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第4章『理想郷の王冠』と『理想郷の宝石』
幽霊でダンディ系キャラ
しおりを挟む「………凄い………!」
セオドアは目を輝かせていた。
眼前には____沢山の美しい薔薇達。
ツリーロードまである。綺麗で広くて、天国かと思った。
勿論薔薇だけではなく、様々な花が植えられていて、ヴァリアース城よりも立派な庭園だ。
「お気に召されたでしょうか」
「ああ、とても素敵だ!」
後ろに控えているアミィール様の侍女・エンダーの言葉に食い気味で答える。
現在、俺は城内を案内されていた。アミィール様は『わたくしがご案内したかったのに』と頬を膨らませていたけれど、生憎アミィール様にそのような時間はない。今日も執務室で仕事に明け暮れている。まるでブラック企業である。
それにしても………………サクリファイス皇城は全てが規格外だ。キッチンも、廊下も、部屋も、この庭園も……………全部が豪華で広くて大きい。そして、しっかり手入れをされているのだ。
故に人も多いのだが…………………流石大帝国の城だという感じだ。最初こそどこに行くにもビクビクと怯えていたけれどキッチンとこの庭園をみてそれは吹き飛んだ。
「エンダー様、もっと見てもいいかい?」
「はい。…………それと、わたくしのことはエンダーとお呼びくださいまし。アミィール様_あのお転婆無鉄砲皇女_の皇配になろうとなさっておられるセオドア様が従者に敬称など使いましたら理不尽皇帝に切り捨てられますよ」
「う、…………善処、する」
たまに疑問に思うんだ。なんでここまで悪口を公衆の面前で言えるほど嫌いな主人に仕えているのか………………ああ、お金か。そりゃあ皇族_ましてや大帝国の_に仕えれば破格な待遇と金銭を貰えるだろう。
何はともあれ、庭園を見て回ることは許された。一日では回りきれないから、また合間を縫ってこよ…………………?
そこまで思って、足が止まる。
沢山の草木や花が植えられているのに、この場所_庭園の奥の方_は花が植えられていないのだ。花壇があるのに土しかない。なんで……なにか植えるのかな………?
「_____そこは、アミィールがお前の為に用意した花壇さ」
「………………!」
不意に近くの木から声がした。上を見上げると____青紫の長髪、黒瞳のコートのような着物を着た男。以前断罪イベントで出会った男……………って!
それをみて、ピンと来る。
この見た目、そして、あの断罪イベントでアミィール様が持っていた全てが青紫に染まった剣___それは、ヒロインの攻略対象者であり、ヒロインの使う剣である魔剣・ダーインスレイヴじゃないか!
つまり、乙女ゲーム『理想郷の王冠』の主要メンバーなのだ。うわぁぁぁあ、俺が気づいてなかっただけで既に攻略対象者とエンカウントしていたのか!
真っ青になるセオドアを他所に、ダーインスレイヴはひょい、と華麗に木から降りて着地した。
「…………何を考えているか分からないな、前会った時はよく見えたんだが………不思議な男だ。流石アミィールの選んだ男というところかな。
それより、ぼうっとしてないで、どういうことだ?とか聞けよ」
「あッ、ど、どういうことでしょうか……………?」
ダーインスレイヴの言葉に、ほぼ反射的に言葉を発する。『すごく女らしい喋り方だなあ』と呑気な声を上げてから続けた。
「その花壇、お前が花を愛で、育てる趣味があるからとアミィールが準備させた花壇だ。
つまり、お前のものなんだよ」
「え…………………」
初耳である。アミィール様、そのようなことまでお考えに…………?執務でお疲れのはずなのに……………どうして……………
「それだけお前を愛しているんだよ」
「わっ」
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