176 / 469
第12章 様々な愛の形
キスで浄化して
しおりを挟む「…………ひっく、うぐ………」
セオドアは自室にて1人、泣いていた。枕を抱きしめている手には____水の精霊、太陽神、聖の精霊の契約印がキラキラとそれぞれの光を出している。綺麗な契約印を見る度にセオドアの緑の瞳からは涙が零れる。
……………俺はまた穢れてしまった……しかも、今回はアミィール様のいない所で……………俺はとんだ浮気野郎だ……………不貞な輩だ…………………アミィール様がまた傷ついてしまう…………泣いてしまうかもしれない………………
聖女しか貰えないという聖の契約印を、皇配が貰うというのはとても誉高い筈なのに、セオドアにはそんなことよりも唇を奪われた事が重大案件なのだ。
「………………俺、もうアミィール様の傍に居ちゃ、行けないのかな…………いやだ、嫌だよ……………」
「____なんでですか?」
「俺がまた男とキスした____って、アミィ!?」
ベッドから飛び起きると____アミィールが泣きそうな顔で立っていて。セオドアは咄嗟に手を後ろに回した。そして、ポロポロと涙を零しながら、か細い声で言う。
「アミィ………俺は………俺は最低なんだ…………」
「…………セオ様、その隠した御手をどうかお見せ下さい」
「ダメです……………俺の穢らわしい罪を貴方に見せたくない、です…………」
この光景を見られてもう隠せない、と分かっているけれど……………それでも、愛している御方に素直に見せることなど出来ない。こんな不貞な俺はアミィール様の夫であることなど許され____
「っん」
セオドアがそこまで考えた所で、アミィールの細い小さな両手が顔を優しく持ち上げ、唇を重ねた。
アミィール様の今日のキスは、触れるだけじゃない。だからといって深い訳でも無い。唇を重ね、呼吸の合間に俺の唇に舌を這わせ、まるで飴を舐めるように自分の唾液を付けるようにして、また唇を重ねる。
丁寧にそれを繰り返されてから、銀の糸を引いて………唇が離れた。アミィール様は俺に熱い視線を向ける。
「____セオ様。そのキスは自分からしたのですか?」
「い、いや、フラン様に………………」
「でしたら____セオ様が悪い訳ではありません。
セオ様にキスさせたフラン様が悪いのです。確かに、セオ様が私以外と唇を重ねるのは嫌です。
_____ですが」
「ッ」
アミィールは1度言葉を切り、セオドアの涙の跡を未だ流れている涙と共に舐めとってから、優しい笑みを浮かべた。
「_____仮にセオ様が穢れたとしても、わたくしは貴方を愛します」
「____ッ、アミィ」
セオドアはその笑みを見て、顔を赤らめながらぎゅう、と抱き締めてまた泣いた。
この人は本当に、イケメン過ぎるんだ。誰よりも、何よりもかっこよくて、優しくて…………どんなに俺が醜態を晒しても、穢れても愛してくれているんだ。
今度は嬉しくて泣くセオドアをアミィールは抱き締め返しながら、背中を優しく撫でる。その顔は幸せと言わんばかりだ。
____セオドア様は、どんなに穢れてもセオドア様ですもん。後からフラン様には秘密裏に痛めつけましょう。ついでにカーバンクル様も。
それよりも。
アミィールはそこまで考えて、セオドアの耳元で甘く囁く。
「セオ様。……………わたくし、セオ様に沢山愛されたいです。
____わたくしを、今から愛してくれませんか?」
「ッ………ああ、アミィ、俺のこの穢れを癒してくれる貴方を____今すぐ愛する」
セオドアはそう言って、押し倒して貪るようにキスをした。自分の穢れをアミィールの甘さで払うように、念入りに、何度も唇を交わしながら愛する人の全てを愛でた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
71
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる