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第23章 愛する息子と娘よ

素敵な御縁を

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 「うきゃー!」


 「あぶー!」


 「こら、2人とも、そんなに走らないで!」



 9ヶ月経ったある日の夜、セオドアの自室で子供達は動き回っていた。アドラオテルは最近覚えたハイハイで部屋中を駆けずり回り、セラフィールはアルティア皇妃に買ってもらった大きなぬいぐるみに跨りたくさんのぬいぐるみを引き連れて走っている。


 もはや動物園だ。赤ちゃんを動物扱いすることはわりとあるけれど、本当だった。もうほんと、止まらない。真夜中で寝かせないと行けないのに『きゃー』、『がおー』と大声をあげている。


 しかし、気持ちは分からないでもない。この2人は寝る時以外共に遊んでいないのだ。だからアミィール様の執務が終わる夜しか遊べない。アドラオテルはいつもセラフィールが帰ってくるのを扉の前で待っている。


 やめさせたいとは思うけれど、アミィール様は出迎えてくれた!ととても喜んでいるし、アドラオテルも悪気があってやっている訳では無い。ただ、寒いから俺が数時間もだっこしていないと行けないのは辛いが。



 とはいえ…………この動物もとい双子達はチート持ち。魔法で無理やり止めようにも止まらない。魔法を弾くし攻撃してくるのだ。 


 それでも止めるのが父親の役目である。


 「ッ、捕まえた!」


 「きゃー!」



 セラフィールを抱き上げると楽しそうな声をあげてバタバタと暴れる。可愛すぎないか俺の娘?天使だろう。マジで可愛いんだ。本当に。そして、1人を捕まえると必然的に…………


 「がうっ!」


 「ッ」



 ほんの少し痛みが走った。見ると____アドラオテルが最近少し生えた乳歯で俺のふくらはぎを噛んでいる。見上げてくる黄金と紅の瞳が綺麗で、アミィール様によく似てるから癒される。



 ほわほわと浮かれた気持ちになったセオドアの隙をセラフィールは見逃さなかった。浮遊魔法で床に降り立ち、次はアドラオテルより遅くたどたどしいハイハイで逃げ出す。そして、それを見てからアドラオテルはセラフィールの乗っていたぬいぐるみに跨って逃げる。



 つまり、無限ループなのだ。
 これを止めるのは俺では無理だ。


 止められるのは、俺の愛おしい御方のみ。



 早く帰ってきてください、アミィール様………………!


 「!」


 「あう!」




 そう願った時、子供達がふわり、浮かんだ。そして、浴室の方に引き寄せられる。そこには___心の中で呼んだ、愛おしい女。


 「あらあら、また遊んでいらしたの?アド、セラ」


 「ぶう~」


 「む~」


 少し髪の濡れているアミィールが優しくそう訪ねると、2人は頬を膨らませる。それをみてセオドアはその場に座り込む。




 「はあ…………はあ…………アミィ、ありがとう…………」


 「セオ様、また追いかけっこしていたのですか?」


 「ああ…………っふう。セラもアドも早くて、私では追いつけないよ。元気いっぱいなのは嬉しいけど大変だね」


 「ふふ、お疲れ様です、セオ様」

 「ん」


 セオドアとアミィールは互いの頬にキスをした。それを見ていたアドラオテルも、セラフィールに頬にちゅ、と吸い付いた。


 「あらあら、こちらも仲良しですね」


 「そうだね。………これ、将来結婚するとか言わないかな」


 「え?」


 アミィールは思わず聞き返す。流石にそれは、と言いたいけれどセオドア様は真剣です。



 「セラフィールをお嫁さんに行かせないと決めているけれど、アドラオテル相手なら否定できないな…………寧ろアドラオテル以外の男なんて許せないし………


 だがしかし2人は双子…………結ばれないというのは切ないな………」



 そう言って泣きそうになっているセオドア様。…………子供達が出来てから、セオドア様が面白いことを言うようになりました。今までとは違う意味で笑みが零れてしまいます。


 「ふふ、…………双子は結婚出来ませんが、いいご縁があるかもしれませんよ?」


 「…………あっても、セラフィールもアドラオテルもずっと私のそばにいて欲しいんだ」


 「ですが、そうなると、わたくし達のように素敵な気持ちになれないかもしれないじゃないですか。

 わたくし達は、お互いを見つけて、こうして共に居るんですよ?」


 「う……………」



 セオドア様は顔をひきつらせる。…………本当に、可愛らしい御方。


 アミィールは子供達を抱きながら、『セオ様』と呼ぶ。セオドアはそれを聞いて顔をあげる。それに合わせて唇を重ねた。


 なんの波乱のない日々に、このように幸せな気分になれる。………そんな素敵な御縁を、この子達に感じて欲しいのです、と唇で伝えた。

 セオドア様も、伝わったと言わんばかりにわたくしの頬を包んで深いキスをしてくださった。


 腕の中で子供達が同じことをしているのにも気づかず、2人はキスをしていた。













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