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第29章 主人公の裏設定

主人公の血筋

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 「____え?」



 突然『オーファン家』と言われ、顔を上げてしまう。女騎士は目を細めて俺を見ていた。


『サクリファイス大帝国の結婚式を見た時に、お前の翼を見た。アレは___オーファン家に許されし大翼』


 「待ってくださいまし、スカイ様。___オーファン家と、このファーマメント王国はどのような繋がりなのか、はっきりさせていただけませんか?」



 アミィールは黄金の瞳を冷たく光らせた。まるで『言うな』と言われているような気分になる。………アルティアもこの目をしていたな。


 スカイはそこまで考えてふ、と笑みを零した。


『その様子では………お前は分からぬようだな。オーファンよ』


 「は。………お恥ずかしながら、セオドア・ライド・オーファンは何も存じ上げません」


 スカイはそれを聞いて『セオドアか、良い名だ』と言って、立ち上がった。そして、昔話をするような口調で言う。



『オーファン家___それは、1000年前までこのファーマメント王国の王族だった一族の事だ』



 「………は?」



 王族?俺が元王族だと言うのか?平凡な主人公が?理解できない。だって、俺達は公爵家で、それで…………



 グルグルと考え出すセオドアの思考を読んだスカイは『最後まで話を聞け』と言って続けた。



『____今はファーマメント王国、と呼ばれているが、1000年前まではオーファン王国と呼ばれていたんだ。

 "天国にいちばん近い島"、………この国の者は、皆人間ではなく………お前達の言葉でいえば天使、という亜人だったのだ』

 「____では、セオ様………いえ、セオドア様は………」



『最後まで聞けと言うとろうが。話さんぞ。

 ………天使というのは天の使い。しかし、この世界には死神がいる。だから、天使というのは"醜く浅ましい生き物の邪念、全ての世界を滅ぼさんとした亡者の思い"で生まれた"龍神"と似ている。


 天使は"至福を感じ、ユートピアを心の底から愛した思い"なのだ。だから他の国と違い人口は少なく、地上に降り立てば呼吸が出来なくなる。醜い思いに弱いからな。

 けれど、オーファン家は____その、"愛者の思い"の結晶の一族なのだ。それ故にこの国の大天使__王として君臨していた』



 スカイはそこで言葉を切って、『失礼する』と言ってセオドアの顎を持ち上げた。


『その証がこの優しい群青色の髪と、慈愛の色である緑の瞳、そしてその子供の持つ大翼だ』



 「なっ…………!」


 「スカイ様!セオ様に触れないでくださいまし!」




『失礼、と言っただろう。………とにかく、オーファン家は心の底から優しい者の集まりでな、"自分達は地上の美女を見初めて降り立つ"と伝承しているが、現実は違う。

 "亡者の思い"である"龍神"の対抗勢力として、地上に自ら降り立ったのだ』


 「では、………セオ様は、わたくしの、………」


 アミィール様の声が震えている。
 きっと、俺が今喋っても、震えるだろう。


 俺達は_____天敵、だったのだ。
 龍神は"この世界を壊したかった人間の思い"。

 天使は"この世界を愛したかった人間の思い"。


 相容れない、存在だったんだ。
 …………こんな、こんなゲームだったのか?
 なあ、神様。……なんで、俺達をそうして絶望に落とすんだ?


 あんまりじゃないか……………。

 セオドアはそこまで考えて、涙を零した。アミィールも狼狽している。俺たちの運命は___そもそも、混じりあわなかったんだ。


 けれど。俺達は出会った。
 お互いを好きになり、愛し合い、………天使と龍神の間に、子供が出来た。

 それは___いい事なのか?


 「_____誰も、悪いとは言っていない」


 「…………ッ」





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