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第12章 様々な愛の形
聖女にとってのハッピーエンド
しおりを挟む_____私は、聖女でヒロインだ。
そう思ってたしそう疑ってなかった。
けど、それはアルティア先輩との出会いで180度変わった。私はモブだったのだ。最初こそは?ってなったけれど…………今はちゃんと、それを受け入れられている。
フランは空を見ながら、思う。
それは____ダーインスレイヴ様の言葉だった。
アルティア先輩のデートを盗み見ている時に、お前もヒロインだ、と言ってくれたから。
そう思うと…………心が軽くなって、当時は認めたくなかったけど、私はダーインスレイヴ様をその時に好きになった。
少女漫画や転生小説が好き。ハッピーエンドは大好き。
けどね。
結婚したり、身体を重ねたり、愛を囁きあったり…………そういうのも好きだけど、それ以上にね。
_____好きな人の心に、永遠に住み続ける方が素敵だと思ったの。
ダーインスレイヴ様は死なない。
なら、その心に居座る私も死なないじゃない。
『こんな女がいた』、『俺を愛してくれた女が居た』、『うるさい女だった』…………なんでもいいの。好きな人に思われる感情は全て甘くて素敵だから。
私は結ばれないことに絶望していない。
諦めたくないから言い続けている。
それで結ばれるならラッキー、結ばれなくても私はあの人の中に居続ける。
どっちもハッピーエンドでしょう?
それにね。私が結ばれなくても____私達が生み出した希望に、そして希望が愛したこの子に、幸せをお裾分けしてもらっているから。
フランは目の前にいる男の子を見る。
女のようにか弱く、女々しいイケメン。…………これを不幸だと感じてしまうほど、心の綺麗な男の子。
「____ねえ、セオドアくん。
泣かないで、悲しまないで。
アミィールちゃんと、貴方が幸せなら…………それだけで、私も幸せになるんだから、さ!」
フランは、やっぱり笑顔を作って笑った。
* * *
ダーインスレイヴ様も、フラン様も、幸せそうに笑って『俺達の幸せ』を願っている。笑顔を、向けてくれている。
俺がアミィール様を好きでいること、アミィール様が俺を好きでいること。
それが幸せだと言ってくれている。
ならば。
男として、アミィール様を愛する者として___それに応えるのは。
「_____当たり前です。
私は、必ず、アミィール様をもっと幸せにします」
セオドアは涙を拭いてから、それでもはっきり言い切った。フランはそれを見て『よし!』と言って指を鳴らした。
すると_____魔法陣が生まれて。
驚かなかったのは、その魔法陣は聖の精霊・カーバンクル様を呼ぶ時のものだと知っているから。
案の定、リスの姿をしたカーバンクル様が現れた。
『フラン?どうしたの………って、セオドア様!?泣いたの!?』
「あ、えと、その…………」
素直に泣いた、というのは恥ずかしくて。俺は言葉を詰まらせる。そんな俺をよそに、フラン様はとんでもないことを言った。
「カーバンクル、貴方、セオドアくんとキスしなさい」
『「……………は?」』
カーバンクルとセオドアは目を見開いた。しかし、フラン様は止まらない。
「チューしなさい、ほら、人型になって」
「い、いやいやいやいや!フラン様!?何を仰ってるんですか!?」
『そ、そうだよ、フラン、ぼ、僕……』
「2人とも5分以内にやらないとセオドアくんはアミィール様の前で女物のド派手な下着を着させるし、カーバンクルには………そうね、大好きな聖の魔法を1週間使ってあげないわ」
「『……………………』」
いい雰囲気がぶち壊された瞬間だった。
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