虹色の子~大魔境で見つけた少年~

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華護り side アシュト

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ギュゼリア辺境伯領の中でも最も美しいとされる、川の都ドルトマンバータウン。
ここは、ギュゼリアの発展した町の中でも美術工芸に秀でた人物を大切に育て、商売で成功したドルトマンという貴族が作った町である。
もちろん、高品質の華護りが貴族向けに多く造られている。
「えぇっとー、リーナの買い物情報によれば…あ、あった!ブランシュ工房!」
町一番の職人がいるという、ブランシュ工房。
五階建てのレンガのビルは華やかで、整備も行き届いていた。
「お邪魔しまっすー。」
アシュトは店内に入ると、カウンターに並べられている安価な華護りと、ガラスのケースに入れられ、一つ一つに値札が置かれている高価なものとがあったので、迷わずガラスケースのカウンターに進むと、ルシオから預かっているガルクラフトの紋章の木札を見せて言った。
「あの、オーナーいらっしゃいますか?ガルクラフト様の遣いで参りました。最高級の華護りを、とのことです。」
堂々と、この世界で一番名が知られているであろうルシオの家名を使わせてもらう。
その名前を聞いた店員はすぐに奥に行った。
待つこと数分。
「お待たせいたしました。ガルクラフト卿の御使いの方ですね。」
工房のオーナー、つまり、ブランシュ本人がやってきた。五十歳くらいの、白髪混じりの男だった。
「はい。最高の華護りを、二つ。一つは最も美しいものを。もう一つは…緋色の砡の欠片で作ったものを。」
緋色のものを求めたとき、ブランシュは目を見開いた。
「ほぉ、さすがですね。華護りは純金で覆われているのに、使用されている砡の欠片が色ごとに違うということをご存じとは。」
(ひぇ、ディラン様の言うとおりだった…!)
実は、ルートニアスで皆とわかれる前に、ディランに言われたのだ。「緋の砡の欠片で作られたものを買ってこい」と。
「いえ、ある方に教わったので…。それで、いただけますか?」
「勿論です。こちらに並んでいるのは一般向け。ケースのものも、旅行などの貴族の方向けのものですから。最高のものは、奥にあります。どうぞ。」
通されたのは、奥の工房の一角。作りかけの華護りや、削る前の鉱石などもあった。
「うわぁ、本当に二種類あるんスね。砡も質の高いものがたくさん…。」
「分かりますか?さすが、砡術士様は目が良い。」
「え、なんで分かったんです?俺が砡術士って」
「ガルクラフトの名を使い、本物の華護りを同時に二つ。いくら最高司祭でも、あの人にはとてもではないけど払えないでしょう。そうなると、ご依頼主はそのご子息であられる、ルシオ様。違いますか?」
「あの人……。」
一応、この世界でも1位か2位くらいの権力者なのだが、あの人呼ばわりとは、ブランシュはあまりルシオの父親を好ましく思ってはいないようだった。
まぁそれは、アシュトも同じであったが。
「昔ね、しがない職人時代に…とても失礼なことを言われましてね。それ以来、申し訳ないがディーテ神教とは疎遠になりましてな。…しかし、ルシオ様は違う。あの方はとても自由であるのに、常に人を思いやる方だから。父親がしたことへのフォローだ、と、多額の賠償金をいただいたんですよ。そのお陰で、このような立派な工房を持つことができた。」
「へぇ。あの人、そんなことしてたんですか…。ただの変態かと思ってましたけど。」
「さぁ、ルシオ様に恩を返しましょう。お好きなものを、選んでください!」
そう言って、ブランシュが見せてくれたのは、それはもう美しい輝きを放つ華の数々。砡の粉を使った、金色の華。
「すげぇ…!これを消耗品にとか、ルシオ様も…ってかオレらもだけど。罰当たりそう………。」
その中でも、ひときわ大きな華を型どった華護りが目についた。
「ブランシュさん、これは…?随分、他と比べて大ぶりですね?」
「えぇ。それは私の傑作です。しかし、華護りは本来腕に巻くものなので、少々大きく作りすぎました。商品としては、売れないと思いますよ…。これだけ素晴らしい砡の欠片を手に入れることができたので、張り切ったんですがね。」
アシュトは、その華護りがヒースヴェルトの髪に似合うだろうと素直に思った。
カーザスで買ったという、華護りの模造品。あれを好んで付けている彼なら、きっと気に入ってくれるだろう。
「ブランシュさん、これを、髪飾りにすることは、できますか?」
「髪飾りに、ですか?あぁ!そうですね!
それなら、身につけることができますね!すぐに加工いたしましょう。
それから、緋の砡の欠片で作ったものは、こちらに並んでいます。」

確かに、加工前の薔薇の形をした砡が並んでいるが、それらは色ごとに机が分けられていた。
「これ、質が良さそうだな…。」
完成した華護りは、その緋色の砡の色を純金で覆い隠すが、この一つだけは、うっすらと、赤い光の粒子を纏っているように見えた。その華護りを選んで、ブランシュを待った。


アルクスに帰ったら、あの理不尽変態エルフに文句を言ってやろうと思っていたけど、ブランシュの顔を立てて、許してやるか…と思ったのであった。
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