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第16章 チート過ぎる家族達
見守る女達
しおりを挟む「ッ、ぷは………お母様!どうかお止めください!」
やっと母親の魔法から抜け出せたアミィールはアルティアに直談判する。いくら鉄球というハンデをつけ、本気で戦ってないと言えど心の優しい愛する御方が剣を振るうのは嫌だった。乱入したいのに、母親の方が1枚上手で、アミィールは強い結界魔法に閉じ込められていた。
アルティアはそんな籠の中の娘を見て満足気に笑いながら言う。
「アンタ、淑女なら殿方の戦いに水を差してはならないことを覚えなさいよ」
「ッ、お母様に淑女を語られたくありません!セオ様が傷ついてしまったら………ッ!」
「なによ、愛する男1人信用出来ないの?アンタは」
「____ッ」
そういう訳では無い。セオドア様はお強い。わたくしも身を持って知っている。
でも。
アミィールはそこまで考えて空を見上げる。父親が剣を振るい、武術を駆使し、合間に魔法を組み込んだ野生じみた攻撃をしている。___あの人の戦い方は独特なのだ、理論的かつ暴力的、荒々しくも冷静。人を殺す、痛めつける方法を熟知している。
そして。
幻想的な白い大きな翼を生やす愛おしい御方は教科書通り、あくまで『訓練』の戦い方。理路整然として機械的な、どこか手加減をしたような戦い方………に、わたくしには見えた。
あの戦い方では、圧倒的に実戦経験が上である父親の方が有利である。
「___ッ!」
「!セオ様!」
セオ様のお顔に、浅く切り傷がはいっている。わたくしは思わず結界を殴る。けれども、結界はビクともしない。
___見て、いられない。
「ッ、解除魔法・特上!」
「___防御魔法・"棺桶"」
「___!」
最大の解除魔法を唱えるが、お母様はその上に更に強固な黒い結界を張った。意地でもここを通さないと言わんばかりでぎり、と歯ぎしりをする。
「お母様!」
「殿方の戦いを邪魔するなら____まずはアンタを黙らせるわよ、アミィール」
「…………ッ!」
お母様の、黄金色の瞳が冷たく光った。これ以上抵抗したら殺す、そう本能に訴えかけてきて………恥ずかしい事に足が竦んだ。
悔しげに睨むアミィールにアルティアは厳しい顔から一変、満面の笑みで2人を指さした。
「楽しみましょうね、アミィール」
「この人格破綻者………ッ!」
「人格破綻者で結構。私はねえ、楽しいものを見たいのよ、沢山。
___それに、アンタの目は節穴なの?セオドアくんをよく見なさい。
あんな顔をしている人間が、簡単にやられると思う?」
「なにを____!」
アミィールはそう言われて、セオドアを見る。
セオドア様は___今まで見た事のないくらい、雄々しく、それでいて楽しそうに笑っている。
お菓子作りや草木を弄るのとも、わたくしを抱く時とも違う____戦う男の、顔。
セオドア様、楽しんでいらっしゃるの…………?
わたくしは傷ついて欲しくなくて。
できることなら剣など握って欲しくなくて。
でも。
セオドア様は_____そんなに、楽しそうに剣を振るうことも、出来るのですね。
傷つけないのに、引かない剣。
優しくて、それでいて一生懸命な剣。
いつの間にか、わたくしは___その戦いを止めようなどと思っていなくて。
その代わりに祈った。
楽しんでいらっしゃっていい。思う存分やってくださっていい。
ただ。
傷つかないでくださいまし_____
両手を組んで祈り出す娘を、母親は浅く笑みを浮かべて見守っていた。
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