2 / 13
2話 A cat in gloves catches no mice
しおりを挟む
2年も前の話になるか…………
俺はターゲットの調査を終えて、深夜遅くに帰宅しようと帰路を急いでいた。表向きは商社マンと言う肩書きとなっているので、どうしても諜報活動は夕方以降となるのだ。
俺は味方の國出身だが、ここ……北方の国の対外情報庁に所属しており、今日の依頼もそこからの依頼だった。異国の人間は業界に面が割れていない為、重宝される。勿論、俺以外にもスパイはいた。
彼女のように…………
この深夜の時間帯に憂鬱な雨が降って来た。それでも弱く、霧のような雨。
…………?
薄暗いネオンが反射する中で、何かが動いた。それが影になって映る。よく見たら細い路地から出て来た1匹の猫。ゆっくり近づいて見ると、血塗れで大きな怪我をしている。まともに歩けないようだ。俺は更に近づき猫に近寄る。
猫は肩で息をしながら、俺の顔を覗き込んだ。
ブルブル震えながら、ギリギリの生命を刻みながら。
そして、細い路地に踵を返す。2、3歩進んだところで俺を見る。付いてこい……そう言っている……それが分かった。
路地に入るともう1匹、別の猫が倒れていた。こいつも激しくやられている。倒れちゃいるが、確認すると息は微かにある…………
そう言ってるうちに、最初の猫もぶっ倒れちまった。
俺はこの2匹を抱えて、ドクターの元に走る。
元の道を引き返してトンネルに向かう。暫く歩いた先……そこにはトンネルがある。
この歩道専用の長いトンネルは薄暗く、出口の灯りさえまともに見えないくらいだ。暗いトンネルの中、俺の靴音だけが響く。そのトンネルの中程に俺は立ち、壁に向かってIDカードをかざす。
すると、何もない壁が扉の形状になり、扉の右側を押すと扉はゆっくりと開いた。
扉を閉めて奥へと進む。坑道のような一本道をひたすら進むと、そこにはまた扉がある。カードをかざすと扉が開く。
その先には、多くの機器、電子部品、薬、外科手術に用いる用具…………
それらに囲まれた、中央の大きなテーブルに、1人の男が居る。ドクター・マレと呼ばれている修理屋だ。
生物の外科手術、治療…………シンパシーネック等の修理、そして魔改造手術を施す男。
俺が北方の國に潜入してからの付き合いで、幾度となく彼に救われて来た。今の状況で頼りに出来るのはこの男しか居ない。
「…………珍しいな、猫を連れて来るなんて。」
「任務帰りにたまたま会っちまった……見て貰えるか」
俺は、2匹の猫をドクターのテーブルにゆっくりと置いた。
ドクター・マレは、1匹ずつ身体の部位を確認しながら、メモに症状?(俺からは見えない)を書き込んでいる。
「こりゃ多分、アレだな……改造された奴らにやられたんだろう。普通の猫じゃ、爪でここまで深く傷を付けられない。」
その正体は、魔改造手術。
獣体強化研究の最大手「Kronos Bioengineering」は、世界初となる動物専用インターフェース装置「Sympathy Neck(シンパシー・ネック)」を公開した。
首輪状の外見を持つこの装置は、装着された動物の脊髄へ直接接続し、神経信号を解析・制御する。これにより肉体と精神状態を最適化し、本来の能力を超えた力を発揮できるという。
開発責任者であるローレンス・ケイン博士は、発表会でこう語った。
「シンパシーネックは、動物が持つ特性を極限まで引き出します。狩猟本能を鋭利に、感覚を拡張し、欠点を補う。人類のために、彼らを新たなパートナーへと進化させる技術なのです。」
発売から半年。シンパシーネックは軍事機関を中心に急速に普及した。
犬は索敵兵として、猫は暗殺・潜入任務として、鳥類は高高度監視として導入され、各国の特殊部隊は次々に「強化獣」を採用していった。
動物は装着により強靭な肉体を得るだけでなく、AIが脳内に直接「行動指令」を送ることで、恐怖や痛みを抑制された。任務に最適化された個体は、人間の兵士以上の効率を発揮すると報告されている。
だが、栄光の裏には陰があった。
過度な改造を施された個体の多くは、任務終了後に凶暴化し、制御不能となった。
また「装着動物の精神崩壊」や「アイデンティティの喪失」が多発し、装着者は長期任務を終えるたびに再調整・再洗脳を余儀なくされた。弱き動物はここで生命を失う。
闇市場では「不法改造シンパシーネック」が高額で流通。違法ファイトや暗殺に利用され、都市部での動物暴走事件が急増した。
国際動物倫理委員会は、シンパシーネックが「生命への加虐的技術」であるとする報告書を提出した。
しかし軍事利用を理由に多くの国は規制に反対し、現状維持を選択した。
犬は恐怖を失い、
猫は沈黙の刃となり、
鳥は目となり耳となった。
人類は動物の首に「神」を飼った。だが、その神に従えるのは、ほんの一握りの生き残りだけだった。
そして、その瞳に映る孤独や苦痛には、誰も耳を貸さなかった。本当に強き生物のみが、それに耐える事が出来た。
…………………………
「A cat in gloves catches no mice」 意味:慎重すぎると成果を上げられない。 例:遠慮してちゃダメ、猫が手袋してたらネズミは捕まえられないよ。
…………………………
俺はターゲットの調査を終えて、深夜遅くに帰宅しようと帰路を急いでいた。表向きは商社マンと言う肩書きとなっているので、どうしても諜報活動は夕方以降となるのだ。
俺は味方の國出身だが、ここ……北方の国の対外情報庁に所属しており、今日の依頼もそこからの依頼だった。異国の人間は業界に面が割れていない為、重宝される。勿論、俺以外にもスパイはいた。
彼女のように…………
この深夜の時間帯に憂鬱な雨が降って来た。それでも弱く、霧のような雨。
…………?
薄暗いネオンが反射する中で、何かが動いた。それが影になって映る。よく見たら細い路地から出て来た1匹の猫。ゆっくり近づいて見ると、血塗れで大きな怪我をしている。まともに歩けないようだ。俺は更に近づき猫に近寄る。
猫は肩で息をしながら、俺の顔を覗き込んだ。
ブルブル震えながら、ギリギリの生命を刻みながら。
そして、細い路地に踵を返す。2、3歩進んだところで俺を見る。付いてこい……そう言っている……それが分かった。
路地に入るともう1匹、別の猫が倒れていた。こいつも激しくやられている。倒れちゃいるが、確認すると息は微かにある…………
そう言ってるうちに、最初の猫もぶっ倒れちまった。
俺はこの2匹を抱えて、ドクターの元に走る。
元の道を引き返してトンネルに向かう。暫く歩いた先……そこにはトンネルがある。
この歩道専用の長いトンネルは薄暗く、出口の灯りさえまともに見えないくらいだ。暗いトンネルの中、俺の靴音だけが響く。そのトンネルの中程に俺は立ち、壁に向かってIDカードをかざす。
すると、何もない壁が扉の形状になり、扉の右側を押すと扉はゆっくりと開いた。
扉を閉めて奥へと進む。坑道のような一本道をひたすら進むと、そこにはまた扉がある。カードをかざすと扉が開く。
その先には、多くの機器、電子部品、薬、外科手術に用いる用具…………
それらに囲まれた、中央の大きなテーブルに、1人の男が居る。ドクター・マレと呼ばれている修理屋だ。
生物の外科手術、治療…………シンパシーネック等の修理、そして魔改造手術を施す男。
俺が北方の國に潜入してからの付き合いで、幾度となく彼に救われて来た。今の状況で頼りに出来るのはこの男しか居ない。
「…………珍しいな、猫を連れて来るなんて。」
「任務帰りにたまたま会っちまった……見て貰えるか」
俺は、2匹の猫をドクターのテーブルにゆっくりと置いた。
ドクター・マレは、1匹ずつ身体の部位を確認しながら、メモに症状?(俺からは見えない)を書き込んでいる。
「こりゃ多分、アレだな……改造された奴らにやられたんだろう。普通の猫じゃ、爪でここまで深く傷を付けられない。」
その正体は、魔改造手術。
獣体強化研究の最大手「Kronos Bioengineering」は、世界初となる動物専用インターフェース装置「Sympathy Neck(シンパシー・ネック)」を公開した。
首輪状の外見を持つこの装置は、装着された動物の脊髄へ直接接続し、神経信号を解析・制御する。これにより肉体と精神状態を最適化し、本来の能力を超えた力を発揮できるという。
開発責任者であるローレンス・ケイン博士は、発表会でこう語った。
「シンパシーネックは、動物が持つ特性を極限まで引き出します。狩猟本能を鋭利に、感覚を拡張し、欠点を補う。人類のために、彼らを新たなパートナーへと進化させる技術なのです。」
発売から半年。シンパシーネックは軍事機関を中心に急速に普及した。
犬は索敵兵として、猫は暗殺・潜入任務として、鳥類は高高度監視として導入され、各国の特殊部隊は次々に「強化獣」を採用していった。
動物は装着により強靭な肉体を得るだけでなく、AIが脳内に直接「行動指令」を送ることで、恐怖や痛みを抑制された。任務に最適化された個体は、人間の兵士以上の効率を発揮すると報告されている。
だが、栄光の裏には陰があった。
過度な改造を施された個体の多くは、任務終了後に凶暴化し、制御不能となった。
また「装着動物の精神崩壊」や「アイデンティティの喪失」が多発し、装着者は長期任務を終えるたびに再調整・再洗脳を余儀なくされた。弱き動物はここで生命を失う。
闇市場では「不法改造シンパシーネック」が高額で流通。違法ファイトや暗殺に利用され、都市部での動物暴走事件が急増した。
国際動物倫理委員会は、シンパシーネックが「生命への加虐的技術」であるとする報告書を提出した。
しかし軍事利用を理由に多くの国は規制に反対し、現状維持を選択した。
犬は恐怖を失い、
猫は沈黙の刃となり、
鳥は目となり耳となった。
人類は動物の首に「神」を飼った。だが、その神に従えるのは、ほんの一握りの生き残りだけだった。
そして、その瞳に映る孤独や苦痛には、誰も耳を貸さなかった。本当に強き生物のみが、それに耐える事が出来た。
…………………………
「A cat in gloves catches no mice」 意味:慎重すぎると成果を上げられない。 例:遠慮してちゃダメ、猫が手袋してたらネズミは捕まえられないよ。
…………………………
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします
二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位!
※この物語はフィクションです
流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。
当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる