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第29章 主人公の裏設定

主人公の本当の故郷

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 アドラオテルに言われて、アミィールとセオドアは翼を見る。確かに___俺のフライの魔法の翼である。これは………代償ではなく………俺の………!?



 「失礼するわよ………って!なによこれ!おっきな羽根!」


 「騒ぐな、セラが辛い時に………セオ、アミィ、何が起きている?」


 「わたくしにもわかりません……っ、けれど、この翼は………セオ様と同じ、同じ翼なのです!」



 アミィールは涙目で訴える。アルティアとラフェエルはそう言われて見る。確かに、そうである。

 つまりこれは龍神絡みではない。
 ……………聞く必要が、あるな。



 「____セオ」


 「…………はい」


 ラフェエルに呼ばれて、セオドアは力なく返事をする。
 ………俺の、俺の血のせいで、セラフィールが傷ついている。苦しんでいる。俺の、俺の血のせいで…………こんなに、こんなに辛いのか…………アミィール様はこんな気持ちでセラフィールやアドラオテルの代償の時、泣いているのか………その気持ちが今、凄くわかる…………




 泣き出すセオドアに、ラフェエルはかつかつと靴を鳴らして、肩を掴んだ。



 「セオ、落ち着け。現実を受け止めろ。
 そして、………知っていることを話せ」


 「ッ、ラフェエル、皇帝………様…………私、は…………」

 「…………だめね、セオくん、今弱っている。

 とはいえ放置は出来ないわ」


 アルティアはそう言って、アミィールに抱かれているセラフィールに触れる。荒い呼吸に真っ赤な顔。………代償の心配はなし。ならば、少し呪術で眠らせましょう。



 アルティアはそう考えてから、ぽう、と黒い光を纏う。



 「………呪術・"眠りなさいスリープ"」


 「………っ!お母様!」



 アルティアの言葉に、苦しんでいたセラフィールはふ、と眠りに落ちた。アミィールは激情する。


 「なにをっ、なにをなさるのですかっ!」


 「眠らせただけよ。意識があれば辛いでしょう。………翼を見る限り、害はないわ。大方発現時の熱で熱くなっているだけ。

 それよりも………セオくん」


 アルティアは呆然と涙を流しているセオドアに言う。


 「なんでもいい。些細なことでもいい。なにか、何か知っていることがあるなら教えて頂戴。

 貴方は何故、フライの魔法で翼が生えるの?」


 「…………ッ」



 セオドアは、ごくり、唾を飲む。
 自己嫌悪に陥るのは今じゃない。俺の知っていることが、セラフィールを救うんだ………!





 「____詳しいことは、私も知りません。ただ、奇妙な言い伝えが、あります」


 「言い伝え?」


 ラフェエルはぴくり、眉を動かした。セオドアは涙を拭いて、口を動かす。



 「"オーファン家は元々空に住んでいて、地上の美女を好きになり天下りした"___その言い伝えです。

 確証はありません。けれど、私達の家系ではフライを使えば翼が生え、伝達魔法を使えば鳩になるのです。


 しかし、空になど人は____あ」



 そこで、以前アミィール様が妖精神の話をしている時に聞いた言葉を思い出す。空の妖精神、風の精霊が住む場所は___………



 「………___オーファン家はファーマメント王国出身、か」


 その答えを言ったのは、ラフェエルだった。アミィールは『しかし』と声を上げた。


 「ファーマメント王国の人間は地上で息が出来ません!そんなのっ、……」


 「原理はわからないわ。けれど………ファーマメント王国は確かに、翼の生えた人間しかいなかった。

 つまり、___オーファン家はファーマメント王国の血統を持っているのよ」


 「____ッ」









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