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一章 飛空島

19 噴水の調査!

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「だぁ~~~ッ!!!うるっせぇな!朝からこれで何回目だよ!ノロケなら他でやれ!」
ギーヴ、そんな事を言わずに聞いてくれ!
「にゅふふふふふっ。」
「笑い方気持ち悪いっ!なぁマルローズ、どうにかしろ、お前の推し様が壊れてるぞ!!」
ギーヴ、なんてことを言うんだ。何度でも聞いてくれ!
このエルフィネルのピンブローチを羨ましがれってんだ!
「ソソソソ、そんな…っ。まさかティルエリー様がヴォルカー様との親密度をこんなに短期間で上げてらっしゃるなんてッ!もしかして、フラグ回避しちゃったせいで…ティル様がヒロイン枠になっちゃったの!?」
「あ~!もー、こっちも意味不明だし!!カオス!!!」
放課後の工房は、いつもこんな感じで賑やかなんだ。
クラインだからって変な気遣いをしないギーヴや、僕を助けてくれたシャルルはとっても貴重な…ううん。大切な友達。
だから、僕のこの喜びを分かってほしくてつい何度も自慢しちゃう。
「…ったく、まぁお前がヴォルカー医師に恋心を抱いてるのは、なんとなーくわかってたけどさ。まさか贈り物まで貰えるなんてな。脈あるんじゃねえ?」
「……!!!ほ、本当に!?そう思うかな?そうかなっ!」
「マルローズ、実際どうなんだ?お前、ティルエリーのことなら何でも分かるんじゃねぇの?この敏腕ストーカー。」
「んなっ!!何ですって!光栄だわ!!!」
「光栄なのかよ!?」
「エルフィネルの葉のブローチは、ゲーム開始して一ヶ月で、親密度の一番高い対象者から初めて貰うプレゼントなの。なので…ティルエリー様が私に贈ってくれるパターンしか見てこなかったから…何だか複雑な気分です…。」
「…いや、そうじゃなくてよ…。ヴォルカー医師は、ティルエリーのことを好いてる、で良いのか?」
「……うーん…間違いなく嫌ってはいないですが、それが恋愛感情かどうかは、まだ分からない段階…。先走って告白して玉砕するパターンもあるし、断られずとも告白は実らず、友情エンドになることもあります。徐々に親密度を上げていくのが成功の秘訣ですよ、ティル様っ。」
「徐々に…。そ、そうだよね。焦ってふられたら…僕きっと立ち直れない……。」
浮かれてたら、駄目だね。シャルルの意見をよく聞いとこう。…彼女には僕の命を救ってくれた奇跡があるんだ。聞いた上で、自分がどうしたいか、判断しよう。

「……で、その山積みの資料は何だよ?通信の魔道具関係?」
ギーヴの目線には、調べ物用の机の上に積み上がっている研究機関からの資料。
「あ…実は、公園の噴水が故障してるのは知ってる?」
あれから、ヴォルカー様の行動は早くて、本当に週明けにアールベル王子に噴水の調査と、修理したいってことを伝えてくれた。
そしたら、飛空島の管理責任者としても、いつまでも枯れたままなのはマズイから、もう一度調査してもいいって、すんなり許可をくれたんだ。
しかも、その調査班のメンバーがアールベル王子と僕。
後は、僕が信頼の置ける人を選んでおくように、って書いてあったんだ。
だから、僕はこの二人を選んだ。
今日は、その説明もあってここに集まって貰ったんだよね。
もうすぐ、王子も来るはず…。


◆◇


「やぁ、やっぱり君も来ていたんだね!シャルル嬢。」
「げっ……殿下。」
「ん?出会えて嬉しい?はっはっは。そうだろう?私もだよ。」
アールベル王子、シャルルの「げっ」って声…聞こえてたのにスルーしたな。…懲りないというか…楽しんでるっていうか…。メンタル強いよね…二人とも。

「さて、ヴォルカーから話を聞き、私も過去の資料をかき集めて貴方に託したのだけど、どうですか?修理出来る…と期待しても良いでしょうか?」
「出来るかどうかは、実際に詳しく見てから。…でも、おそらく直せます。あの噴水が魔道具である限りは、僕の領域だ。」
あの日、見た限りでは魔核の場所は分からなかったけど、ちゃんと魔核が起動した回路だったし、魔道具であるのは間違いないんだ。
「それは頼もしい。…では、早速調査にとりかかるとしましょう。」
「これから、ですか?」
「なんか、部活みてぇ。楽しそうだな!」
シャルルにギーヴも、前向きについてきてくれる。

◆◇

公園に着くと、学園の生徒や家族連れなんかも居た。
飛空島で働く人たちは、だいたいが住み込みだから、家族ごと飛空島で暮らしてるんだ。
居住区だってあるんだよ。そこから通ってる生徒もいる。
「人払い、しましょうか?ティルエリー殿。」
アールベル王子が変なことを聞いてきた。
「ううん?どうして?」
人払い…?なんでそんなことするの?皆遊んでるのに。
「…いえ、クラインは魔道具の情報を秘匿する傾向にあると…伺ったことかありまして。」
あ、それは確かに。
でも今回のは違う気がするんだよなぁ。壊れても修理できなきゃ意味ないもの。それなら、みんなが知ってなきゃ。
クラインならば、直せるんだよってことをさ。
「………あぁ。それなら、大丈夫。これはオリジナルじゃないよ。おそらく、ナンバリングされている…魔核があるはず。」
「ナンバリング…?」
「凄く昔の話ですけど…量産してた魔核には、付いてることが多いので。ほら、時計とかのシリアルナンバーみたいな。ここも、公共施設だから昔のクラインがいくつか魔核を作った可能性があります。壊れたときのスペア…みたいな。」
でも、修理の仕方も分からないほど、放って置かれたってことは。
「……多分、単純に在庫切れでしょうけど。」
「……へぇ。」
アールベル王子は興味ありそうに返事した。
「なので、今日は噴水のどこかにある魔核を探すぞー!」
「「おー!」」

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