前略、転生した勇者ちゃん、ちゃんと探してます。【凡人に】転生した魔王より

花月夜れん

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第13話 ごろごろする魔王

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 自分のベッドでごろごろしながらスマホでゲームをやってると突然マォマォッと震えた。(ちなみにやってるのは自分が魔王レベル1になってガチャで配下を揃え強化していき、魔界を統べるってゲームな。魔王は強化できないんだが、強化した配下にいつか裏切られないか? コレ)
 っと、いや、誰だ。オレの優雅なゲームタイムを邪魔する不届き者は?
 まあ、オレに届くのなんて広告とか広告とか広告とかたまに妹か母親かといったところだろう。他にも数人くるにはくるんだが……。
 画面に表示された名前を見る。

「いや、は? え……、は?」

 飛び起き、三度見どころか十度見くらいして本当だと頭が理解した頃ようやく表示されてる名前をタップしようとした。
 まゆと表示される相手先はもちろんお隣にすむ真由のことだ。
 スマホ導入してからずっと連絡先切り替えてなくてよかったぁぁぁぁぁ!?
 魔王を思い出したあの日から、もともとすくなかった真由へのこういうやり取りはぷっつりと途切れていた。

「なななななななななな!?」

 自分でも驚くほど動揺して腕がむちゃくちゃ震えてる。スマホのバイブレーション機能も真っ青の震えっぷりだぜ。
 なんとか指先をコントロールし開くことに成功する。
 画面では可愛いイラストのスタンプが手を振っていた。これは世間でいま人気のちぃ勇者とちぃ魔王ではないだろうか。二頭身の勇者や魔王、その仲間たちといったキャラクターが織り成す日常ほのぼの系漫画。
 勇者と魔王!? ま、まさかこれは暗号とでもいうのか? やっぱり真由が?

「なーんて、ないよな」

 一人頭を掻きながら、そのイラストスタンプの意味を考える。送られてきたのはそれだけだったから。

 マォマォッ

「どわっっ!?」

 スマホの震えに驚き、猫のような垂直ジャンプをかますところだった。
 真由からだった。

『良かった。既読ついた。拓也君、今いい?』

 画面の向こうに真由がいる。おそらくお風呂から出ていい匂いでパジャマ姿の真由がいるっ!
 見たい!!!!
 間違ってテレビ電話のアイコンをタップしたい衝動に耐えながら文字を打つ。

『大丈夫だ。問題ない』

 嘘である。問題しかない。オレの意志に反せずに動こうとするこの指をなんとかして止めなければっ!
 とりあえず、覗き魔デビルアイを呼び出し右手でにぎゅにぎゅする。うむ、ほどよい弾力で妄想が進む。いや、進んじゃダメだろ!!

『ありがとう』と書いてあるイラストスタンプのあとにまたメッセージがくる。

『さっきは大変だったね。ごめんね、すぐになんとかしてあげられなくて。私がもう少ししっかり伝えていられたら』

『ごめんなさい』スタンプのちぃ勇者が謝っている。真由が謝っているみたいで可愛く見えるなぁ。

『なかなか出来ない体験ができたから問題ない。気にしなくても大丈夫だ』

 オレはまた似たような文面で真由に返信してしまった。
 あれか? オレもスタンプとか使うべきか?
 もちろんこのスマホには真由のような可愛いスタンプはない。初期インストールされてるやつらしかない。
 ふむ……ととりあえず全部眺めてみる。無難に大丈夫とオーケーサインを出しているネコを使ってみた。
 にっこりと笑った顔のスタンプが返ってくる。それを脳内補正で真由の笑顔に置き換える。何だ、これ。幸せか?
 だが、謝るだけならもうこの幸せ時間は終わってしまうかもしれない。
 オレはなんとか続けようと次の文を考えて打ってみるがまとまらない。
 うぉぉ、頑張れオレの中の閃九頭脳君!! 神のような次の一手をこの指に打たせるんだ!!

 マォマォッ

 ぐぁぁぁ、先手を打たれたぁ!!
 終わりの挨拶か? 終わりなのか?
 ドキドキしながらメッセージを見る。スタンプではなく文字だ。

『あの、拓也君に聞きたいんだけどさ。さっきね』

 胸がドキンとする。さっき起こったことで聞きたいこと? 何だ、何を聞かれるんだ? まさか、見られていた? 脱衣魔アンドレスを捕まえるところを?
 緊張しつつ、下の文を読む。

『考えてたんだけど、これから夜出かけるときは一緒に行かない? もう散歩は連れて行かないかな? 今日あんな事があったからさ、一人だと心細くて。ダメかな?』

 オレは右手で口を覆いながら左手でさっき使ったオーケーネコスタンプをすぐに送った。
 そして急いで親父と妹に『オレがこれからはケルベロスの散歩係な!』と送っておいた。
 真由と二人の散歩!? このチャンス逃すわけにはいかない!!
 たとえ、真由の目的がケルベロスであろうとも、足にその犬が噛みついていようとも!!

「そうだ。それに……」

 今日みたいなはぐれ魔物が見つかるかもしれない。それを勇者も探しているのかも……。なら、勇者を探すのにもちょうどいいのではないだろうか。
 はぐれ魔物。意外とあちこちにいるのかな。もしかして転生魔法の範囲がけっこう広かったりしたのか? ふーむ、探して配下にしていくのもいいかもなぁ。
 まるで今やってるゲームのようだなぁと思いながらオレは真由の返事を待っていた。

 マオマオッ

 きた!?

 リンマオマオッリン

 リン!?

 メッセージではなくその知らせはテレビ電話のお知らせだった。

「えぇぇ!? ちょっ、えぇぇぇ!?」

 マッ――――

 ビビってる間に呼び出し画面が終了した。どうする? どうしたらいい? なんで秒ででなかったんだオレぇッ!!

 マオマオッ

 メッセージがきた。

『ごめん、手がすべってスマホ落としちゃった。その時間違ってテレビ電話アイコンタップしたみたい。もう遅いしこれで寝るね。また明日』

 オヤスミナサイのスタンプが送られてきた。うん、終わりの挨拶だ。

『オヤスミ』

 文字で返してオレは再びベッドにごろりと横になった。
 そのまま無言でごろごろと何度も何度も転がり回った。
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