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第一章
私のお嬢様sideメル
しおりを挟む皆さんこんにちは!私はとある公爵家の侍女メルと申します!
元々ある男爵家の三女であった私なのですが、行儀見習いとして訪れた公爵家で、色々あり今は侍女をしています。
私の話はどうでもいいんです。私がどうして侍女になったとか、誰も興味ないでしょうし。まあ、私実は家に勘当されておりまして、そんな私を拾ってくださったのが奥様であるヒステリア様だって言うだけの話です!はは!
て、だから私の話はどうだっていいんですよ。今回は私の可愛いお嬢様のお話をさせてもらおうかと思うのです!
お嬢様の本名は、マリア=イヴ=ヴェルゴール。実はお嬢様自身もご自分の本名をご存知でないのです。
5歳まで表舞台に立たないので、それまで本名を覚える必要がない、というのが主な理由ですね。そのため、4歳になればお嬢様は表舞台に出るための様々なマナーを学んで頂くことになります。でもお嬢様の賢さは『本当に3歳なのか?』と大人を悩ませるくらいなので、きっとなんの問題もないのでしょうね。
本当にお嬢様は賢い方なのですよ、本当に。
「さっきから何をぶつぶつ言ってらっしゃるの?」
私のことをみたお嬢様が、訝しそうに眉をひそめている。ヒステリア様によく似た綺麗なお顔や髪に、セリス様によく似たどこまでも澄んでいる青い瞳。ほぉっと見惚れていると、さらに険しい表情になった。
「私に見惚れてないで、お仕事なさい。全くもう!」
「はぁい、お嬢様」
なんて可愛いお嬢様。
メルはお嬢様に一生ついていきます!
なぁんて、お嬢様ラブの私にも小さな秘密がひとつある。
『このことはマリアにはしばらく内緒じゃぞ?』
そう、夢の中で神となのる白い球は言った。
白い球と出会ったのは、まだ私が小さい頃。私はとある役割を与えられて誕生した。男爵家の三女であったが、それなりに幸せに暮らしていた。
そんな私がなぜ勘当されるに至ったか。
実は私、白い球が用意したこの世界のヒロインだったからだ。
私は白い球が思い描くヒロインとして、恐らく立派に働いたのだと思う。隣の国の王子と両思いになり、その王子と婚約している令嬢の邪魔をした。あの頃はとにかく若かった。私はただ幸せになりたかった。ヒロインだと知っていたから、そんな行動を取れたのだろうと思う大胆なこともたくさんした。
だがある日、そんな私に天罰が落ちる。
婚約者のいる王子と浮気をしていたのだから、私が罰せられるのは当たり前のことだった。王子は平民落ちし、私は家を勘当された。
平民落ちした王子はといえば、『落ちたのはお前のせいだ!お前の顔なんて二度と見たくもない!』と言いながら、どこかへ消えてしまった。あの時ばかりはヒロインなのにどうして、と白い球を恨んだ。
そんなある日、行儀見習いとしてたった一度、少しの間だけそこにいた私を、ヒステリア様が拾ってくださったのだ。
「産まれてくるこの子を、あなたに見ていてほしいのよ」
と、私を信頼しお嬢様を預けてくださった。
その後誕生したお嬢様は、本当に可愛らしい赤子で、私はヒステリア様にご恩を返すためにも一生守っていくと決めたのだ。
そんな私の元へ白い球は現れた。
『お主の物語は終わった。我は次の物語へ移ることにしたのじゃ。今度はお主の愛するマリアがヒロインじゃよ』
不運にも、次のヒロインは私が守ると決めたお嬢様だった。守ると決めた矢先、これだなんて…。
『じゃがのぅ、我はマリアと約束をしてしもうてのぅ。この世界では好き勝手やってよいと言ってしまったのじゃ』
「好き勝手って…ヒロインとしての道を歩まなくてもいいということ?」
『そういうことじゃの。一応ひろいんくらいに我は思っておる。第一こいつは多分言うこときかん。メル、お主と違っての』
ということは、私がお嬢様がヒロインとしての道を歩むことのないように傍で支えることが可能ということなのね。
『お、そうじゃ。今回は面白いことになりそうでのう。我もその様子を近くでみたい。お主の身体、一日長くて30分貸さんか?』
「ええ、いいわ。そのかわり、私も条件があるの」
『なんじゃ?』
「あなたに身体を貸す時も私の意識は残していておいて。私も話を聞くわ。あとお嬢様の夢に現れるのは禁止よ。現れていいのは、私の身体を使う時だけ」
『なんじゃ、条件の多いやつじゃのう』
「じゃなきゃ身体を貸さないわ」
『わかった、わかった、それでよい』
そうして私と白い球は契約を結んだ。マリアには内緒、というのが前提として。
まさか、殴られる日がくるとは思わなかったけれど、今のところ悪役令嬢も現れていないし、こんなに早い段階で攻略者が2人も現れるとは思っていなかったけれど、まあまあ良い感じなのでは?と思っている。
私が目指すエンディングはたったひとつ。
お嬢様が勘当されず、修道院行きなどにはならず、平民落ちもせず、恋愛も成就し、お嬢様が笑っているエンディング。
私は絶対にお嬢様を守ってみせる、と未だに険しい顔して私を訝しんでいるお嬢様を見つめ決意するのだった。
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