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情弱乙はそちらでございます!

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 ペネロペの生家ロメイユ家は、建国の頃より歴代当主が宰相を務め、広大な領地を治める、シュプレイム王国きっての権力と財力を有する一族だ。
 その影響力は凄まじく、王家でさえロメイユの顔色を伺う程だった。
 故に『らぶぷり』のペネロペは、婚約者の王子に浮気されようが、浮気相手のヒロインに復讐しようが、その咎で婚約破棄されようが、ロメイユの力で全ての責任をチャラにする事が出来るはずだった。
 ところが、自分の人間性のせいで家族から徹底的に嫌われていたゲームのペネロペは、いざ罪を問われた時も一切ロメイユから擁護される事は無かった。
 それどころか、ロメイユの名誉を守るため、ペネロペは「不祥事による追放」の名の下にロメイユ公爵家令嬢の身分を剥奪され、平民落ちとなってしまう。
 しかし、あくまでこれは乙女ゲーム『らぶりぃぷりんせす』の悪役令嬢ペネロペの話であって、転生者ペネロペは、となると話は違って来る。
 なぜなら…………
「なにィィィィィィっっっっ!!!!我が天使ペネロペが王妃に相応しく無いとはどういう事だっ!!!!!! 殿下は頭に隕石の直撃でも受けたのか?!」
「最愛の妹を浮気の挙げ句大勢の前で振るなど言語道断!万死に値する!!! 奴らには断頭台の露と消えてもらおうか!」
「まて、瞬殺では面白く無い、ここは相手の女と共に一週間拷問、市中引き回しで奴らの名誉とプライドをバッキバキに折ったうえで、己の愚行を悔いながら地下牢で餓死させるのが妥当だ!」
 発言の主は順に、ペネロペの父親、ロメイユ家当主デイヴィッド・ド・ロメイユ。次兄、王宮近衛騎士団第五隊副隊長カリオン・ド・ロメイユ。長兄、王国内務省事務次官フィリップス・ド・ロメイユ。
 ペネロペの家族にして華麗なるロメイユ一族のハイスペックイケメン三人のそれぞれの性格がよく現れた絶叫を聞いてお察しの通り、現在の彼らのスタンスは、我が娘あるいは妹を溺愛してやまない強火ペネロペ親衛隊だ。
 父親から受け継いだロメイユ家の象徴とも言える艷やかなダークバイオレットの髪と目鼻立ちのはっきりとした美貌、母譲りの滑からな白肌と薔薇色の頬を持つペネロペは、生まれた時からそれは美しく愛らしい娘だった。
 幼少期のペネロペはこの見た目と子供特有の無邪気さで、父と兄達、使用人の者たちの心を鷲掴みにして、周りからちやほやされて成長していく。
 ゲームのペネロペは、そのまま成長して傲慢高飛車の性格最悪令嬢に育ってしまい家族の信頼を失ったが、転生者ペネロペはまだ我儘が許される年頃で前世の人格が出たため、甘やかされて育ったにも関わらず謙虚で大人しい令嬢へと成長し、父や兄達からますます溺愛される結果となった。
 面白いのは、この、父と兄達の度を越したペネロペ溺愛の事情が、家の弱みになるという理由で一切公開されていないと言う事。
 つまりヒロインは、ペネロペのロメイユ家での価値がゲームとは真逆になっている事を知らない。
 だからこそ、ロメイユの報復など無いと高を括って今夜の婚約破棄イベントを強行したのだ。
 ペネロペの知らないところでイベントを起こし、攻略を進めて、「何も知らなくてざまぁwww」などといい気になっているのだろうが、そのセリフはヒロインにも言える事で。
 この後ヒロインは、ペネロペが転生者だった事実を知りながら、ゲームの情報を修正もせずに行動を起こした事を激しく後悔する事になる。
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