにフレイルの部屋があるの?
というか、少し前までハヘラータで働いてるはずだよね?
「僕は竜であることをここの人達に伝えてあります。ずっとずっと前から。普段はここで研究など好き勝手させてもらってまして――。この国の便利な道具なんかは僕が開発してるんです」
にこにこと笑いながらフレイルは部屋の中を漁っている。
確かにまわりを見れば、フレイルの部屋にあるものと同じようなのがたくさん並んでいた。
「ほら、これ見覚えありませんか」
「あ、婚約指輪……」
「そう、僕が作ったエマ様専用の。こっちは予備ですが」
久しぶりに見たその指輪をフレイルは私につけようとする。
あまりにトラウマすぎるそれをつけられまいと手を引くと、腕を掴まれぎゅっと引っ張られた。
「力が強くなる指輪なんです。つけておいて下さい」
「でも……」
「ここがお嫌でしたら反対にでも」
そう言って反対の手を取りスッとつけられてしまった。ぴったりだった。これは薬が切れたとき指から抜けなくなってしまうのではと震える。あれ、そうだ。今飲んでいる薬は違うものなのかな。本体……というか実際の体型に触れられない。
「さぁ、行きましょう」
「フレイル……」
「はい?」
信じていいのかな……。
ううん、彼はルニアの弟なのだから。きっと大丈夫。
「ささっと済ませましょう」
ぎゅっと拳を握り気合をいれる。
うじうじ考えて動かない方が皆に心配をかける時間が増えてしまう。それなら、どーんと一気にしてしまう方がずっといい。
ブレイド、心配してるかな……。気まずい雰囲気で出てきてしまったから余計に気になってしまう。はやく帰らなくちゃ。
「そうですね!! 僕の予想では夫妻は研究棟の上の方の階にいるんじゃないかなと睨んでます。映像の後ろに見えた壁の色が白色だったので」
「壁の色って違うの?」
「はい、下は灰色、上に行くほど白くなって行くんです」
廊下を進む。天井が高く、外は見えない。ところどころ部屋のドアがあるけれど誰ともすれ違わない。
前方に明るい光が見えた。人の声も聞こえる。
「見えてきました。あそこからはたくさん人がいます。けれど心配しないでくださいね。僕が守りますから。エマ様は堂々と僕についてきてください」
フレイルは大きくなっても変わらない笑顔を浮かべていた。
「え、ダイエットよ」
ただたどり着くのを待ってるだけは時間がもったいないと思い、どうせお父さんのところに行くのなら体重はもう関係ない。今から足掻いてもしょうがないけれど、私は動く範囲で運動していた。会ってそうそう「丸くなった」って言われたくないし。今は、変身の薬が効いてるけど……。
「こちらです」
「本当に大丈夫なの?」
数刻もしないうち私は聖女達のいる国クフノシトキへと運ばれた。
ここは赤い瞳の聖女アメリアが誕生したと言われる場所。
その中で大きな建物の上に悠々とフレイルは降り立った。
「ここから中央区研究棟に向かう事が出来ます。任せて下さい」
扉を開け階段を下り、すぐ近くの部屋に入る。私はその後を恐る恐るついていった。
大人の姿のフレイルはどこから出したのか白い衣装を纏い、同じ物を私にも着せる。
「ここは僕用に作られてますから、大丈夫ですよ」
「フレイル用!?」
「はい。僕用の研究室です」
どうしてこんなところにフレイルの部屋があるの?
というか、少し前までハヘラータで働いてるはずだよね?
「僕は竜であることをここの人達に伝えてあります。ずっとずっと前から。普段はここで研究など好き勝手させてもらってまして――。この国の便利な道具なんかは僕が開発してるんです」
にこにこと笑いながらフレイルは部屋の中を漁っている。
確かにまわりを見れば、フレイルの部屋にあるものと同じようなのがたくさん並んでいた。
「ほら、これ見覚えありませんか」
「あ、婚約指輪……」
「そう、僕が作ったエマ様専用の。こっちは予備ですが」
久しぶりに見たその指輪をフレイルは私につけようとする。
あまりにトラウマすぎるそれをつけられまいと手を引くと、腕を掴まれぎゅっと引っ張られた。
「力が強くなる指輪なんです。つけておいて下さい」
「でも……」
「ここがお嫌でしたら反対にでも」
そう言って反対の手を取りスッとつけられてしまった。ぴったりだった。これは薬が切れたとき指から抜けなくなってしまうのではと震える。あれ、そうだ。今飲んでいる薬は違うものなのかな。本体……というか実際の体型に触れられない。
「さぁ、行きましょう」
「フレイル……」
「はい?」
信じていいのかな……。
ううん、彼はルニアの弟なのだから。きっと大丈夫。
「ささっと済ませましょう」
ぎゅっと拳を握り気合をいれる。
うじうじ考えて動かない方が皆に心配をかける時間が増えてしまう。それなら、どーんと一気にしてしまう方がずっといい。
ブレイド、心配してるかな……。気まずい雰囲気で出てきてしまったから余計に気になってしまう。はやく帰らなくちゃ。
「そうですね!! 僕の予想では夫妻は研究棟の上の方の階にいるんじゃないかなと睨んでます。映像の後ろに見えた壁の色が白色だったので」
「壁の色って違うの?」
「はい、下は灰色、上に行くほど白くなって行くんです」
廊下を進む。天井が高く、外は見えない。ところどころ部屋のドアがあるけれど誰ともすれ違わない。
前方に明るい光が見えた。人の声も聞こえる。
「見えてきました。あそこからはたくさん人がいます。けれど心配しないでくださいね。僕が守りますから。エマ様は堂々と僕についてきてください」
フレイルは大きくなっても変わらない笑顔を浮かべていた。
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