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第6章 お披露目祭り
Shall we dance .
しおりを挟む「こちらでございますか」
「ああ。ありがとう」
セオドアは手にリボンを持つ。群青色のリボンには綺麗な緑色のエメラルドの宝石を砕いて散りばめてある。本来なら、婚約一年記念に渡そうと思っていた代物だが、この美しい薔薇のお返しをしたかったのだ。
喜んでもらえればよいのだが…………なんて、淡い想いに頬を緩ませながら、エンダーに言伝と共に渡す。
「これをお礼に、とアミィール様に伝えてくれ」
「は。…………ではわたくしはアミィール様のお化粧をしなければならないので、失礼致します」
エンダーはそう言って部屋を出ていった。それを見送ってから、紅銀の薔薇を再び見る。…………このように美しい物を作れるなど、やはりアミィール様は凄い。
愛おしげに薔薇を愛でているセオドアに、レイも笑みを零して言葉を紡いだ。
「せっかくだ、ポケットに差しておけばいい。…………なんなら、頭にでもつけておけ」
「な、………俺は、男だ!」
「もうほとんど女子だろ。花を貰って喜ぶなんて。安心しろ、お前の顔なら見ようによっては女子に見える。なんならアミィール様に男装してもらって、お前はドレスでも着るか?」
「き!な!い!」
セオドアは顔を真っ赤にしながら、大切にポケット付近にあるフラワーポケットに刺した。
* * *
歓迎パーティは、サクリファイス大帝国・皇城のパーティ会場で行われる。皇城のパーティ会場はユートピア随一の広さを誇り、とても赤と金の美しい装飾に彩られている。
そんなパーティ会場はこの国の重要人で溢れかえっている。今か今かと主役を待っている中、大きな扉が開いた。
そこには_____紅銀の髪を群青色と緑のリボンで緩く纏め、群青色のレースやリボンを贅沢にあしらったドレスに身に纏う黄金色の瞳を持つ美しい女。その隣に、群青色の短い髪を横に流し、着けられた黒と金のドミノマスクから緑の瞳を覗かせ、国色である赤と金の正装をした男。どちらも美しく、スタイルの良さを強調しつつも存在感ある服を見事に着こなしている。
ワァァ、と歓声が上がる中、女は男に手を差し出した。男は耳を紅くしながらもその手を取る。女がエスコートし、男がエスコートを受ける。あべこべな筈なのに、とても絵になっている。
優雅に、注目されながら会場の中央に来ると、曲が流れた。まずはダンスのお披露目だ。
男と女は1つ礼をして、お互いの身体を寄せ合い、踊る、踊る。
女____アミィールは黄金色の瞳を細めて自分をリードする男に微笑みかけた。
「____セオ様、とても素敵です。初めてのダンスに美しいお姿………わたくし、倒れてしまいそうですわ」
「それは____私のセリフだ。婚約者と踊るというのはこんなにも楽しく嬉しいことだとは知らなかった。アミィの姿も一際美しい。…………私のリードで貴方の華麗なダンスの質を落としてしまっている……………申し訳ない」
男____セオドアは申し訳なさげに眉を下げている。しかし、アミィールはふるふると首を振った。
「そんなことありませんわ。…………わたくしの花を身に着けているセオ様とこの様に踊れるなんて……………歓迎パーティではなく、わたくしたち二人きりの世界で踊りたいですわ。
こんなに愛らしい貴方を独り占めしたい。誰にも見せたくございません」
「____同じ事を考えてます。私の髪と瞳と同じリボンを着けてこうして踊っていると、………胸が熱くなります」
「ふふ………………わたくしたちはお互いがお互いの1部となってますね。素敵。
_____踊りながらキス、出来ないかしら」
「そ、………それはだめだ、私にそのような事……………」
ドミノマスクを着けて半分顔が見えないというのに一目で真っ赤になっているとわかる位首が紅いセオドア。
とうとう我慢が出来なくなったアミィールは踊りをやめて_____公衆の面前でキスをしたのだった。
どよめく観衆、突然の事に瞬きをするセオドア、してやったりという顔をするアミィールに、両親は呆れたり、笑ったりしたのだった。
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