空飛ぶ島は崩落寸前!?〜僕が攻略対象なんて知りません!

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一章 飛空島

20 地下通路を行く

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5年間水を蓄えることなく枯れたままだった噴水は、そりゃもう汚れてて、亀裂や脆くなった箇所も一つや二つじゃなくてさ。
「本当に直るのかしら…。あっ、いや、ティル様を疑っているんじゃなくて!」
シャルルも、枯れ葉の掃除をしながら疑いの目をしている。
「あははっ。本当にボロボロだよね!…でも大丈夫。魔核が見つかればイケると思うんだよなぁ……。」
「魔核、何処にあるんだろう…。」
噴水の形を見るのに、魔核を設置する可能性があるのは頂上か、中心。若しくは、この下。
(…下なら、装着するために、この石畳を外さなきゃならないはず…。)
コツン、と石畳をノックすると、カコンっと、軽い音がした。
「えっ?」
「ティルエリー!危ない!!」
ギーヴに肩を掴まれて、後ろに引っ張られると、僕が今まで座り込んでた地面が、人一人分入れるような穴を開けていた。
「ええっ!?い、入り口…?地下…かしら?」
「アールベル王子、中に入りましょう!」
僕は未知の空間にワクワクして勇み足でその穴に突入……しようとしたんだけど、王子に止められた。
「まぁ待ちなさい。さすがに子供達を皆連れては危険だ。私一人で3人護衛させる気?」
「…そっか。シャルルは女の子だもんね。危ないかもしれないし…。」
しゅん、としたけど、冷静に考えたら地下は暗いし、光源が無ければ足元が危険。
仕切り直しかぁ、なんて話していると、
「大丈夫ですよ。私も護衛いたします。灯りも、私の神聖力で照明程度なら作れますし。」
ふわり、と。春の柔らかい風に靡く漆黒。
僕の大好きな人の声。
「ヴォルカー様っ!」
嬉しくて駆け寄る。
「仕事が少し残っていましたので、遅くなりました。ティルエリー様、私もご一緒させてくださいませんか?」
ヴォルカー様の申し出に、僕はすぐに頷いた。
「お前、具合が悪かったと聞いたが…?
まぁ、心強くはあるな。危険は無いとは思うが…結界は展開すべきか。」
「…言われなくとも。」
ヴォルカー様、来てくれるなんて思わなかった。嬉しいな…。
でも、具合悪かったの…?大丈夫、かな。

ヴォルカー様が噴水の周辺に結界を張った。穴に、他の人が落ちてしまわないように。
それから、僕とヴォルカー様、アールベル王子、ギーヴとシャルル。
5人で噴水の地下へと、入っていく。
やっぱり、メンテナンスなどで過去のクラインがここへ立ち入っていたんだろう。入り口は階段だし、灯りの魔道具の痕跡がある。どれも魔核が死んでいるけど。
「わぁ……廃坑みたいな感じ…。」
「シャルル嬢は博識だね。廃坑なんて令嬢の行く場所ではないのに、知っているなんて。」
アールベル王子の、シャルルに対する評価がまた上がってる。
「ええっ?廃坑くらい、みんな知ってるんじゃないのっ?」
「……普通の貴族令嬢は、炭坑や廃坑なんて興味も示さないよ……。」
アールベル王子は楽しそうに笑ってる。
「ええっ?じゃあ…普通の貴族令嬢って何やってるんでしょう?」
シャルルは本気で悩んでいるようで僕に意見を求めてきた。
いや、平民同然に生活してきた僕に聞く?
「………さぁ…。僕はあまり社交界とか顔だしてないから、普通のご令嬢はよくわかんないや。アールベル王子は、よく知ってるでしょう?シャルルは特殊なのは何となく分かるんですが。」
「ティル様から特別、って言ってもらえて嬉しい!」
「…。いや、特殊って言ったんだろ?このポジティブストーカーめ。」
ギーヴのツッコミもスルーしてシャルルはくねくねしてた。
うん。やっぱ特殊だなぁ…。
「ふふっ。ならばシャルル嬢のために、近々飛空島の流星庭園でお茶会を開いてあげよう。普通のご令嬢が、どのように過ごすものなのか、体験させてあげるね。」
「おおお、お茶会ですかっ!?」
あーあ、また王子の無茶なお誘いだ。シャルルが困ってるの、楽しんでるんだよね。
すると、ヴォルカー様も楽しそうに微笑んでる。うーん、イケメンっ!
「おや、楽しそうですね。ティルエリー様も、ご参加しましょう?エスコートいたしますよ。」
「うえぇっ?ぼ、僕も!?」
ヴォルカー様と、お茶会っ!なんて甘美な響き…!
「じゃあ、俺も!」
ギーヴも来てくれるなら、心強いな。僕は名ばかりな貴族だったから。簡単なルールとかマナーとか、お茶会までに教わろう…。

しばらく歩くと、少し拓けた場所に出た。公園の中央…あたりなのかな。

「ヴォルカー、灯りをもう少し強めてくれ。この広場を調べてみよう。」
「えぇ。」
ヴォルカー様は部屋の真上に真っ白い灯りを打ち上げて、神聖力で固定した。
ぼんやりと暗かった空間が、だんだんと明るくなる。
「これは…ティルエリー様の仰ったとおり、噴水自体が、魔道具というのは…正しかったようですね。」

天井を仰ぎながら、ヴォルカー様は、呟いた。
僕の予想通り、その視線の先には色の無い、力を失った魔核が嵌められていた。

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