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第15章 主人公と兄
秘密の……?
しおりを挟む「はあ……………………」
会食が終わり、寝室に来たセオドアは大きく溜息をついていた。
…………結局、兄上に部屋を奪われた。本当に滅茶苦茶だ。アルティア皇妃様に滅茶苦茶やられるなら立場や性別が違うからなんだかんだと諦めがつくが、血の繋がった兄弟相手だと腹立たしくてしょうがない。
だって、あの部屋は俺とアミィール様の甘い空間だったんだ。自室の柔らかいソファで他愛のないお喋りして、キスして、それ以上だって………なのに、その聖域に土足で踏み荒らされるのは本当に嫌だ。
……………今からでも、文句を言いに行こうかな…………
「____セオ様?」
「ハッ、あ、アミィ…………」
我に返ると、アミィール様がいつの間にか居て、シャワー上がりだから少し髪が濡れている。これでは風邪を召してしまう。
「アミィ、髪を乾かすからおいで」
「…………はい」
アミィールはセオドアの隣にちょこん、と座る。セオドアはアミィールの持っていたタオルを預かり拭く。アミィール様は細かい事を気にしないタイプだから、こういうことがわりとあるのだ。綺麗な紅銀の髪が傷んでは大変だから、一束一束丁寧に拭く。
俺にとって癒しの時間である。
「………あの、セオ様」
「ん?どうしたんだい、アミィ」
「セオ様………わたくし、なにかしてしまいましたか?」
「え?」
突然そう言われて聞き返す。よく見ると肩が震えている。…………泣いてる、のか?
セオドアは髪を拭くのを1度やめて、アミィールの顔を見る。目尻に雫があった。慌てて声をかける。
「アミィ、どうしたんだい?」
「セオ様、怒っていらっしゃるから…………わたくしが、なにかしたのかと………」
アミィール様の声はどんどん小さくなる。勿論、アミィール様は何もしていない。
セオドアはアミィールを抱き寄せ、自分の胸の中へ誘う。ふるふると震えている身体を優しく抱いてあげると、アミィールは顔を上げた。黄金色の瞳が潤んでいる。だから、できるだけ優しい声を出した。
「アミィは何もしてないよ。…………兄上が勝手に私の部屋を取ったから、怒っていたんだ」
「そんなに嫌なのですか?」
「ああ。___あの部屋は私達の大切な空間だから、穢されたくなくて」
セオドア様はそう言って悔しそうに顔を顰める。…………よかった、わたくしが何かをしたわけではないのですね。
けれど、そんなに嫌なのでしょうか?
わたくしは…………
「____わたくしは、セオ様が居てくだされば何処でもいいのです。地獄でも、幸せを感じますよ?
確かに、あの部屋は好きですが………あの部屋が好きなのは、わたくしの大好きなセオ様の匂いで溢れてるからですもの。
こうしていれば___匂いだけではなく、体温までも、感じられます」
「…………ッ!」
アミィール様はそう言ってすり、と頬を俺の胸に擦り寄せた。また格好いい事をこの人は………仕草は可愛いし…………本当に、この御方は俺の理性を崩すのがうまい。
「…………アミィ。そういうこと言っちゃいけないよ…………もっと触れたくなるから」
「___触れてください。沢山触れて、身体中をセオ様で満たしてくださいまし」
「…………ッ!」
熱の篭った視線。そりゃあ、今すぐ抱きたいさ。けど、隣には兄上が居るんだぞ?アミィール様の甘い声を聞きながらしたい………けれど…………
セオドアは顔を赤らめながら、自室へ続く扉を見てはアミィールを見るを繰り返す。
……………セオドア様は、きっとお隣にいらっしゃるお兄様を気にして、わたくしを抱かないようにしているのでしょうけれど。
わたくしは___セオドア様と、甘いひとときを過ごしたいから。
「セオ様」
「んっ、………」
アミィールはセオドアは押し倒し、唇を重ねた。セオドアが手を出したくなるように、啄むような軽いキスを何度も重ね、身体に優しく触れる。なぞるように腹筋を指で擽る。
最初こそ驚いていたセオドアはそのいじらしい誘惑に戸惑う。
アミィール様、すごく挑発してる…………しかし、兄上が………だけど、その気になってしまって。
「っは、___アミィ」
「セオさ___ッ」
セオドアはアミィールの後頭部を抑えて唇を押し付ける。口をこじ開け、アミィールの好きな甘く蕩けるキスをしながら、力が抜けたところを抱きとめ、押し倒す。そして、銀の糸を引きながら唇を離し、アミィールと熱い視線を交わす。
「___俺は、アミィの甘い声を兄上に聞かせたくない」
「では、セオにしか聞こえないように__声を抑えます。
なので、どうか………」
「ッ、アミィ…………!」
「あっ、………」
セオドアは獣のようにアミィールの首筋に食らいついた。秘密で危ない甘い時間は、恐ろしいくらい昂った2人でした。
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