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砡鏡
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「…………ぁれ?」
ヒースヴェルトは目を覚ました。
邸を囲むように美しい青の湖。まるで蒼の砡の色のような、抜けるような蒼天のようにも見える、そんな色。一瞬、揺らめいたのは、湖だけなのか、それとも世界が揺れたのか。
ヒースヴェルトの虹色の粒子は、それを僅かではあるが感じ取った。
「ディラン……どこにいったのかな。」
感じ取ったのは、何故かディランの空気。でも、突然何で?と首をかしげていると、ジャンニが手を振る。
「ヒースヴェルトさまぁ!ルシオさんが来てますよぉ!頼まれていた物が出来上がったそうですぅー!」
「ジャンニ…?」
ジャンニがヒースヴェルトを探しに来るのは珍しい。いつもなら、リーナかアシュトが見つけてくれる。
「ヒースヴェルトさま、お昼寝でしたか?」
「うん、ここ、気持ちよかったの。」
くい、とヒースヴェルトの手を引いて起こしてくれる。
「これ、新作のマフィンです。もうすぐお昼ご飯なんですけど、焼きたてをこっそり持ってきました!」
「きゃあ!ありがとう!!」
焼きたてを食べて貰いたくて、ヒースヴェルトを探すことを買って出てくれたのか、とヒースヴェルトはほっこり微笑んだ。
「おいしいっ。」
(ぼくがこうして、人のものが食べられるのは、ジャンニのおかげ。でもぼくが魂を浄化してしまったあとは…?ぼくはママの飴で生きていけるけど、ちょっと、さみしい…かな。)
「ルシオさんってほんと綺麗ですよね。エルフの方って、皆さんあんなにお綺麗なのかしら。」
「ぼくにとっては、ママが一番です~。」
ぴょこぴょこ、と弾むように歩きながら、ジャンニに対抗する。
「あはは。確かにディーテ様にはどなたも敵いませんね!あ、でも、最近はヒースヴェルトさま、体つきもしっかりされてきたし、背も伸びてとってもディーテ様に似てこられましたよね。素敵です。」
ジャンニは素直な感想を伝えると、ヒースヴェルトは顔を真っ赤にしてプルプルと震えた。
「ヒースヴェルトさま?」
「ママに、似てる?ほんと?ほんとっ!?」
「はいっ。美しいディーテ様のように成長なさってくださいね。」
ジャンニは、ヒースヴェルトが本当に神に育てられた、という事実を知らされていない。
ただ、創造神ディーテを母と慕い、美しい神像の側で長く生活していたため、信仰心が高く、神力との相性が良いのだろう…と、本人なりに軽く解釈している。
素晴らしい性格だ。
ヒースヴェルトも、ジャンニはアルクスとは違い、ディーテ神の加護もないことは知っている。だから、核心に触れた話は控えているのだった。
「わぁーっ。ぼく、たくさん食べる、ます!!もっと成長、するー!!」
「でも、食べすぎると横にも成長しちゃいますよ。バランスよく食べましょうね!」
「バランス、大事です、ね!!」
「はい!大事です~。」
ジャンニとヒースヴェルトは手を繋いだまま、ルシオが待っている応接室に向かった。
ジャンニのふわふわした感じと、ヒースヴェルトのふにゃふにゃした雰囲気は本当にお似合いで、道中、ルートニアス邸の使用人らも微笑んで眺めていた。
「ルシオさん、こんにちは!鏡、できたのですか?」
応接室に入り、ルシオの姿を確認すると、そちらに駆け寄る。
「ヒースヴェルト様っ、あぁ今日も本当に神々しくあらせられます!御髪を飾る華護りもなんと美しいことか。あの風の坊主もたまには良い仕事をするものですね!」
尊い、尊いと言いながら、そのままだとトリップしてしまいそうなので。
「ルシオ、さぁん!どこかに行かないで!!おはなし、するです!!鏡、見せて?」
ぺちん、と両手で頬を挟み、ヒースヴェルトは必死に言うと。
「はっ、すみませんっ。えと、こちらです。ペンダント型にしてみました。いつも身につけていられるように。」
膝をついて、ヒースヴェルトの首にペンダントをかける。
懐中時計のような、ボタンで蓋が開くような造り。
蓋と盤が金色のコーティングなのは華護りの工法と同じ。開くと、中には神泉の湖で磨かれた銀の板に、細かい模様が刻まれている。ただの模様ではなく、四方に嵌め込まれた砡の欠片の力を廻らせる設計になっており、まるでひとつの神聖陣のようだった。
「キレイ……。」
「構築は出来ました。あとは…ヒースヴェルト様に、実際に砡の欠片を取り込んで頂き、銀盤に刻まれる数値に変化があれば…成功です。」
「あい!食べます!新しいもの、取りに行きましょう!」
「へ?ぁ、いや、アルクスの収納庫に、まだあると思いますよ…?」
「ぼく、勉強しました!アルクスには、《ハンター》、います。ハンターは、砡の欠片を探して、集めてくるお仕事の人、です!」
「ぇ、えぇ。そうですね。世界中、生まれ出でる砡の欠片を集め、アルクスで製品化する、そういう流れはアルクスの大きな事業ですから…ぇ?」
「ぼくは、ハンターになる、のです!」
目をキラキラさせて、興奮したように述べるヒースヴェルト。
「ええええええぇぇっ!?」
ヒースヴェルトは目を覚ました。
邸を囲むように美しい青の湖。まるで蒼の砡の色のような、抜けるような蒼天のようにも見える、そんな色。一瞬、揺らめいたのは、湖だけなのか、それとも世界が揺れたのか。
ヒースヴェルトの虹色の粒子は、それを僅かではあるが感じ取った。
「ディラン……どこにいったのかな。」
感じ取ったのは、何故かディランの空気。でも、突然何で?と首をかしげていると、ジャンニが手を振る。
「ヒースヴェルトさまぁ!ルシオさんが来てますよぉ!頼まれていた物が出来上がったそうですぅー!」
「ジャンニ…?」
ジャンニがヒースヴェルトを探しに来るのは珍しい。いつもなら、リーナかアシュトが見つけてくれる。
「ヒースヴェルトさま、お昼寝でしたか?」
「うん、ここ、気持ちよかったの。」
くい、とヒースヴェルトの手を引いて起こしてくれる。
「これ、新作のマフィンです。もうすぐお昼ご飯なんですけど、焼きたてをこっそり持ってきました!」
「きゃあ!ありがとう!!」
焼きたてを食べて貰いたくて、ヒースヴェルトを探すことを買って出てくれたのか、とヒースヴェルトはほっこり微笑んだ。
「おいしいっ。」
(ぼくがこうして、人のものが食べられるのは、ジャンニのおかげ。でもぼくが魂を浄化してしまったあとは…?ぼくはママの飴で生きていけるけど、ちょっと、さみしい…かな。)
「ルシオさんってほんと綺麗ですよね。エルフの方って、皆さんあんなにお綺麗なのかしら。」
「ぼくにとっては、ママが一番です~。」
ぴょこぴょこ、と弾むように歩きながら、ジャンニに対抗する。
「あはは。確かにディーテ様にはどなたも敵いませんね!あ、でも、最近はヒースヴェルトさま、体つきもしっかりされてきたし、背も伸びてとってもディーテ様に似てこられましたよね。素敵です。」
ジャンニは素直な感想を伝えると、ヒースヴェルトは顔を真っ赤にしてプルプルと震えた。
「ヒースヴェルトさま?」
「ママに、似てる?ほんと?ほんとっ!?」
「はいっ。美しいディーテ様のように成長なさってくださいね。」
ジャンニは、ヒースヴェルトが本当に神に育てられた、という事実を知らされていない。
ただ、創造神ディーテを母と慕い、美しい神像の側で長く生活していたため、信仰心が高く、神力との相性が良いのだろう…と、本人なりに軽く解釈している。
素晴らしい性格だ。
ヒースヴェルトも、ジャンニはアルクスとは違い、ディーテ神の加護もないことは知っている。だから、核心に触れた話は控えているのだった。
「わぁーっ。ぼく、たくさん食べる、ます!!もっと成長、するー!!」
「でも、食べすぎると横にも成長しちゃいますよ。バランスよく食べましょうね!」
「バランス、大事です、ね!!」
「はい!大事です~。」
ジャンニとヒースヴェルトは手を繋いだまま、ルシオが待っている応接室に向かった。
ジャンニのふわふわした感じと、ヒースヴェルトのふにゃふにゃした雰囲気は本当にお似合いで、道中、ルートニアス邸の使用人らも微笑んで眺めていた。
「ルシオさん、こんにちは!鏡、できたのですか?」
応接室に入り、ルシオの姿を確認すると、そちらに駆け寄る。
「ヒースヴェルト様っ、あぁ今日も本当に神々しくあらせられます!御髪を飾る華護りもなんと美しいことか。あの風の坊主もたまには良い仕事をするものですね!」
尊い、尊いと言いながら、そのままだとトリップしてしまいそうなので。
「ルシオ、さぁん!どこかに行かないで!!おはなし、するです!!鏡、見せて?」
ぺちん、と両手で頬を挟み、ヒースヴェルトは必死に言うと。
「はっ、すみませんっ。えと、こちらです。ペンダント型にしてみました。いつも身につけていられるように。」
膝をついて、ヒースヴェルトの首にペンダントをかける。
懐中時計のような、ボタンで蓋が開くような造り。
蓋と盤が金色のコーティングなのは華護りの工法と同じ。開くと、中には神泉の湖で磨かれた銀の板に、細かい模様が刻まれている。ただの模様ではなく、四方に嵌め込まれた砡の欠片の力を廻らせる設計になっており、まるでひとつの神聖陣のようだった。
「キレイ……。」
「構築は出来ました。あとは…ヒースヴェルト様に、実際に砡の欠片を取り込んで頂き、銀盤に刻まれる数値に変化があれば…成功です。」
「あい!食べます!新しいもの、取りに行きましょう!」
「へ?ぁ、いや、アルクスの収納庫に、まだあると思いますよ…?」
「ぼく、勉強しました!アルクスには、《ハンター》、います。ハンターは、砡の欠片を探して、集めてくるお仕事の人、です!」
「ぇ、えぇ。そうですね。世界中、生まれ出でる砡の欠片を集め、アルクスで製品化する、そういう流れはアルクスの大きな事業ですから…ぇ?」
「ぼくは、ハンターになる、のです!」
目をキラキラさせて、興奮したように述べるヒースヴェルト。
「ええええええぇぇっ!?」
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