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一章 飛空島
31 報告と、報告。
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僕たちは、後日ツインタワーのアールベル王子の執務室にお邪魔して、報告書を提出した。
橋の現状は深刻で、早めに対策を講じないとならない案件だよね。
魔核は相当な負荷がかからない限り、寿命まで壊れることはない。
ゆっくりと力を失うとともに、その色を失い、最後に真っ白になる。
ひび割れるのは、その魔核に多重負荷がかかっている証拠。回路を無理やり繋げて、自分のコントロールできる魔力以上の、容量を超えた構築を施した場合だ。
「そんなものを、橋の魔核にしていたというのか…。」
アールベル王子は、報告書を一通り読み終えて眉間に指を押し付けてため息を吐いた。
「……そんなもの、とはいえ当時作ったクラインにすれば、それは成功だったんだ。……離れ島庭園が完成したのは三百年前でしょう?
ひび割れがいつ起きたのかは不明だけど、魔核が三百年起動すれば、それは神器レベル。直接見たけど、色を失わずにひび割れたところを見ると……もう少し上手くすればハウザー級の魔道具になってたってこと。」
「………!!」
僕の見解に、アールベル王子は目を見開いた。
「そう…か。三百年という、人の寿命を軽く超えた魔道具…。確かに、神器級ではあるな。しかし、橋が危険であることに違いはない。…ティルエリー様、研究機関としては解決策を立てたいのだが…手を貸していただけないだろうか…?」
アールベル王子の願いに、僕はうん、と頷きかけたけど、ヴォルカー様に止められた。
「アールベル。少し良いですか?ティルエリー様はクラインとはいえ、認定前のただの学生なんです。
調査の協力はしても、何から何まで彼に関与させるのは、彼の学園生活にも影響を来たす恐れがあるのでは?」
「………ヴォルカー……。お前だってティルエリー様の魔道具に関する知識と技術の凄まじさは知っているだろう?特に今回の件……報告書のとおりならば、既にこの研究機関の手に負えないということも。」
「だが……!」
ヴォルカー様は、僕の学園生活を守ろうとしてくれてる。…本当に、優しいな。でも、僕は崩落を止めたいんだ。
「ヴォルカー様っ、いいんだよ。僕だって、この飛空島で暮らしているクラインの人たちは知ってるし、知り合いだけど……正直なところ、あの魔核を再現することは出来ないと思う。それに、このまま放っておけばいつか崩れる。…修理を依頼してくれたら、ひび割れた魔核の代わりも、喜んで作るよ!」
「エリィ……。」
「……はぁ。ヴォルカー、私もティルエリー様の意思を無視して強引に進めるほど馬鹿ではない。ティルエリー様の学業に影響が出ないよう配慮させていただく。」
「……神器級の魔核は、ティルエリー様のお体にかなりの負担がかかるのではないですか…?私は、それが心配で……!」
ひょっとして、《神の聖杯》を作ったときのことを思い出してるのかな……。確かに魔力吸われすぎて倒れちゃったけど……。
「……それは……そうかもしれない。でも、僕だって三百年稼働するような魔道具は作れないよ……。だから、数十年の稼働レベルで…あと、回路の修正で…どうにかならないか…と、思ってるんだ。」
「危険は、ないのですね?」
潤んだ瞳で見つめられ、そっと僕の指に触れる、ヴォルカー様の指。
「ん。大丈夫。」
少しくらい魔力を持っていかれても、今後のための設計図を残しておけば、次の時代のクライン達がきっと再現するから。
「ヴォルカーよ。お前、庭園調査後からティルエリー様との距離が近くないか?まるで恋人同士のようだぞ。」
アールベル王子、鋭いな。…まぁ、僕はヴォルカー様が側にいるだけでトロトロな顔してるから分かっちゃうかもだけど。
「えぇ。恋人です。」
「………ん?」
「私は彼を愛しています。先日、私の想いを伝え、そして応えていただきました。」
ヴォルカー様は僕の肩を抱き寄せて、額に軽くキスを落とした。
ええっ!?キ、キ、キッ……!!
「ヴォルカー様っ。こんなとこで……!」
「ふふっ。すみません。どうしてもアールベルには伝えておいたほうが良いと思って。」
終始ニコニコの彼を見て、アールベル王子は苦笑してた。
「…………ティルエリー様……今の話は本当ですか?こいつの妄想に付き合わせてはいませんか?」
妄想ッ!?まさか!!しっかり気持ちを伝えあった僕たちに…ううん、ヴォルカー様に失礼だよ!
「アールベル王子、失礼ですよ!僕もヴォルカー様と同じ気持ちなんです!」
僕のほうが好きの気持ちは大きいけどね!!絶対!!
「それは……おめでとう、と言っておこう。ははっ。先を越されたね。」
「貴方も、いつまでもふざけていないでさっさと婚約者の一人や二人、作ったらどうです。」
婚約者いないの!?
王子様なら、早いうちから決まってそうだけど……。
「私も正式にマルローズ家に申し込もうと考えているのだが……どう思う?」
アールベル王子が、珍しく頬を染めて恥ずかしそうに口籠る。
「マルローズ家は確か…男爵でしょう。……ノクティス公爵が黙っていないでしょうが……後継者争いという観点からは、我々にとっては良くても、貴方のお父上がどう申されるか……。」
「陛下は私より兄上を推している。私がどうなろうと、兄上に悪影響が無いなら承諾するだろう。むしろ男爵家くらいが良いのではないか?」
二人が、何だかむずかしい話をしているけど、一つだけ、僕が言えることは。
「……あのね、ヴォルカー様、王子。」
「エリィ?どうしました?」
「アールベル王子が、シャルルを好きなのはわかるよ。でも、シャルルの気持ちが大事でしょう?…ヴォルカー様から聞きました。…一方的な好意は…その、迷惑になることもあるんでしょう?
だから、どうか…僕の大事な友人を、不幸にさせないで。お願い……。」
ヴォルカー様の袖の端をきゅ、と握って伝える。僕の未来を守ってくれた彼女の未来が、幸せであってほしい。
「……ティルエリー様……。そう、でしたね。私は、私の気ばかり先走って……外堀を固めて断れぬよう、と烏滸がましいことを画策していたようだ。……これではあの毒姫と同じではないか…。」
アールベル王子は悔いたように顔を顰め、思い直したように頬をぱちん、と叩いた。
「よし!私も正直になろう。余計な画策などせず……素直に私の気持ちを伝えるとしよう。ティルエリー様、ご助言感謝します。」
「はい!!」
良かった、僕の言いたいこと、ちゃんと伝えられた…よね?
橋の現状は深刻で、早めに対策を講じないとならない案件だよね。
魔核は相当な負荷がかからない限り、寿命まで壊れることはない。
ゆっくりと力を失うとともに、その色を失い、最後に真っ白になる。
ひび割れるのは、その魔核に多重負荷がかかっている証拠。回路を無理やり繋げて、自分のコントロールできる魔力以上の、容量を超えた構築を施した場合だ。
「そんなものを、橋の魔核にしていたというのか…。」
アールベル王子は、報告書を一通り読み終えて眉間に指を押し付けてため息を吐いた。
「……そんなもの、とはいえ当時作ったクラインにすれば、それは成功だったんだ。……離れ島庭園が完成したのは三百年前でしょう?
ひび割れがいつ起きたのかは不明だけど、魔核が三百年起動すれば、それは神器レベル。直接見たけど、色を失わずにひび割れたところを見ると……もう少し上手くすればハウザー級の魔道具になってたってこと。」
「………!!」
僕の見解に、アールベル王子は目を見開いた。
「そう…か。三百年という、人の寿命を軽く超えた魔道具…。確かに、神器級ではあるな。しかし、橋が危険であることに違いはない。…ティルエリー様、研究機関としては解決策を立てたいのだが…手を貸していただけないだろうか…?」
アールベル王子の願いに、僕はうん、と頷きかけたけど、ヴォルカー様に止められた。
「アールベル。少し良いですか?ティルエリー様はクラインとはいえ、認定前のただの学生なんです。
調査の協力はしても、何から何まで彼に関与させるのは、彼の学園生活にも影響を来たす恐れがあるのでは?」
「………ヴォルカー……。お前だってティルエリー様の魔道具に関する知識と技術の凄まじさは知っているだろう?特に今回の件……報告書のとおりならば、既にこの研究機関の手に負えないということも。」
「だが……!」
ヴォルカー様は、僕の学園生活を守ろうとしてくれてる。…本当に、優しいな。でも、僕は崩落を止めたいんだ。
「ヴォルカー様っ、いいんだよ。僕だって、この飛空島で暮らしているクラインの人たちは知ってるし、知り合いだけど……正直なところ、あの魔核を再現することは出来ないと思う。それに、このまま放っておけばいつか崩れる。…修理を依頼してくれたら、ひび割れた魔核の代わりも、喜んで作るよ!」
「エリィ……。」
「……はぁ。ヴォルカー、私もティルエリー様の意思を無視して強引に進めるほど馬鹿ではない。ティルエリー様の学業に影響が出ないよう配慮させていただく。」
「……神器級の魔核は、ティルエリー様のお体にかなりの負担がかかるのではないですか…?私は、それが心配で……!」
ひょっとして、《神の聖杯》を作ったときのことを思い出してるのかな……。確かに魔力吸われすぎて倒れちゃったけど……。
「……それは……そうかもしれない。でも、僕だって三百年稼働するような魔道具は作れないよ……。だから、数十年の稼働レベルで…あと、回路の修正で…どうにかならないか…と、思ってるんだ。」
「危険は、ないのですね?」
潤んだ瞳で見つめられ、そっと僕の指に触れる、ヴォルカー様の指。
「ん。大丈夫。」
少しくらい魔力を持っていかれても、今後のための設計図を残しておけば、次の時代のクライン達がきっと再現するから。
「ヴォルカーよ。お前、庭園調査後からティルエリー様との距離が近くないか?まるで恋人同士のようだぞ。」
アールベル王子、鋭いな。…まぁ、僕はヴォルカー様が側にいるだけでトロトロな顔してるから分かっちゃうかもだけど。
「えぇ。恋人です。」
「………ん?」
「私は彼を愛しています。先日、私の想いを伝え、そして応えていただきました。」
ヴォルカー様は僕の肩を抱き寄せて、額に軽くキスを落とした。
ええっ!?キ、キ、キッ……!!
「ヴォルカー様っ。こんなとこで……!」
「ふふっ。すみません。どうしてもアールベルには伝えておいたほうが良いと思って。」
終始ニコニコの彼を見て、アールベル王子は苦笑してた。
「…………ティルエリー様……今の話は本当ですか?こいつの妄想に付き合わせてはいませんか?」
妄想ッ!?まさか!!しっかり気持ちを伝えあった僕たちに…ううん、ヴォルカー様に失礼だよ!
「アールベル王子、失礼ですよ!僕もヴォルカー様と同じ気持ちなんです!」
僕のほうが好きの気持ちは大きいけどね!!絶対!!
「それは……おめでとう、と言っておこう。ははっ。先を越されたね。」
「貴方も、いつまでもふざけていないでさっさと婚約者の一人や二人、作ったらどうです。」
婚約者いないの!?
王子様なら、早いうちから決まってそうだけど……。
「私も正式にマルローズ家に申し込もうと考えているのだが……どう思う?」
アールベル王子が、珍しく頬を染めて恥ずかしそうに口籠る。
「マルローズ家は確か…男爵でしょう。……ノクティス公爵が黙っていないでしょうが……後継者争いという観点からは、我々にとっては良くても、貴方のお父上がどう申されるか……。」
「陛下は私より兄上を推している。私がどうなろうと、兄上に悪影響が無いなら承諾するだろう。むしろ男爵家くらいが良いのではないか?」
二人が、何だかむずかしい話をしているけど、一つだけ、僕が言えることは。
「……あのね、ヴォルカー様、王子。」
「エリィ?どうしました?」
「アールベル王子が、シャルルを好きなのはわかるよ。でも、シャルルの気持ちが大事でしょう?…ヴォルカー様から聞きました。…一方的な好意は…その、迷惑になることもあるんでしょう?
だから、どうか…僕の大事な友人を、不幸にさせないで。お願い……。」
ヴォルカー様の袖の端をきゅ、と握って伝える。僕の未来を守ってくれた彼女の未来が、幸せであってほしい。
「……ティルエリー様……。そう、でしたね。私は、私の気ばかり先走って……外堀を固めて断れぬよう、と烏滸がましいことを画策していたようだ。……これではあの毒姫と同じではないか…。」
アールベル王子は悔いたように顔を顰め、思い直したように頬をぱちん、と叩いた。
「よし!私も正直になろう。余計な画策などせず……素直に私の気持ちを伝えるとしよう。ティルエリー様、ご助言感謝します。」
「はい!!」
良かった、僕の言いたいこと、ちゃんと伝えられた…よね?
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