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町を発展させるにはまずは道路整備から

ルナの剣速

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ルナの高速の一閃で目の前にあった木は綺麗に倒れた。

「おぉ~、ルナちゃん凄い!その大きな刀を振るの速くて見えなかったよ!」

「ありゃ刀っつーより太刀だな。背の低い人には向いていないんだがルナちゃんは扱い上手いな。太刀を振るときも重心がブレていない。足腰が鍛えられている証拠だ。」

ここでルナにとって予想外の出来事。まさか、太刀捌きをここまで褒められるとは思わなかった。

しかし、ルナは宗之にも褒められたかった。宗之からの評価が気になる。ここの領主である、そして自分を仲間に迎え入れてくれた宗之に褒められたいのだ。

ルナはチラッと宗之の方を見る。しかし、宗之は顔から感情が分かりにくい。

仕方がないのでルナは聞いてみた。

「主?あ、あたしの腕どうかな?」

「ルナ、おめぇ剣術は出来ないって言った割りには出来てるじゃねぇか。太刀の扱いは俺には出来ない。その太刀で木をこれほど綺麗に斬れるとは驚いた。」

「へっへっへー、あたしは実戦が苦手なだけなのだっー。この程度の太刀捌きなら朝飯前よ!」

太刀の扱いは戦国時代で育った宗之には無理である。そもそも太刀というのは戦国では殆ど使われていなかった。

刀より大きいから必然的に刀より重く扱いにくいし、集団戦闘が基本の戦国では槍が主な武器だ。

それを背が低いルナが軽々と扱っているのだから驚く。


「ルナ、おめぇは凄い。だがな、俺もスゲェから。見てろ。」

すると宗之は月光を握る。

「あっ、止めて!俺を使わないで!俺で木を斬ったら折れちゃうかも!だからやめてぇっ!」

ふと身の危険を感じて怖くなった月光。

「今まで散々硬いもの斬ってきたんだ。大丈夫だろ。」

すると宗之は片手で月光を握り、片手で木を斬った。

「主様、やるじゃない!片手で刀を持って木を斬れるもんなのね!」

普通、刀は両手で持って使う。体のバランスや重心の移動は刀を両手で持ってこそスムーズに出来る。

そして、両手で持ったほうが力も入るから、しっかりと斬りやすい。本来は片手だと重心移動がしっかりと出来ないし、力も入らない。

しかし、宗之は片手の力だけで木に一閃して斬り倒したのだ。

「片手で斬るには筋力が必要だ。ルナ、おめぇは片手で刀を持って木を斬れるくらいの力を付けろ。それが出来たら、おめぇはかなり強くなる」

貧弱貧相な体のルナは見た目どおり力が無い。それこそ、同年代の女の子の中でも力が無い部類だ。

しかし腕力が付けば、元々速い剣速は更に速くなるし、力勝負で力負けもしなくなる。ルナには大きな太刀を使いこなす技術があるのだから腕力が付けば、いわゆる忍者として一人前になれる。

とはいえ、それはかなり時間が掛かる。2日3日では腕力は付かない。ルナが本格的に忍者としての力を発揮するには1年・・・いや、3年は必要である。



「じゃあ、あたしは今日は片手で持って木を斬ってみるわ。」

「おう。それと、普段使っている太刀じゃなくて刀を使えな。太刀を片手で持つのはキツすぎるだろ。」

宗之はもう一本持っていた刀をルナに渡す。

「へぇー?なかなか良い刀じゃない?じゃあ試しに片手で木を斬ってみるわ。」

ルナは渡された刀を抜いてスパっと刀を斬り付けてみたが上手いこと斬れない。

「やっぱり、腕の力がないから重心がブレてやがる。刀を片手で持って重たいと思ったろ?」

「ええ、刀ってこんなに重かったかしら?」

「刀はな、重いんだよ。普段おめぇは両手で持っているから、それを忘れていたんだ。もう一度やってみ。」



それから宗之はルナに刀の基本的な事から腕の筋肉の事、筋肉を付ける為の訓練法を教えながら木を斬り倒して行った。

「完全に私は蚊帳の外ですね~。」

二人の会話に全く入れない奏音は、ただ「ボッー」と木を斬り倒して行くのを見ているだけであった。



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