魔導士カイラは許されない〜インキュバスの呪いで貞操帯をかけられた少年〜

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初めての遠征〜ダーティとカイラ〜

深夜 地下牢にて

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 別荘の地下には、何の目的で造られたのか分からない地下牢があった。

 天井から床まで全て石造りで、温もりを一切感じられない。

 鉄の牢の中には頼りない照明と簡易的な便所、干し草で編まれたボロボロな絨毯があるのみである。

 そこに放り込まれたカイラは、1人で静かに時が過ぎるのを待っていた。

 ダーティだけが今日の労働から未だ解放されておらず、無事かどうか分からぬままでは眠れないのだ。

 すると複数人の足音が響き、牢屋へ近付いてくる。

 その足音の正体は、2人の山賊に連れられたダーティ。しかも裸のままだ。

 山賊共はカイラのいる牢屋にダーティを放り込み再び鍵をかけると、そのまま地上へと戻っていった。

「いてててて……全く、捕虜を何だと思っているんだ」

 身を起こし髪を掻き上げたダーティに、「ダーティさん!」とカイラは縋りよる。

 ムワッとした精の匂いを感じ、それが更にカイラの感情を溢れさせるのだ。

「ごめんなさい……ダーティさん、僕の為に酷い目に遭って……!」

「気に病むなカイラ少年」

 ダーティはカイラの頭をポンポンと撫でた。自分の恋人を想起させるような行動に、自然にカイラの頬を涙が伝う。

「あー……だが、少しでも悪いと思っているのならば……温かい湯を出す魔法か何か無いか? 白い雨を浴びせられてね……せめて湯を浴びたいんだ」

「ウォーターの応用でできますよ。『ウォーター』」

 詠唱したカイラの手のひらから水鉄砲のように温かい湯が放たれる。

 ダーティはそれを頭から被り、男共の欲望にまみれた体を清めた。

「『ウインド』」

 ひと通り体を洗い終わったダーティへ、カイラは今度は風を起こす魔法で彼の美しい髪を乾かしてあげた。

「ありがとう」

「えへ、良いんですよこれくらい」

 カイラは一瞬だけ屈託の無い笑みを浮かべたが、すぐに神妙な面持ちになる。

「あの……ダーティさん、男娼をやってたって、本当なんですか?」

「あぁ、本当さ。……何だ? カイラ少年も私と遊びたいのか?」

「いっ、いえ! 違います!」

 カイラは慌てて否定する。

「あれって……自分に注目させる事で、僕がアイツらに体を奪われないようにとダーティさんが吐いた嘘だったんじゃないかと思ってたんです」

「あぁ……なるほどな? しかし本当なんだよ。私は演奏家の下積み時代、食い扶持を繋ぐ為に体を売っていたんだ」

 ダーティは目を閉じ過去に思いを馳せる。

「あの頃が懐かしい。色々な男達に抱かれてね……あぁ、ラブに出会ったのもその頃だった」

「ディーさんにですか?」

 ダーティは静かに頷いた。

「そうだ。女装姿の私を女だと勘違いしたアイツをにしてから懐かれてな。今に至るという訳だ」

 「カイラ少年」とダーティは昔話を早々に切り上げ真剣な声色を少年に向ける。

「我々がこの山賊屋敷から抜け出す手立てを持たぬ以上、ヴェルトとラブの迎えを待つしか無い」

「で、でも……いくらディーさんとヴェルトさんとはいえ、この場所を見つける事ができるでしょうか?」

 カイラの心を捕らえる不安を吹き飛ばすようにダーティは乾いた笑い声を上げた。

「ハハハハハ……カイラ少年。ヴェルトの実力は君が1番良く知っているはずだ。……それに、自分が最も大切にする人を奪われ黙っていられるほど大人しい人間ではない事も、君は良く知っているはずだ」

 ダーティの言う通りだとカイラは思った。

 ヴェルトならば、たとえ手掛かりが無くとも地の果てまで駆け回り探し出してくれる……そのような気がするのだ。

「だから……それまでの辛抱だカイラ少年」

「僕は大丈夫です。でも……僕は、ダーティさんの事がとっても心配なんです。あんなに変わる変わる別の人に体を奪われて……いくら慣れてるからといって、このままでは体が壊れてしまいます」

 だから。とカイラは何かを決心したように続ける。

「僕も……アイツらに体を渡す覚悟を決めました」

「カイラ少年」

 自分の名を呼ぶダーティの冷淡な声にカイラを身を竦ませる。

「私の善意を無駄にするつもりか?」

 サファイアの瞳に睨まれカイラは額に脂汗を浮かべた。

「い、いえっ、そんな訳では……」

 焦りのあまりどもるカイラ。

 その様子につい鼻を鳴らし笑みを溢してしまったダーティは、少年の頭を優しく撫でる。

「私の見立てでは、恐らくヴェルトは『古臭い男』だ」

「……古臭い男?」

 意味が分からずカイラは頓狂な声で訊ねる。

「あぁ。恋人の貞操を重んじる男だよ。恋人の経験人数は少ない方が……むしろ処女が好ましいと思ってるし、付き合い始めてからも他の男には触れさせたくないという」

「……はぁ」

 自分も似通った考えを持っている為、カイラは生返事をしてしまう。

「だからこそ。君は綺麗なままでいなくては駄目だ」

「でもダーティさんが____」

「カイラ少年……大人の言う事は素直に聞くべきだぞ。君はまだ子供なんだから」

「……僕、子供じゃありません」

 と頬を膨らませるカイラに、ダーティは乾いた笑い声を上げる。

「何言ってるんだ。年齢も経験の少なさも、そして君のナニの大きさも……どうせ小さいんだろ?」

「き、決めつけないでくださいよぉ!」

 カイラの泣き出しそうな声に、再びダーティは乾いた笑い声を上げた。
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