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第22章 父親 にレベルアップした!▽
あべこべな双子の名前
しおりを挟むセオドアは未だに泣いているアミィールの顔の横に2人を降ろす。暴れていた赤ちゃんは降ろされると大人しくなった。アミィールは泣きながらもそれを見て、小さく笑う。
「…………………ふふ、2人ともセオ様にそっくりです」
「ッ…………けれど、男の子の方の目元は、アミィ、に…………」
セオドアはそこまで言って、涙を流した。アミィールの疲れつつも優しい笑顔と2人の赤ちゃんが並んで…………やっと、実感したのだ。
そんなセオドアを目を細めて見守ってから、『でしたら』と言う。
「こちらの女の子の口元はセオ様ですね。男の子の方は髪が同じ群青です…………。
2人とも、とても可愛いです…………
セオ様………いいえ、セオ、わたくし達の子供達ですよ」
「っ、うん…………うん…………ッ、アミィ、ありがとう、ありがとう…………!」
セオドアは譫言のようにそう繰り返してベッドに顔を押し付けて、泣いた。嬉しくて幸せで、いつもいつも思っていることのはずなのに、こんなにも温かい気持ちになるんだ。
嗚咽をしながら泣くセオドアの頭に、アミィールの優しい声がかかる。
「…………………ねえ、セオ様。この子達の名前、聞かせて欲しいです。
わたくし、知りたいです」
アミィール様がそう聞いてきた。名前を付けるなんて話はしていなかった。てっきり、アミィール様がつけるものだと思っていた。
それかラフェエル皇帝様がつけた方がいい。
けれど、この時の俺はとても我儘で。
いつものヘタレでビビりな俺の思考など皆無で。
___この可愛らしい自分の子供達に、自分が名前をつけたい、と思ったんだ。
そう思うと…………自然と口が動いた。
「………………セラフィール、アドラオテル………………」
「_____セオ様、わたくしに聞こえるように、大きな声で言ってくださいまし」
「ッ…………」
アミィール様は涙を拭いながら、悪戯っぽい笑みで聞き返してきた。これは聞こえている。いつもの意地悪だ。
でも…………それすらも、愛らしい。
セオドアは急いで自分の涙を拭った。そして、アミィールを優しく見つめる。
そして、ちゃんと聞こえるようにハッキリ言った。
「女の子は____セラフィール。
男の子は_____アドラオテル。
…………どう、かな?アミィ…………」
セオドアはもじもじと顔を赤らめながら、言う。実は隠れて考えていたのは内緒の話だ。
「セラフィールと、アドラオテル…………素敵ですわ。
お初にお目にかかります、セラフィール、アドラオテル。わたくしの、セオドア様の可愛い赤ちゃん達。
わたくしはアミィール・リヴ・レドルド・サクリファイスでございます。
____わたくしの子として生まれてくれて、ありがとうございます」
アミィール様はそう言って、子供たちの額にキスを落とす。
……………本当に、俺の奥さんは格好いい。こういうことをさらりとする。
そんなの見たら、俺だってやりたい。
セオドアは子供達と向き合い、顔を近づける。
「セラフィール、アドラオテル、初めまして。
私は、セオドア・リヴ・ライド・サクリファイス。
愛らしい私達の子供達、生まれてくれてありがとう_____」
セオドアも、アミィールと同じ所にキスをした。
_____こうして、愛らしく小さい双子たちは。
最初に生まれてきたどちらかというとセオドアに似て穏やかな顔をした紅銀の毛の生えた女の子はセラフィール・リヴ・レドルド・サクリファイス。
次に生まれてきたどちらかというとアミィールに似て凛々しい顔をした群青色の毛の生えた男の子はアドラオテル・リヴ・レドルド・サクリファイス。
この国を担うことになるであろう双子たちが、この春の月の18日に、生まれたのだった。
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