虹色の子~大魔境で見つけた少年~

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おじいちゃん!

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塔の最上階は、アルクス首領の部屋と、大会議室があり、あとは屋上へ繋がる階段だけだった。
「しゅりょーさん、こんにちは!ぼくは、ヒースヴェルト、です!大魔境の、し、し…フォレン、なんだっけぇ?」
「神殿、ですよ。」
「神殿から、来ました!」
にこっ!
「ぐふっ!」
首領は、ヒースヴェルトの笑顔を喰らい悶絶した。
首領の部屋は殺風景ではあるが、居心地は悪くない。ふわふわのソファーに、窓には可愛い花が飾ってあったりして、ナッシュの人柄は意外と可愛らしい。
「フォレン…。報告書では聞いていたがな。」
ロマンスグレーの綺麗な髪をオールバックにした、今年六十歳になるおじいちゃん。アンバーの瞳は、フォレンを射貫くような鋭さで見つめていた。
「貴様、大魔境で見つけた子が、こんなに可愛らしい子だと何故言わんかった!なに?なんなの?この可愛い生き物!!
こーんな小さな子がさ、大魔境なんて危険な場所に十年も!?住んでたの!?
大丈夫だったかい?こまったことがあるなら、おじいちゃんに何でも言いなさい!」
「首領………。おじいちゃんって。」
ヒースヴェルトは、トリシャの授業で知っている。それは、家族のこと。お父さんの、お父さん。お母さんの、お父さんもそうだと言う。
「えぇ!?ぼくの、おじぃちゃんー?」
ヒースヴェルトは頬をピンクに染めて、目をキラキラさせた。
「わっははは!そうだそうだ!新しいじいちゃんだと思って頼ってくれ!」
「はぁい!新しい、おじいちゃん!」
「で?この子は本当に…その神殿で神によって育てられたのか。」
本題に入ると、さすがに真面目な顔になる。フォレンは神妙に頷くと、説明をした。
報告書には書けなかった、様々なことを。

「……それが本当なら…ダスティロスの坊主たちはイカれてんな。国内での喧嘩なら黙って見ていたものを。命からがら亡命した、すでに戦意のカケラもねぇ他国の只人まで殺しにかかるたぁ、良い性格してんな。それで、その辺境の村はどうなった?」
ナッシュの質問にルシオは首を横に振る。
「僕たちは、あくまでもアルクスだよ。調べはしても、それをウチから何かすることはないの。よくやっても、情報提供くらいだよ。」
ルシオは、溜め息まじりに答えた。黒い石の件も、この度の事件を調査した結果、自国の村から出てきたので、これもエンブルグ皇帝陛下に伝わることになる。
「…兄上にも報告した。次の国家間会議で議題にあげるそうだ。『我が国の国民を殺めた兵士を差し出せ』と。」
「…亡命したとはいえ、ギュゼリア辺境伯領地に受け入れられ、村民名簿に記載した形跡も見つけている。
ヒースヴェルト様…当時は別の名前だったが、…彼と彼のお父上は間違いなく、エンブルグ皇国の守るべき民だった。」
ディランの悔しそうな声に、ヒースヴェルトはとてとて、と寄って眉間にズボっと指を突き刺した。
「いっ…ヒー様、痛い。」
「難しいおはなし、するのは別に、いいけど、そんなお顔するのは、いけまーせん。ぼくの周りの、人たちはね、たくさん、笑顔で、いることが大事ーなのです!それが、ぼくの夢をかなえるためになる、です!」
キリッと眉をつり上げて、少し怒る。
ヒースヴェルトは、特にディランにはそんな顔してほしくなかった。彼の中で、今は一番の翼候補だったから。
「みんなが笑顔でいることが、ヒー様の夢を叶える…?」
「ぁいー!」
ヒースヴェルトは、薄々感づいていた。
翼になる者だって、天上の民なのだ。
その魂は澱んでいては、なれるはずがない。
(ぼくの澱みが消えたとき、きっと翼になる人の魂の澱みは、浄化しないとならない。…僕自身は砡の欠片で浄化できるらしいけど…他の人は違うから…)


自分自身が、選んだ誰かの澱みの受け皿になること。きっと、それが、この世界を管理する、ぼくの使命。

だから。

「笑って、ね!」




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