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第31章 『呪い』と戦う主人公
満月の夜に
しおりを挟む「…………すう」
「ぐがー」
「んん、…………」
寝室にて、ベッドに家族が寝ている。
その3人の寝顔を穏やかな顔で眺めているのは群青色の短髪、緑色の瞳のセオドア・リヴ・ライド・サクリファイスである。
彼はギャルゲー『理想郷の宝石』の主人公に転生したが、攻略対象キャラを選ばずサクリファイス大帝国の皇女の手を取り結婚し、子供を設けた現在22歳の乙女男子である。
「……………さて」
セオドアは全員に唇を落としてからベッドを降りた。前もって準備していた上着を羽織り、静かに部屋を出て懐中時計を見る。もう日付が変わる時間だ。アミィールが起きるのは4時。………少し、急いだ方がいいかもしれない。
セオドアは少し早歩きで窓の外を見る。
窓の外には大きな満月が青白く光っていた。
* * *
サクリファイス大帝国の地下には禁書庫がある。皇族しか入れないと言われているこの場所が"幻の島"・ワールドエンドに繋がっている。俺が来た頃にはもうアミィールの専属侍女・エンダーが控えていた。
「____セオドア様、中にて既に準備は整っております」
「…………ありがとう、エンダー」
セオドアはしばらく戸惑ってから、意を決してその壁の黒渦に入った。そこには___黒の長髪、黄金の瞳を持つ美女、このサクリファイス大帝国皇妃アルティア=ワールド=サクリファイスと紅銀の短髪、紅い瞳のサクリファイス大帝国皇帝のラフェエル・リヴ・レドルド・サクリファイスが居た。
「ラフェエル皇帝様、アルティア皇妃様、お待たせ致しました」
「遅いわよ。もう道を開いたわ。…………アミィールには、バレてないでしょうね?」
アルティアは妖しく黄金の瞳を光らせた。セオドアは頷く。
「ええ。確認しました。しかし、早く行かねば起きてしまいます。…………アミィール様は私が居ないと取り乱しますので」
「それは厄介ね。………ラフェー、私、やっぱりアミィールの部屋の時間を止めてくるわ」
「時間を止める…………?」
セオドアがそう聞くと『詳しい話はあとでよ』と言ってふ、と消えてしまった。ラフェエル皇帝は俺を見た。
「アルティアに任せれば大丈夫だ。
___それよりも、本当に行くんだな?」
「____はい」
セオドアは頷いた。
…………"幻の島"ワールドエンド。
そこに『呪い』がある。
『呪い』___10万年前、当時のサクリファイス大帝国の国民達が星の妖精神・ゼグスの為に命を差し出し、龍神に呪いを掛けた。その呪いにより、脆い体を苦しめる『代償』と連鎖反応を起こして発作が起きる。
俺は____その呪いを解くために、そのワールドエンドに行くのだ。
セオドアの言葉に、ラフェエルは大きく溜息をついて、口を開いた。
「わかった。………しかし、これだけは約束しろ。
私の言ったことを絶対に守れ。わかったな」
「は、お約束致します」
セオドアは頭を下げる。それを見てからラフェエルは祭壇のような物に手を触れた。
「では、行くぞ」
「あの、どう行くのですか」
「___この紙が入口だ」
「…………え?」
セオドアは祭壇を見る。1枚の紙には___前世居た世界にあったオーストラリアのような形をした島の絵。この紙が入口………?
戸惑うセオドアを他所に、『先に行くぞ』と言って紙に手を伸ばした。
「____!」
ラフェエル皇帝の身体が紙に入っていって、消えた。紙に吸い寄せられたように消えたのだ。セオドアは慌てて紙に触れる。
「……これ………」
手を伸ばすと、紙に身体が入っていく。変な感覚だが、………ラフェエル皇帝は入っていった。俺も入るんだ!
セオドアは意を決して、紙の中に入っていった。
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