虹色の子~神さま候補、世直しします!~

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差し入れ

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「浄化できる砡の欠片を、見つけられたのですか?それはおめでとうございます!また数値が減少しますね。」
かちゃかちゃ、と小さな音をたてながら、上手にフォークとナイフを使いながら、小さくハンバーグを刻む。テーブルマナーも、ルートニアス公爵家に滞在していた1ヶ月と少しの間に覚えた。
「うん。だから後で、お部屋にいくね。」
「はい。地下には誰も近づけないよう見張っておきますから。」
リーナはヒースヴェルトの口元についたハンバーグのソースを拭いた。
「あれ?今日もルシオさん、いないねぇ?忙しい、ですか?」
食堂にいるメンバーを改めて確認して、あのうさみみ(だとヒースヴェルトは思っている)エルフのルシオがいないのを心配する。
「えぇ。今はとても忙しいので、研究室でずっと機械導具を作っています。」
「一人で、ですか?大変です…。」
一人でずっと仕事をしていると聞き、ヒースヴェルトは更に不安になる。
だが、一人でやるのには理由があった。それは、この世界がまだ若く、発展していないことにも起因する。人間の技術が追い付いていないのだ。
加護を得なければ何も理解できない。そのため、加護を賜った者は先駆者となり、人々の指導に回らなければならない立場だが、時代の移り変わりが、それを阻む。
「はは…。しかし、あの精巧な導具を作るには加護を賜らなければ無理だからなぁ。…加護のないアルクスの白砡術士には、荷が重いんです。それに、ルシオ様はディーテ様とヒー様に陶酔されてますからね。一人でやってしまうのです。文句は言いますけど、出来ないとか、無理だとか…そんな弱音は絶対吐きません…。」
「そんな…。だっ、ダメです。ぼく、何かお手伝いを…!」
食事の途中で席を立とうとするヒースヴェルトを、フォレンが止める。
「ヒー様、大丈夫ですよ。彼は強いです。ただ、少しヒー様に会えずに寂しがっていますから、後で差し入れをお持ちしてあげてください。」
ヒースヴェルト切れを起こしていた彼を思い出し、苦笑する。
「差し入れ…?」
「ほら、ヒー様がお勉強なさっている時に、たまにジャンニさんが持ってくるカクテルとか、クッキーとか。それがあれば、もう少し頑張れる、と思うでしょう?」
リーナは、ヒースヴェルトが勉強で疲れたときに、ジャンニが持ってくる差し入れをとても喜んでいたことを思い出して、教えてくれる。
「うん!差し入れ、とっても気持ちがホカホカします!ぼくも、ルシオさんに差し入れ、します!」
ヒースヴェルトは、ルシオの事を、実はかなり尊敬している。
この世界で初めてディーテ神から眷属を賜った人。千年前に自分の恋人だった少女を父親に殺され、それでも彼女の言葉を、神の言葉を信じ続けた、綺麗な魂の人。
そんな彼が、とても疲れているなら。
(ルシオさんの相棒、創ってもいいよね?ママ…。)

食事を終えた後で、ヒースヴェルトは《砡の間》に入っていた。今日見つけた浄化の欠片を取り込むため。
誰も入れない、静かなその部屋はルシオの指示により、とても美しい造りになっている。お昼寝もできるし、大好きな絵本も読める。それに、ヒースヴェルトとディーテ神の、二人だけの親子の時間を楽しめる場所。
『ヒースヴェルト、白の眷属に何を与えるのかの?』
『えっとね、ルシオさん、凄く忙しいんだって。でも、お手伝いできる人がいないんだよ。だからね、お手伝い、できる何かを贈りたいの。』
ディーテは青い品の良いソファにゆったりと腰掛けていた。この部屋にヒースヴェルトが入ると、ディーテ神は大抵やってきて、会話を楽しんでいく。
『では、やってみせてごらん。お前がゼロから構築するのは、初めてだね。』
『うんっ。』
こうして、神としての力の使い方を、この部屋で習うこともある。

ヒースヴェルトが必死に作り出すものの、形を成さずに霧散する。
繰り返すこと、十数回。

『ん~~っ!!!難しい…ッ!ぼくの力は、どうして具現化しても安定しないのっ?』
これでは、ディーテがよく飛ばしてくれる言霊を乗せる小鳥も生み出せない。神力はただの光となって消えるだけ。
『ヒースヴェルト、構築するときに、相手を思うことが大事だよ。お前は、誰のための物を作ろうとしているの?』
ディーテの優しいヒント。
『…ルシオさん…。』
ふと、思い浮かべると。


ぽんっ。


目の前に、虹色の光が弾けた。

『きゃっ!?』

ビックリして、腰を抜かしてしまったけれど、弾けた光がおさまると、そこには白くて、丸くてフワフワの。

『できたーーー!!!』





仔ウサギが生まれた。




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