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三、落花
番外編
しおりを挟む翻訳した一冊目の本の発売が決定した。長年のファンからは発売日前なのにもう出版社の方に予約の連絡が来ているらしい。発売日前に重版予定だと連絡も貰った。
少しだけプレッシャーの中、竜仁さんは花束と新しいパソコンをプレゼントに帰宅してきた。そして僕の生まれた年のワインも。
「竜仁さんってお酒飲めるんですか」
「全然。今夜は辰紀くんに私の介抱を頼みますよ」
発売日を僕よりも喜んでくれる姿に、僕も嬉しい。
サラダとハンバーグとスープ。簡単なものしか作れない上に、お金持ちである彼には質素すぎるであろうメニューを、外国人のリアクション並みに喜んでくれるから僕も、どんどん料理の腕を上げつつある。多分。
竜仁さんのマンションは、有栖川家の本社から車で十五分ほど。
タワーマンションが並ぶ高級住宅地の中にあった。もちろん、有栖川家の土地らしいので、まわりに親戚の方々がいるらしい。が、会う必要はないらしい。
結婚のご挨拶も、写真もない葉書のみで済ませたし。
彼は有栖川家の血縁を優先にした同族経営に嫌悪して今は若く優秀な人材で改革中らしい。
なので分家だと本家だの柵はもう取り払うらしい。
「そういえば、胡蝶さんが結婚するらしい。君と私に式に参加してほしいとか」
「……ふうん。僕は構わないですが」
「まあ私は、婚約破棄されたと立場を不安がっている彼女の顔を立てるために参加しますが、無理しなくていいです。でも相手は極上の美人らしいので会わせるのは嫌だな」
「胡蝶さんのお相手、女性の方なんですね」
「ああ。あんなに蔑んでいたように思えたが、オメガの方らしいね」
ちょっと許せないなあって頬を膨らませる竜仁さんに、ハンバーグを押し付けると、嬉しそうに口を開けた。食べさせると、機嫌が跳ね上がるのは一緒に住んでもうすぐ一年だから僕にも分かる。ワインも開けていいか聞いてから、コルク栓を回していたら、手に痛みが走った。
「いたっ」
「大丈夫? まだ成長痛?」
すぐのワインを奪われ、彼が簡単に開けてくれたので、僕は頷く。
「成人してるくせに、一年で五センチも伸びてしまって」
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