the last one 〜最後の一匹〜

パレット太郎

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3話 A cat may look at a king

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「…………で、ピーク。こいつら魔改造するか? どっちにしても普通の手術じゃ後遺症は残るぜ。」

「魔改造は依頼する。ただし――戦闘用にはして欲しく無い。武器は要らねぇ。諜報の手伝いができる、そのレベルでだ……可能か?」

「可能か……だぁ? ははは、らしいな。……まぁ、やってみるさ。ただな、こいつらは傷が深すぎる。回復に時間がかかる。暫く預かることになるぞ。」

「任せる……助かる。あんたがいて良かった。」

ピークは金貨を10枚、マレの机に置いた。
重みのある金属音が部屋に響き、それが合図のように、彼は背を向ける。
夜は更けていた。雨の気配を背中に受けながら、家へと戻る。

湿った夜の中、玄関を閉めてネクタイを緩める。
冷蔵庫からビールを一本。
ソファに沈み込むと、泡の弾ける音が一日の疲労をほどいていく。

「猫、か……」

足元に気配。擦り寄ってきたのはミケ。
瓶を片手に、もう一方の手で机の引き出しを開ける。瑠璃色の小瓶、その中の黒いカプセルを取り出す。

「ほら、ミケ。」

だがミケは口をつけない。ただじっとピークを見つめている。
……そうか。他の言葉は要らない……

「ただいま、ミケ。」

まるで「遅ぇんだよ」と言わんばかりに、ミケは小さなカプセルを飲み込んだ。

Nutripod(ニュートリポッド)。通称トリポカプセル。
黒曜石のような殻にKronos社の刻印。匂いも味もない。だが、これ一つで猫は半日動ける。

胃で消化されず、腸で直接吸収される。三十分もあれば、肉体は再び走り出す。
恐怖も痛みも鈍らせ、眠気を断ち切る。……代わりに、これがないと身体は壊れていく。餌であり、鎖でもある。

ミケはもともと目が利いた。
その特性を中心に改造を受けた。

暗闇でも昼のように見える網膜。赤外線も紫外線も捉える。
シンパシーネックと連動して、距離や温度までも視界に数値として重ねるHUD。
 
水晶体はカメラのレンズのように動き、数百メートル先の毛並みまで識別できる。
そして――眼が捉えた瞬間に筋肉が自動で反応する。狙撃手顔負けの精度を持つ猫。

ただし光に依存しすぎる。閃光を浴びれば神経は焼けつき、激痛で倒れる。
進化の裏に、必ず代償はある。

今、ミケは膝の上で無防備にあくびをしている。
その頭を撫でながら、ピークは街の灯りを見た。

「……お前はもう、ただのミケじゃねぇ。けど……生きて帰って来てくれてありがとな。」

ミケは、ムクっと起き上がりテーブルに置いていたチェスの駒を暫く見つめて、1つをパタンっと倒した。
現実のひとつが、思い出となるかのように。

…………………………
「A cat may look at a king」
意味:地位が低くても、権利はある。
例:どんな偉い人でも、猫は堂々と見つめるよね。
…………………………
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