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第20章 SweetでBitterな日常
『男女逆転演説』 #3
しおりを挟む恥ずかしすぎる………………!
女装し国民達の声を聞いているセオドアの心の中はこればっかりだった。
何度も何度も言い聞かせたけれど、国民の前でこのような恥ずかしい格好をしているという現実は受け止めにくい。
恥ずかしすぎて俺はこのまま死ぬのでは?と思ってしまう。
というか俺、アミィール様と出会ってから命の危険に晒されるの多くないか?なんだかんだ生きているけれど、心臓が痛すぎるし顔が焼けるように熱いし頭がクラクラするくらい朦朧としている。
こんなのやっぱり国民の前ですることじゃないんだよ。なんで懐妊の話をする時に女装なんてしなきゃいけない?いらないだろ完全に悪ふざけでしかないだろう?本当に嫌だ、涙だって出る……………「セオ様」
そこまで考えたところで、腕の中にいる、愛おしい御方が俺を呼んだ。抱き上げているというのに、腕の中に居るのは王子様よりもかっこいい美男子だと思わせる。俺の妻なのだが。このあべこべな格好のせいで麻痺している。
セオドアはそう考えながら、口を開く。
「どうしたんだい、アミィ。身体が辛いか?」
「いいえ。___セオ様、とても美しくて、神々しくて………わたくし、とても幸せにございます」
「_____ッ」
そう言ったアミィール様は、目を細めとても穏やかな、幸せだと言わんばかりに笑みを零していた。流れた涙を指で掬い舐めている。それだけで俺の顔は別の意味で紅くなる。
可愛くて、かっこいい。
どっちだよ!と突っ込まれるかもしれないけれど、どっちもなんだ。どっちなんて言えないくらいそのふたつを持ち合わせているんだ。こんなのときめくなと言うのが無理だろ?でも、俺だって男だ。かっこいいことひとつ言いたい。
「それはわたくしも同じ気持ちです……………アミィの方が美しい………ですわ」
セオドアはたどたどしく言う。
なんで俺女言葉使っているんだー!かっこいいシーンが台無しじゃないか!数秒前は男だ!と豪語してたのになんでー!?
それはもうゆでダコのように顔を赤くするセオドアに、アミィールはくすくすと囀るように笑ってから、身体を起こして涙に濡れたセオドアの唇を奪う。
「___っん」
「ふ…………」
国民達の前で行う3度目のキスは、立場も状況も忘れる深くて甘いキス。おお!という国民達の声を聞きながらも、愛おしい御方のキスはそれさえもかき消して2人だけの世界を作り出す。
もちろん、それを見ていた国民達は___さらに盛り上がる。
今でこそ大人な関係の皇帝夫婦も若い頃は演説中にこうしてキスをすることもあった。それの再現のようで胸を温かくさせた。
アルティアはにやにやしながら、再び口を開いた。
【「とまあ、このとおり愛し合った末に出来た孫たちなんだぜ!しかも、驚くのはこれだけじゃない!実はだな、その子供というのは………双子なのだッ!」】
「ふ、双子!?」
「それでは、皇位争いが…………!」
ざわざわと騒ぎ出す国民達。この仲のいいサクリファイス皇族達の間で皇位争いなどして欲しくない。
不安が広がる国民に声をかけたのはラフェエルだった。
【「案ずるな。___皇位争いなどさせない。
お前達国民が苦しむようなことはしないことをここに誓う。………私がお前達との誓いや約束を破ったことがあるか?」】
威圧するような声。
けれど、それは事実で。
____ラフェエル皇帝様がそう言うのなら、そういうことは起きない。
そう安心させるものだった。
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