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第19章 父親(仮)、奮闘する

レッツ胎教修行!

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 ピアノを始めたのは、『胎教にいいから』だ。
 子供に胎教するには音楽がいい、と前世でよく聞いたからやってみた。最初は猫踏んじゃったぐらいしか弾けなかったけれど、前世で学生の時受けていた音楽の授業を必死に思い出してきらきら星なんかも弾けた。けれども、ここはギャルゲー『理想郷の宝石』、乙女ゲーム『理想郷の王冠』の世界だ。そんな音楽だけでは馴染めないかもしれない。


 だから、リーブに新たな教育をしてくれと懇願した。そうしたら、リーブ伝いでラフェエル皇帝様の耳に入り、グランドピアノを買ってくれたのだ。お金を使わせてしまったのは申し訳ないけれど、心遣いがとても嬉しい。


 で、この世界の曲を全部覚える勢いでこうしてピアノを弾いているのだ。ポロロン、という心地いい音が、まるでアミィール様と子供達を祝福しているようで心も弾む。


 「あの、セオドア様」


 「?なんでしょうか?」


 「考え事をしながら弾くと音が軽くなります。弾くことに集中しましょうね」


 「う…………は、はい 」



 本日三回目のご指摘を頂いてしまった…………せっかく教えて貰っているのだから、しっかりしなければ………!


 そんなことを思ってもやっぱりふわふわとした心持ちでピアノを引いてしまってこの後四回目のご指摘を受けるセオドアだった。





 *  *  *




 「アミィ!」


 「セオ様、ようこそいらっしゃいました」


 執務室にて仕事をしているアミィールは愛する殿方が来て、奴隷バイヤーの処罰のことに関して考えて強ばっていた顔を綻ばせる。


 ……………以前は執務室に来るのは滅多になかったのに、最近は毎日足を運んでくれている。暇さえあればこうして来てくれるのだ。


 お父様がセオドア様を寵愛し始めてから『セオには血なまぐさい物を見せたくない』と言って執務室に行かせないと豪語していたけれど、セオドア様は隠れてこうして来てくれる。理由はもちろん、わたくしと子供達が心配だからである。



 そんなことを考えていると、スキップでもするようにわたくしに近づいてきて、抱き締めてくれる。




 「アミィ、気分は悪くないかい?吐き気はないかい?コーヒーを飲んでいたりしないかい?紅茶もだめだよ、カフェインは子供達を苦しめてしまうんだ。

 アミィの悪阻の状態は?ずっと座っていたら腰を痛めるよ」



 これはもう必ず聞かれることである。とても温かく優しい言葉の羅列は先程からやっている執務の内容など忘れさせてくれるのだ。


 アミィールは目を細めてセオドアを見上げて、優しい笑みを浮かべる。


 「ふふ、心配しすぎです。大丈夫ですし、セオ様の言うことは絶対なので、コーヒーも紅茶も飲まず、水だけ飲んでおります。

 食事は…………未だに気持ち悪くて取れませんけれど」


 「そうか……………」



 セオドア様はそれを聞くと顔を暗くした。………わたくしの身体を気にし始めるとこうして心配してくださるのです。とても嬉しくて………わたくしの中に宿る子供達から幸せをさらに貰っている気持ちになる。



 「アミィ、今は休憩だろう?あっちのソファで、少し休もうね」


 「ええ。………休憩が終わるまで、居てくださいますか?」 


 「勿論、アミィとの時間を取るために執務も教育も調整しているから大丈夫だよ」



 そう言って再び笑ってくれるセオドア様に胸がきゅん、とときめいた。………心配してくださるお顔も好きですけれど、やっぱりセオドア様は笑顔がいいです。














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