虹色の子~神さま候補、世直しします!~

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笑顔を守って

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「あっ、アシュト!見っけたぜ!です~。」
ひょい、と木の枝から飛び降りてくる、ヒースヴェルト。
ハンターの真似事を続けること一年。ヒースヴェルトは既に一人前のハンターに成長していた。
運動神経の良さは、生まれつきのものだろう。
「おっ、早いッスね!…どれ…。うわー、なかなか高く売れそうッスね!」
ヒースヴェルトの手のひらに乗っているのは、純度の高い翠色の中砡欠片。
「ブブー、です!これは~…ぼくの、です!!」
ニンマリと笑い、ヒースヴェルトは得意気に言った。ぼくの、とは。
「本当に!?やった!浄化の欠片だったッスか?」
ヒースヴェルトが魂の澱みを消し去るために、その身に取り込むことができる特別な欠片。
「あー…ん…。」
突然にその場で食べようとするものだから。
「ちょっ!ヒー様ダメですって!誰が見てるか分かんないんだから、お家に帰って、《砡の間》で…!!」
ぱし、とヒースヴェルトの手を掴み食べるのをやめさせる。
「ぁっ!そっか…内緒、だものね。ごめんなさーい、久しぶりに見つけて、嬉しくなっちゃって…。」
砡の欠片は、人々にとっては宝石なのだ。ただ、美しい、不思議な力が籠った宝石。
それを食べる者はいない。ヒースヴェルト以外は。
見つかればきっと大騒ぎになるし、この欠片を体内に取り込む時、ヒースヴェルトはどんなに神力を抑え込んでも、美しく輝くのだ。そんな姿を、誰かに見られでもすれば厄介なことになる。
今は神殿も修復のためにアルクスの他の術士が出入りしていることもあり、神殿内でも警戒していた。
そのため、フォレンやディラン、ルシオの考えにより、神殿の地下にもう一つ部屋を作った。
ヒースヴェルトの虹の神力によって、防護と不可視の、最強の護りを施した神聖な一部屋。それが《砡の間》。まぁ、正確には《ヒースヴェルトが砡の欠片を食べても大丈夫なお部屋》。
そこは、誰も入れないし、邪魔されないために、ヒースヴェルトがディーテ神と二人だけで親子の時間を過ごしたいときも使っている。
「じゃあー、かえろ?アシュトにいちゃん。」
中砡欠片をポシェットにしまいこんで、いつものようにアシュトの手を引く。
「ッス。じゃー、掴まって!」
ひょい、と腕に乗っけると、アシュトは背中に背負っている機械導具を展開する。
バサッ。
風の力を存分に引き出した、大きな鳥のような白い羽根。風の民であるアシュトのために作られたような機械である。風を読み、ものすごいスピードで飛んで行く。
「きゃあーっ!!速いはやーいっ!アシュト、スゴーい!!」
近くの転移装置がある町まで、ひとっ飛び。




◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「もー、夕方には帰るって、言ってたのに。」
すでに日は陰り、夕方といえる時間は過ぎようとしていた。リーナは神殿の横に新設された屋敷の中で独楽鼠のように動き回っている料理人、ジャンニのお手伝いをしていた。
「ふふっ。きっとライリー君ごっこに夢中なんですよ~。いいことです、楽しんでミッションに挑んでらっしゃるんですから。」
「はぁ…。今日、ディーテ神様に、ヒー様が言われてしまったのよ。外を知って、粗暴になったって…。あーっ、もう。可愛らしくて素直でらっしゃるのに、どうしてもあれだけは治らないのよ…。それもこれも、あの絵本を贈ったクソジ…首領のせいよ!」
と、文句を言って食事の準備を続ける。

ヒースヴェルトの食事は一般的なものと違う。
彼は十年前に大怪我を負いディーテ神に癒されてから、食事は全てディーテ神の手から生み出される特別な砡の欠片だった。その欠片を食べると、飢えは満たされ、神力も得られた。
そういったものであったが為に、ヒースヴェルトは人としての身体を失い、神力が通うものしか受け付けなくなってしまった。つまり、この世のすべての食材が、ヒースヴェルトにとって猛毒になってしまったのだ。
それでも、食事を楽しめたら、という皆の気持ちから、ヒースヴェルトでも食べることができる方法をディーテ神より教わり、作ってくれるようになったのが、こちらの独楽鼠のような彼女。
「ジャンニさん、こちらの料理はヒー様じゃない他の方の食事ですよね?もう運んで宜しいかしら?」
「はい~、大丈夫です。ヒースヴェルトさまのごはんは、こちらに。最後に持って行きますね。皆さん、食堂でお待ちください~。」
元々は皇国の騎士だった彼女が、大好きな料理であの可愛い小さな神様の笑顔を守っている。
いつも笑顔で、ヒースヴェルトのごはんやおやつを作る彼女を、アルクスはとても歓迎した。

食堂に向かうと、そこには皆が集まっていて。

「ジャンニ~!リーナ!!ただいまっ!」
「ヒー様、お帰りなさいませ!お怪我など、されてませんか?」
ぴょこぴょことジャンプしながら、リーナとジャンニを呼ぶ。
「うん!元気~!!」
朽ちた、捨て置かれていた神殿が、こんなにも賑やかになった。
ヒースヴェルトにとって、それは本当に嬉しいことで。
「ごはん、食べるです!みーんなも!!」
「えぇ。」


新しい日々がゆっくりと。

時代を変えるための基盤は、今ここに、出来つつある。


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