花喰らうオメガと運命の溺愛アルファ

哀木ストリーム

文字の大きさ
16 / 55
一、蕾

一、蕾 ⑯

 何かの儀式のように優しく指輪を薬指にはめられ、婚約指輪のようだ。
 やっと戻ってきた一つ目の指輪が、だんだんと溢れてきた涙でぼやけてくる。

「祖母は、貴方の祖父に無理やりに番にされ、この部屋に閉じ込められた」
 アルファに高尚も下劣もいない。
 運命だと分かれば、何をしても良いと思っているんだ。
 僕の感情はいらない。叫んでも、心はいらないんだろう。
 あれほど祖母は僕に口酸っぱく教えてくれていたのに、なんてザマだろうか。

「その話は、身体を休めてから――」
「そこで祖母の匂いをこの部屋から漂わせる中、隣に部屋で貴方の祖父は、愛する人と初夜を過ごしたそうですね。祖母の香りで身体を発情させて、隣で別の女性を抱いたと」


 祖母は初めてヒートを迎えた僕に、何度も何度もその話を伝えた。
 祖母は、この屋敷から逃げ出す前まで憎んでいたと。運命の番を憎んで憎んで、そして離れる方法を考え、花の存在を知った。
 花を食べた祖母の匂いを嗅ぐと、相手は吐き気や体が痺れて思うように動けなくなったと。
 その隙を見て祖母がこの屋敷から逃げ出した。屈辱でいっぱいだったこの屋敷から逃れられた。
 そして僕に花を食べることを薦めくれていたのに。
 
 毒々しい色の花しかない。
 美味でもない。
 それでもそんな花びらを飲み込まないといけないほど、祖母は絶望していたんだ。

「君には、そう伝わっているんですね。私とは違う」
「加害者が都合のいい話にすり替えるのは仕方ないでしょ」
「じゃあどうして、貴方の祖母は私に貴方の首輪の鍵を贈ってくれたんでしょうね」
「……は?」

 彼は脱ぎ散らかった服を集め、ペットボトルを枕元に置くと部屋から出ていこうとする。ドアを開けて少し振り返る。
「服は全て洗ってくるので、大人しくしていなさい」
「……体が動けたら逃げてやるよ」

 肢体を投げ出してベットに俯せに倒れているのは、お前が気絶しても何度も何度も猿のように腰を振ったからだ。
 本当に花とアルファの精液が体の中で反応しているのか、逃げ出す元気なんてない。

 身体に浸透していくうちに、花の効果と敵対して暴れているのか腹の中が気持ち悪くなってきた。

 縛られているわけではない。取引を持ち掛けたのは僕。

 彼に花の香りが効かないなんて思わなかったんだ。
 こんな鶏ガラみたいな身体のオメガに、欲情するとも思わなかったし首輪が外れるとも思わなかった。
 
 番になった?

 実感なんて湧かない。
 彼には憎しみと恨みしか湧かなかった。

感想 0

あなたにおすすめの小説

運命の番は僕に振り向かない

ゆうに
BL
大好きだったアルファの恋人が旅先で運命の番と出会ってしまい、泣く泣く別れた経験があるオメガの千遥。 それ以来、ずっと自分の前にも運命の番があらわれることを切に願っていた。 オメガひとりの生活は苦しく、千遥は仕方なく身体を売って稼ぐことを決心する。 ネットで知り合った相手と待ち合わせ、雑踏の中を歩いている時、千遥は自分の運命の番を見つけた。 ところが視線が確かに合ったのに運命の番は千遥を避けるように去っていく。彼の隣には美しいオメガがいた。 ベータのような平凡な見た目のオメガが主人公です。 ふんわり現代、ふんわりオメガバース、設定がふんわりしてます。 完結しました!ありがとうございました。

売れ残りオメガの従僕なる日々

灰鷹
BL
王弟騎士α(23才)× 地方貴族庶子Ω(18才) ※ 第12回BL大賞では、たくさんの応援をありがとうございました!  ユリウスが暮らすシャマラーン帝国では、平民のオメガは18才になると、宮廷で開かれる選定の儀に参加することが義務付けられている。王族の妾となるオメガを選ぶためのその儀式に参加し、誰にも選ばれずに売れ残ったユリウスは、国王陛下から「第3王弟に謀反の疑いがあるため、身辺を探るように」という密命を受け、オメガ嫌いと噂される第3王弟ラインハルトの従僕になった。  無口で無愛想な彼の優しい一面を知り、任務とは裏腹にラインハルトに惹かれていくユリウスであったが、働き始めて3カ月が過ぎたところで第3王弟殿下が辺境伯令嬢の婿養子になるという噂を聞き、従僕も解雇される。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

ただ愛されたいと願う

藤雪たすく
BL
自分の居場所を求めながら、劣等感に苛まれているオメガの清末 海里。 やっと側にいたいと思える人を見つけたけれど、その人は……

貧乏Ωが御曹司αの将来のために逃げた話。

ミカン
BL
オメガバース

その首輪は、弟の牙でしか外せない。

ゆずまめ鯉
BL
養子ゆえに、王位継承権を持たないオメガで長男のレイン(24)は、国家騎士団として秘密裏に働き、ただ義弟たちを守るためだけに生きてきた。 第一継承権を持つアルファで次男のリオール(19)は、そんな兄に「ごく潰し」と陰口を叩く連中を許せなかった。自分を犠牲にしてまで守る価値はないと思っていた。なにかと怪我の多い国家騎士団を辞めさせたかった。 初めて訪れた発情期のとき。約束をすっぽかされたリオールが不審に思い、兄の部屋へ行くと、国家騎士団の同僚──グウェンソード(28)に押し倒されるところを目撃して激高する。 「今すぐ部屋から出ろ!」 独占欲をあらわにしたリオールは、グウェンソードを部屋から追い出し、兄であるレインを欲望のままに抱いた。 翌朝、差し出されたのは特注の首輪──外せるのはリオールのみ。 「俺以外に触らせるな」 そう囁かれたレインは、何年も首輪と弟の執着に縛られ続けてきた。 弟には婚約者がいるのに、こんな関係を続けてもいいのか。 本当にこのままでもいいのか。 ひたすら執着して独占したがる弟と、罪悪感に苛まれる兄。 その首輪は、いつか弟の牙で血に染まるのか──。 どうにかしてレインを落としたいリオールと、弟との関係に悩むレインのオメガバースです。 リオール・グランケット(19)×レイン・グランケット(24) ※この作品は2015年頃に本文を書き、2017年頃にオメガバースに改稿、さらに2026年に手直しした作品になります。読みにくいかもしれません。ご了承ください。 三人称ですが攻めだったり受けだったり視点がよくかわります。攻め視点多めです。

当たり前の幸せ

ヒイロ
BL
結婚4年目で別れを決意する。長い間愛があると思っていた結婚だったが嫌われてるとは気付かずいたから。すれ違いからのハッピーエンド。オメガバース。よくある話。 初投稿なので色々矛盾などご容赦を。 ゆっくり更新します。 すみません名前変えました。

繋ぎの婚約を契約通り解消しようとしたら、王宮に溺愛軟禁されました

こたま
BL
エレンは子爵家のオメガ令息として産まれた。年上のアルファの王子殿下と年齢が釣り合うオメガ令息が少なく、他国との縁組も纏まらないため家格は低いが繋ぎとして一応婚約をしている。王子のことは兄のように慕っており、初恋の人ではあるけれど、契約終了時期か王子に想い人が現れた時には解消されるものと考えていた。ところが婚約解消時期の直前に王子宮に軟禁された。結婚を承諾するまでここから出さないと王子から溢れるほどの愛を与えられる。ハッピーエンドオメガバースBLです。