空飛ぶ島は崩落寸前!?〜僕が攻略対象なんて知りません!

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一章 飛空島

32 学業と両立…。

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「…なんですか、コレ?」
ツインタワーの、アールベル王子の執務室に呼ばれて、放課後に立ち寄ったんだけど。
僕の手には、一枚の厚めの用紙。
金色の箔押しの飾り枠に、簡潔な文が認められている。

《飛空島調査班特派員証明書》

ティルエリー=クライン

上記の者に飛空島の全件に関する調査権を与える。
尚、調査過程で魔道具に関する不具合等を発見した場合、その場で対処する権限を与える。(但し報告は必須)
特派員が学生の場合、報告書一件につき魔法実践授業の単位への代替を認める。

研究機関C・G総責任者 アールベル=エンダタール

調査班…特派員…。
「ヴォルカーに言われた件だよ。貴方は魔法学園の一年生。学業との両立を考慮してな。この前の噴水の件と、離れ島庭園の報告書二件。合計三件の報告書を学園長に見せたところ、絶讃されてね。
流石クラインだと息巻いていた。それに、貴方はクラインであるがゆえ、魔法の実践授業は単位を取れぬだろう?その穴に充てることを認めてもらった。あ、ちなみに調査班の班長は私ね。」
「わぁ……それじゃ、諦めていた魔法実践授業の分も単位取れるんですか!?」
やったーーーー!!!
「その代わり、学年首席をキープしてくれよ。貴方が特派員の座をもぎ取れたのは、貴方が特別クライン血族だからという理由だけではない。学年首席という点も、理由にしているんだ。」
「はい!がんばります!!ありがとう、アールベル王子!」
「………あぁ。その、アールベル王子、という呼び方はやめないか?いつまでも余所余所しくて少し…寂しいと感じる。」
「そ…それなら……アールベル…様?」
「……まっ、今はそれでもいいけどね。ヴォルカーの側に居るのなら、それは私の側に居るも同義。友としてよろしく頼むよ。」
「ええっ!?と、友達っ……王子様と僕が!?」
そんなの、出来るわけない……こともないのかな?あれ?僕、一応侯爵家の息子だし、いいのかな…?
……貧乏だけど。
「それに、シャルル嬢のこととか……その、教えてほしい……。」
アールベル様の頬が色づいた。
シャルルのことを思い出したんだろうな。…本気で好きなんだね、アールベル様。
ふふっ。なんか、カワイイ……。


◆◇


ツインタワーの中にある工房に戻ると、ヴォルカー様が寄ってくれた。
コーヒーをご馳走したよ。
いつも、ここへ来たとき、僕が淹れてあけるんだ。
ヴォルカー様ってコーヒーが大好きだから、学生街のカフェのオーナーさんに淹れ方習ったりして…。それと、コーヒー用の道具も一式作った!
作ったって言ったら、ギーヴもシャルルも驚いてたっけ。
でも、僕は技師だもん。買うより作る方が良い!

それから、アールベル様と友達になったことをヴォルカー様に伝えたよ。
そしたら周囲の温度がちょっと下がった。
何で!?神聖力?
ヴォルカー様はムスッとした顔をして(カワイイ)コーヒーカップに口をつける。
「………まぁ、私は神殿付ではありますが、飛空島での彼を支える臣下の一人には変わりないですし。…しかし、あまり他の男性と仲良くされては嫉妬してしまう。友達付き合いも程々に……お願いしますね。」
ふわ、と僕の髪を撫でてくれる。
当たり前じゃん。僕はヴォルカー様以外の人にこんなこと、されたくない。
「僕だって……ヤキモチ、やきます。ヴォルカー様も僕以外見ないでって思っちゃうし。……」
「えぇ。勿論です。愛しています、私の唯一。」
ひぇぇぇっ、ヴォルカー様、近い!近いです!!
なんだかすごくグイグイ来るとことかっ!迫られると全身で感じる色気とかっ!
こんな感じだったっけ?って思うくらい積極的なの。
で、でも恥ずかしいし、何より……!
「ぼっ…僕、まだ学生だからっ!!えと、そのっ……っ。」
うあぁぁ……色気に負けてしまう……!
でもでも、僕はまだ学生で、それに、ヴォルカー様は保健室の先生で……っ。き、清らかな交際を……っ!
「ふ……ふははっ。すみません。貴方の反応が可愛くて、つい。」
「か、からかったんですかっ?意地悪っ!」
「ふふっ。…学園では私は保健医としてしっかり仕事をしますし、貴方の願いでもある学園生活での平等も約束します。でも、貴方を常に思うことを…お許しください。そして、放課後…学園での時間が終われば、また私と…共に過ごして?」
触れ合う指と、感じる温度。
「ヴォルカー様…。……はい。僕も、いつだって思ってます!放課後は工房に居ます、だから…ヴォルカー様も……。」
「えぇ。必ず伺います。私にも、その調査を手伝わせてください。」
「!!ありがとうございます!」
手伝ってくれる、という言葉に甘えて、僕は作業スペースに移動した。


◇◆


ヴォルカー様には、報告書の書き方を教えてもらったり、休日に外に出かけるとき、付き合ってもらってるんだけど、進捗状況も共有しとかないとね。
「神聖力って、凄く役に立ちますよ!」ってセールスされちゃって、頼らせて貰ってるんだけど、僕がヴォルカー様と一緒にいたいからって理由のほうが大きいな。

「エリィ、そちらの山積みの資料は…?学園の勉強……ではないようですが。」
作業スペースに置かれた資料机には、様々な資料や記録書、僕が書き殴ったノートの山がある。
「……あ、これはね、あのひび割れた魔核のレプリカを作ろうと思って…。でも、難しくて難航中。」
「レプリカ!?再現するのは負担があるのではないですか!」
ヴォルカー様は首を横に振り、やめるように進言する。
「ふふっ。大丈夫です。再現するのは設計図だけ、です。読み解いて、分割できないかと思って……。」
「分割……?」
「三百年も保たせる技は、僕には流石に無いです。でも、機能を分けて……複数の魔核で補えないかと…思って。それなら、僕の魔力を吸いつくさない程度で作れそうなので…。」
「それでも、吸い付くされない程度……なのですね……。」
「そうですね。…三百年もの間…橋に庭園を吸着させて、重力無視して固定し続けるなんて芸当、きっと今の当主たちにも無理でしょう。」
「…………は?え?待ってください。橋が…なんですって?」
ヴォルカー様、目をまんまるに見開いて驚いてる。
僕もあの魔核を解読したときは驚いたもん。
「あの橋は、飛空島本土から伸びているけど、人工的に作った離れ島庭園というプレートを、橋に《吸着》する回路を組み込ませていた。もちろん、重さを考慮して《重力軽減》も。そして、橋自体を強くするため《強化》も施されていて……。とにかく、多重負荷のオンパレード!これを、とりあえず五十年維持させるつもりで、三つの魔石にそれぞれ構築させようと………」
「……………。」
し、しまった。僕ってば、つい夢中になって………。
ヴォルカー様が目を見開いて僕を見てる……呆れちゃったかな……。
「素晴らしいです、エリィ。やはり魔道具への愛は本物。私の憧れたクラインです!……私は、そんな貴方だから、大好きなのです。」
ヴォルカー様が、こんなに、破顔して笑ってくださってる。なんて美しい笑顔……。
……やばい。その笑顔……物凄く好き。
「僕、魔道具のことになるとつい…思いが暴走しちゃうから……。あ、呆れられたかと思って……。」
「呆れるなんて、ありえません!飛空島の今後を常にお考えになる貴方は…とても聡明で素敵です。
その分割の魔核も、今後のためを思って、そのような仕様になさったのでしょう?」
「うん……。」
この場所は、皆の楽園でなくちゃ!って思うんだ…。
クラインの傑作を詰め込んだ…ある意味《楽園》、なんだろうけど……それじゃいつかは崩落しちゃう。
ハウザー様が基盤を作った。なら、僕たちは競うのではなく、維持しなきゃならない。
そんな思いを漠然と語る僕を、ヴォルカー様はとても優しい目をして微笑んでくれた。

「以前、貴方が貴方で良かった、と言ったことを覚えてますか?」
「……あっ、はい。」
噴水の地下でのこと…だよね?
「ギーヴ君も言っていましたね。貴方は……その稀有な力を秘匿するでもなく、敢えて人々に浸透させるよう考えておられる。それは一見したら価値を落とすような行為に取られるかもしれません。…しかし、貴方が思い描くその未来には、人々の笑顔しかない。私は、そんな貴方だから……愛してしまったのでしょうね。」
「なんか…恥ずかしいです……。」
「ふふっ。アールベルの思惑に乗っかるのは少々ムカつきますが……飛空島が今後も平和で在り続けるよう、頑張りましょうね。」
「はいっ!!」

正式に、僕は研究機関の役付になった。
飛空島の不具合を見つけて、直す。
そうしたら、魔法授業の単位も増える!!
しかも、愛する人と一緒に。

あれ?
僕、幸せ過ぎじゃない?


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