ツンデレ神官は一途な勇者に溺愛される

抹茶

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5.最低な初夜※

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 マイロの案内で宿屋に着いたあと、俺は身体を洗ってからひと眠りした。野宿にも慣れ始めていたが、やはりちゃんとした宿に落ち着けると安心する。
 久しぶりの清潔なベッドは快適で、目が覚めたらすっかり日が落ちていた。

 宿屋が多い通りの中でも、ひときわ大きい建物に案内されたときは驚いた。華美すぎず、居心地のいい上品な宿屋だ。
 ここは教会で迎える客を泊めるための宿らしい。あの司教がこの町を守っているというのが、大袈裟な話ではなかったのだとわかる。

 この辺りは夜遅くまでやっている酒場も多い。
 表通りに並ぶ華やかな灯りと、道ゆく人々の賑わいを、窓から眺める。
 初めて見る夜の景色だったが、1人で見ても味気ない。町の夜景は好きな人とデートで見るのが綺麗なのだと、地元に届いた数少ない本のうちの一冊に書いてあった。

 ノックの音で、ドアに目を向ける。
 ちょうど、マイロのことを考えていたところだ。

「ルカ様。いらっしゃいますか」
「うん。入っていいよ」

 扉を開けて入ってきたマイロは、きっちりした法衣から、ラフな格好に着替えていた。

 真っ白なブラウスは袖がふわりと膨らみ、手首の細さを際立たせている。ボリュームのある上半身に対して、ズボンは細身のデザインで、滑らかな脚線美がよく見える。
 おしゃれはよくわからないが、この服がマイロによく似合っていることは俺にもわかった。

 このまま旅に出るには華やかすぎる。旅装ではないだろう。ということは、マイロは俺のためにおしゃれをしてきてくれたのだ。
 外見的なかわいさだけではない、愛おしさで胸が熱くなる。

 神様、マイロに出会わせてくれたことに感謝します。
 勇者に生まれていいことなんて、今までなかったけれど、この瞬間に全て報われたと言ってもいい。

「あの、ルカ様」
「あ、ああ。ごめん。マイロが可愛すぎて見惚れてたんだ。その服、すごく似合ってる。可愛いよ」
「え? えっと……」

 マイロが困惑して目を逸らす。
 会ったばかりの他人にいきなり外見を褒められて、困ったのだろう。ちょっとだけ赤くなった頬が可愛いが、申し訳ないのでそれは言わないでおいた。

「コホン。私のことはいいのです。ルカ様の呪いの治療をしましょう」
「そうだったね」

 実のところ、初めて好きになった相手と、おかしな経緯で性行為をすることになって、俺はいまだに心の準備はできていない。
 マイロも実践経験はほとんどないと言っていたが、裏を返せば全くの未経験ではないということ。訓練も受けたと言っていたし。
 今更だが、訓練ってなんなんだ。どことなくエロティックな響きが、気になってしょうがないんだが。

 ベッドに腰掛けた俺の隣に、マイロが座る。
 ぴったりと肩をくっつけて寄り添うと、マイロの体温を感じた。すぐそばにいるという実感があって心地いい。サラサラの髪が、顎にかかってくすぐったかった。

 マイロからはいい匂いがして、耐性のない俺はあっさり欲情を煽られる。

「俺はどうすればいい?」
「慌てないで」

 華奢な指先が開きかけた唇に触れた。柔らかな感触に、胸がいっぱいで何も言えなくなる。
 マイロの手が、俺の質素なシャツ越しに身体を優しく撫でた。
 俺もマイロに触りたい。しかし慌てるなと言われたので、大人しくしていた。

 整った指先が腹筋の窪みをなぞりながら、ゆっくりと下に向かっていく。
 それが下腹部にたどり着くころには、俺のものがはっきりと見えるくらいテントを張っていた。

「ん……マイロ」
「大丈夫。おかしくないですよ」
「うん……」

 すっかり熱に浮かされながらも、俺はマイロの指の動きをよく観察する。
 こうやって触ると気持ちいいのだと、記憶に焼き付けておくのだ。後でちゃんとお返しができるように。

 マイロは俺のズボンの紐に手をかけ、前をくつろげる。顔を出したそれは、まだ触れてもいないのに半勃ちしていた。

 くたっと垂れた竿をゆるく握って、マイロが手を上下させた。直接的な刺激と、マイロの存在に当てられて、それはすぐに芯を持って固くなっていく。

「気持ちいい……」
「よかった」
「俺もしたい」
「それはまだ駄目」

 マイロにも気持ちよくなってもらいたいのだが、なぜか否定されるのも気持ちよくて、今は素直に身を任せることにした。
 ただ気持ちいいということと、マイロが好きだということしかわからなくなっていく。
 理性が溶けて、欲望のままにマイロの髪をすんすん嗅いだ。やっぱりいい匂いがする。マイロがくすぐったそうに笑って、胸がぎゅっと苦しくなった。

「恥ずかしいです」
「かわいい」

 愛おしさが溢れて、俺はマイロの髪に唇を寄せた。そっと優しく、歯が当たらないように注意して触れる。

「マイロ、好きだ」
「それは気のせいですよ」
「え?」

 思いのほか冷たい返事が返ってきて、背中にまわしかけていた腕が、反射的に止まった。

 手放していた理性が、戻ってくる。

 浮かれきって忘れていたが、俺はマイロが好きだけど、マイロはそうじゃない。仕事でやっているのだ。

 できればマイロにも俺を好きになってもらいたいけど、難しいだろう。俺は寂しさを堪えて、性欲に集中した。


 すっかり勃起した俺のものから、マイロが手を離す。その手で、自分のズボンを手早く下ろした。
 俺よりは華奢だが、程よく筋肉のついたしなやかな脚が大胆に晒される。薄い肉付きと、色白な肌がマイロの質素な生活を思わせる。
 妄想した通りの美脚で、心臓がわし摑みにされた。もうこの脚以外では欲情できないかもしれないと思うほど魅力的だ。舐めまわしたい。
 性欲が急激に昂り、寂しさが一時的に紛れる。俺という奴は単純だ。

「あまり見ないでください」
「ん。わかった」

 それは無理なお願いだと思いつつ、一応顔を背ける。
 横目で凝視するつもりだが。

 垂れ下がった小ぶりな性器は、まだほとんど反応していない。マイロはそこには触らず、後ろに手を伸ばした。
 小瓶から粘性のある液体を手のひらに垂らし、温めるように広げる。それを指先に集めて、後孔に差し入れた。

 思わず喉を鳴らしてしまい、マイロが俺を睨んだ。見るなということだろう。
 できればよく見て手順を覚えたいのだが、これ以上マイロが嫌がることはしたくない。少しの葛藤のあとに、俺はマイロから視線を外した。

「ん、んん」

 視界の外から聞こえてくるのは、気持ちよさそうな声ではない。むしろ苦しそうな呻き声でハラハラする。
 マイロは後ろで気持ちよくなるタイプじゃないのだろうか。
 だからあの時、候補から外されていたのかも。そうだとしたら申し訳ない。今からでも謝って、変えてもらったほうがいいのでは。

「もう、いいですよ」

 許可されて、俺は視線を戻す。
 ぐだぐだと考えていたことが、マイロのあられもない姿を見て吹き飛んだ。
 やっぱりマイロ以外はありえない。

 その顔に恥じらいはないが、痛がっている様子もない。淡々とした表情とは裏腹に、ひくひくとうごめく後孔は、まるで俺を誘っているようだ。
 俺のために、マイロはこんなにも頑張ってくれている。

 世界一かわいい。大好きだ。早く俺のものにしたい。マイロが恋しすぎて、頭がどんどん馬鹿になる。

 マイロが俺の膝の上に、向かい合うようにしてまたがった。さっきよりずっと濃い匂いがして、欲情が煮えたぎる。

 ぱんぱんに勃ちあがった俺のものに手を添えて、マイロは自分でそれを後孔にあてがう。
 柔らかいところが、敏感な先端にぷにっとくっつく。今すぐ奥まで突き上げたい衝動が込み上げてきた。

「ん……」

 マイロの苦しげな声を聞いて、なけなしの理性を振り絞り、欲望を押し殺す。乱暴なことも、痛いこともしたくない。

 ゆっくりと、マイロが腰を落とす。温かい媚肉に包まれて、俺のものはすぐにでも暴発しそうだった。
 マイロの吐息が頬にかかり、心臓が脈打つさえ聞こえる気がする。
 セックスってすごい。ほんとに一つに溶け合うみたいだ。

「入った……」

 俺のものを全て後孔に飲み込み、マイロがほっと息を吐く。
 思わず抱きしめると、華奢な身体は丁度よく腕の中に収まった。
 マイロの身体も熱い。呼吸に合わせて、マイロのものがピクピク反応していて愛らしかった。ちゃんと感じてくれている。

「マイロ、好きだ」

 冗談だと思われたのか、マイロが鼻で笑う。全然信じてもらえない。

 やめたほうがいいと知りつつも、マイロの気持ちが知りたくて、俺は顔を覗いてみた。
 マイロは眉根をきつく寄せている。それは苦しそうで、我慢しているように見えた。

 性的には反応していても、やはり精神的には満たされていない。心まで気持ちよくなっているのは、俺だけだった。

 悲しくなったが、とにかく早く楽にしてやりたい。その一心で、俺はせっせと腰を振る。
 絶頂に達したときに出た涙は、生理的なものではなかったかもしれない。せめて感謝の気持ちと愛情を伝えたくて、俺はぎゅっとマイロを抱きしめた。


 しばらく息を整えたあと、マイロはさっさと俺の膝から降りてしまう。手早く身支度を整えて、俺に向かって淡々とにお辞儀をする。

「今日の治療は十分かと。明日の朝、ここを出発しますので、よろしくお願いします」

 マイロはそのまま、俺の返事も聞かずに部屋を出ていってしまった。
 朝まで身を寄せ合って眠るなんて、夢のまた夢だ。

 ぽつんと残された俺は、自分に対する怒りとも悲しみとも言えない複雑な感情に、眠りにつくまでずっと囚われていた。
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