空飛ぶ島は崩落寸前!?〜僕が攻略対象なんて知りません!

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二章 宝探し

53 上機嫌な兄

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エンダタール王国 王城にて。


ロンベルト伯爵令嬢の飛空島で行われた騒動は地上でも噂になった。
夏休みに入り、実家に帰省した生徒らが親や知り合いに話したからだ。
そして、アールベル王子とマルローズ男爵令嬢との恋の話。
まるで舞台演劇を語るように、生徒らは好き勝手に脚色して伝えたものだから、様々な噂が飛び交う。

ついに第二王子は下位貴族令嬢に入れあげて堕落した、とか、真実の愛を見つけた幸せな王子様、だとか。

だが、その真実は誰にもわからない。

だから、かの王太子殿下もその噂を信じ切って上機嫌で陛下に会いにいったそうだ。

「父上!やはりあいつは駄目だ。王族ともあろう者が、下位貴族の令嬢などに骨抜きにされているというではありませんか。」
執務の途中に、約束もないのに遠慮も挨拶もなく乱入する王太子は駄目ではないのか、と国王陛下の側仕えであるランティスはそっとため息をついた。
「……噂は聞いている。来週、学園の夏休みを利用してその令嬢を連れて挨拶に来るそうだ。…令嬢を連れてくるよう招待して茶会を開こうと思う。…そなたも同席するか?」
エンダタール王国の王、ルヴェルは思う。
一年前、自分の息子への期待を諦めた。
ただ、それは王太子になる気がないという点だけ。
飛空島へ行けば、身内や派閥のしがらみから離れ、己を見つめ直せると思ってのことだったが、その結果が女に入れあげて落ちぶれるとは思わず、気が気でないとはこのことかと国王は頭を抱えた。
噂を全て信じたわけではないが、息子を思う父親としては心配でたまらなかったのだ。

要するにエンダタール国王は、不器用な子煩悩。

二人の王子のその性格の真逆さに、常に悩まされる。
能力は平凡だが、第一王子という立場を上手く利用し、取り入る貴族らを引率する兄。
聡明であるが、やる気のない弟。
どちらを次期王に立てるか答えを躊躇ったせいで、フォレクタを推す貴族陣や、野心の多い輩から執拗に追い回され、アールベルを危険に晒した責任を感じ、アールベルを王にすることを諦めた経緯がある。
「宜しいのですか?では私がその令嬢とやらを見定めてやりましょう。どうせあいつが惚れる女なと、娼婦のような下品な女に違いない。」
フォレクタは自信に満ちた顔で、意気揚々と執務室を去っていった。
「……まったく…。嵐のようでしたね……。陛下、どうなさるおつもりですか?まさか、本当に男爵令嬢との婚姻をお認めになられるなど……。」
「ランティスよ、そなたもこの縁談は反対か?」
何処か楽しそうに尋ねる。
「それは反対するでしょう。やる気がないというだけで、アールベル様は貴方の才を全て継いでおいでです。愚を装っていますが、私には見抜けますよ。……才能の塊であるのにやる気のない……あぁそうだ。アールベル殿下とそっくりな、あの悪い友人ヴォルカーも!野心の欠片もないというだけで、中身はあなた様そっくりですよ。
そんな有能な王子が、下位の新興貴族の令嬢を娶るなど。もっと力のある貴族との関係を強めるべきかと。」
ランティスの棘のある言葉に苦笑いを零す。
「……ふむ……。そうさな。」
(マルローズ男爵本人は野心こそ無いものの、その奥方の性格はかなり狡猾と聞く。
魔法学園に在学中に高位貴族と縁付くことを願っていると、以前王家主催の茶会の場で妻が聞いたそうだしな。)
「それでその娘が射止めた相手が、学園内の令息ではなく…研究所の最高権力者で、エンダタール王国の王子とは。
娘の方も、母親に似て狡猾なのかもしれないな。
アールベル自身に野心の欠片もないならば、そんな娘が側にいるのも面白い。…そうは思わんか?」
「むぅ……。陛下にそう言われてしまうと……ですが、あの聡明なアールベル殿下が……と思うと、やはり信じられないのです。」
「なに。会えば分かるさ。」
この時、ルヴェルもランティスも知らない。
「力のある貴族」どころか、世界をも揺るがしかねない権力の塊であるが、アールベルの友人としてそのお茶会に来ることを。



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