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11話 The cat’s out of the bag
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ブラック・ケアン30の琥珀が、グラスに落ちる。
氷が小さく鳴って、静かな部屋に澄んだ音を残した。
ピークは深く息をつき、2杯目をゆっくり傾ける。
テーブルの上には、まだ手をつけていないジャーキーの皿。そこからひとつまみ…………スモーキーな香りがスコッチと相まって更に濃厚な旨さを引き立てる。
テーブルに置かれている、写真立ての中のマチルダが「1人で楽しんでんじゃないわよ」とクールな顔でピークを見つめている。
「悪りぃ…………マチルダも、乾杯だ。」
グラスをもう1つ取り出してスコッチを注ぐ。
軽くグラスを合わせると、仕切りにピークを見ていたミケが、安心した顔をして食事を続ける。
タマはがっつきながら赤身を咀嚼し、カツオを前に舌なめずり。
普段は無口のノラでさえ、この高級食材には喉を鳴らしてしまう。夢中で切り身を齧っていた。
平和の匂いがする…………
血と煙の街に似つかわしくない、柔らかな夜の匂いが。
だが…………
ノラの耳が、カチリッと音を立てるように震えた。
タンッ
ノラの右足が、床を叩く。
ミケが窓際に飛び移り、HUDを赤外線モードに切り替える。目まぐるしく動く水晶体。
次の瞬間、ミケの網膜HUDに赤い数値が走る。
「熱源接近!!」
タマが口を止め、鼻先をひくつかせた。
「火薬の匂い!!外からだ!!!」
窓ガラスがビリビリと震える。
ピークはゆっくりとグラスを置き、立ち上がった。
窓の外を、見る…………
(くそ!ちくしょう!飯食い終わってねぇのに!!)
蜂の羽音のような、不気味なざわめきが夜を覆う。
カーテンを裂くと、そこに広がっていたのは群れを成す小型ドローン、Murmur(マーマー)。
数十機、群体のように蠢き、夜空を黒く塗りつぶしている。
ヤバいぞ。
ピークは、ベッドのマットを立て、ベッド下に収納されたオブリビオン社製のアロイ・パイプをねじ込む。更に逆側から持ち上げパイプを装着して持ち上げる。防弾仕様のこれが屋根となり、ピーク達を護る。ピークと3匹はこの中で息を潜めて時を待つ。
マーマーの群れの中心。
ひときわ大きな影が、沈黙のままホバリングしていた。
Heavy Murmur(ヘビーマーマー)。
ビル一棟を吹き飛ばすために造られた、無人の爆撃機。
ノラが咆哮と共にブレードを展開する。
ミケはベッド下から白く光るHUDに戦術データを重ねる。
タマは震える声で「来る……来る……!」と呟きながら、フェイスガードを装着した。
轟音。
「猫達がまだ喰ってんだろうが!!」
外が一瞬、白い閃光に包まれる。
壁が砕け、炎と瓦礫が部屋に雪崩れ込む。
テーブルもグラスも、さっきまでの宴の残骸ごと、
全てが爆風に飲まれた。
この部屋だけじゃない、建物ごと破壊された。
建物が崩れて落ちる。
ピークは崩れ落ちる天井の下で、
猫たちを庇いながら激しく吠えた。
「もう、俺の事はどうでもいい。
お前ら、絶対生き残ってくれ!!」
瓦礫と化した建物の中で、ベッドは1人と3匹を護った。但し、瓦礫の山がベッドを覆っている。出て行くのも困難な状況だ。ピークはアロイ・パイプを外して周囲を確認する。一番瓦礫の山が手薄となっている箇所に、パイプを差し込み瓦礫を除けていく。
3匹が飛び出る。ベッド周囲を囲む。
ようやくピークも脱出する。
一本道の道路。前後には政府のロゴが入った装甲車が並ぶ。連中の数も半端なく多い。
「おい!!お前らなら逃げ切れる!!
今すぐ、逃げろ!!」
3匹は……一歩も動かず。
臨戦態勢でピークを護る。構えている。
「そうかぁ…………」
ピークは胸元に入れていた2丁の銃、Valturn M7 “Whisper”(ヴァルターン・M7 “ウィスパー”)を取り出す。
ヴァルターン・M7 “ウィスパー”(通称:M7)。コンパクト・サイレンサー内蔵式ハンドガン。口径:9×21mm 特殊徹甲弾対応。マットブラックのスライドに、白い狼の刻印。グリップは樹脂にカーボン混合。
胸元やホルスターに収まる超薄型設計(厚み2.5cm程度)。サイレンサーが銃身に内蔵されているため発射音は低い呼吸音程度。反動制御システムにより、連射しても照準がほとんどブレない。軍用規格を外れた裏仕様のため、シリアルナンバー無し。
「足掻くか…………最期まで…………」
瓦礫を背にして進む、1人と3匹。
マチルダ…………
…………………………
「Cat is out of the bag」(英語)
秘密はもう隠せない。袋から飛び出した猫のように、全てが暴かれた、いう意味の英語の慣用句。
意味:この表現は、商人が子豚の代わりに猫を袋に入れて売ろうとした際に猫が袋から飛び出し、嘘がバレたという語源を持つと信じられている。
例:「The cat's out of the bag; everyone knows about their engagement now.」(もう秘密ではないよ。彼らの婚約のことはみんな知っている)
…………………………
氷が小さく鳴って、静かな部屋に澄んだ音を残した。
ピークは深く息をつき、2杯目をゆっくり傾ける。
テーブルの上には、まだ手をつけていないジャーキーの皿。そこからひとつまみ…………スモーキーな香りがスコッチと相まって更に濃厚な旨さを引き立てる。
テーブルに置かれている、写真立ての中のマチルダが「1人で楽しんでんじゃないわよ」とクールな顔でピークを見つめている。
「悪りぃ…………マチルダも、乾杯だ。」
グラスをもう1つ取り出してスコッチを注ぐ。
軽くグラスを合わせると、仕切りにピークを見ていたミケが、安心した顔をして食事を続ける。
タマはがっつきながら赤身を咀嚼し、カツオを前に舌なめずり。
普段は無口のノラでさえ、この高級食材には喉を鳴らしてしまう。夢中で切り身を齧っていた。
平和の匂いがする…………
血と煙の街に似つかわしくない、柔らかな夜の匂いが。
だが…………
ノラの耳が、カチリッと音を立てるように震えた。
タンッ
ノラの右足が、床を叩く。
ミケが窓際に飛び移り、HUDを赤外線モードに切り替える。目まぐるしく動く水晶体。
次の瞬間、ミケの網膜HUDに赤い数値が走る。
「熱源接近!!」
タマが口を止め、鼻先をひくつかせた。
「火薬の匂い!!外からだ!!!」
窓ガラスがビリビリと震える。
ピークはゆっくりとグラスを置き、立ち上がった。
窓の外を、見る…………
(くそ!ちくしょう!飯食い終わってねぇのに!!)
蜂の羽音のような、不気味なざわめきが夜を覆う。
カーテンを裂くと、そこに広がっていたのは群れを成す小型ドローン、Murmur(マーマー)。
数十機、群体のように蠢き、夜空を黒く塗りつぶしている。
ヤバいぞ。
ピークは、ベッドのマットを立て、ベッド下に収納されたオブリビオン社製のアロイ・パイプをねじ込む。更に逆側から持ち上げパイプを装着して持ち上げる。防弾仕様のこれが屋根となり、ピーク達を護る。ピークと3匹はこの中で息を潜めて時を待つ。
マーマーの群れの中心。
ひときわ大きな影が、沈黙のままホバリングしていた。
Heavy Murmur(ヘビーマーマー)。
ビル一棟を吹き飛ばすために造られた、無人の爆撃機。
ノラが咆哮と共にブレードを展開する。
ミケはベッド下から白く光るHUDに戦術データを重ねる。
タマは震える声で「来る……来る……!」と呟きながら、フェイスガードを装着した。
轟音。
「猫達がまだ喰ってんだろうが!!」
外が一瞬、白い閃光に包まれる。
壁が砕け、炎と瓦礫が部屋に雪崩れ込む。
テーブルもグラスも、さっきまでの宴の残骸ごと、
全てが爆風に飲まれた。
この部屋だけじゃない、建物ごと破壊された。
建物が崩れて落ちる。
ピークは崩れ落ちる天井の下で、
猫たちを庇いながら激しく吠えた。
「もう、俺の事はどうでもいい。
お前ら、絶対生き残ってくれ!!」
瓦礫と化した建物の中で、ベッドは1人と3匹を護った。但し、瓦礫の山がベッドを覆っている。出て行くのも困難な状況だ。ピークはアロイ・パイプを外して周囲を確認する。一番瓦礫の山が手薄となっている箇所に、パイプを差し込み瓦礫を除けていく。
3匹が飛び出る。ベッド周囲を囲む。
ようやくピークも脱出する。
一本道の道路。前後には政府のロゴが入った装甲車が並ぶ。連中の数も半端なく多い。
「おい!!お前らなら逃げ切れる!!
今すぐ、逃げろ!!」
3匹は……一歩も動かず。
臨戦態勢でピークを護る。構えている。
「そうかぁ…………」
ピークは胸元に入れていた2丁の銃、Valturn M7 “Whisper”(ヴァルターン・M7 “ウィスパー”)を取り出す。
ヴァルターン・M7 “ウィスパー”(通称:M7)。コンパクト・サイレンサー内蔵式ハンドガン。口径:9×21mm 特殊徹甲弾対応。マットブラックのスライドに、白い狼の刻印。グリップは樹脂にカーボン混合。
胸元やホルスターに収まる超薄型設計(厚み2.5cm程度)。サイレンサーが銃身に内蔵されているため発射音は低い呼吸音程度。反動制御システムにより、連射しても照準がほとんどブレない。軍用規格を外れた裏仕様のため、シリアルナンバー無し。
「足掻くか…………最期まで…………」
瓦礫を背にして進む、1人と3匹。
マチルダ…………
…………………………
「Cat is out of the bag」(英語)
秘密はもう隠せない。袋から飛び出した猫のように、全てが暴かれた、いう意味の英語の慣用句。
意味:この表現は、商人が子豚の代わりに猫を袋に入れて売ろうとした際に猫が袋から飛び出し、嘘がバレたという語源を持つと信じられている。
例:「The cat's out of the bag; everyone knows about their engagement now.」(もう秘密ではないよ。彼らの婚約のことはみんな知っている)
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