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第1章 異世界転生と出会い
世界のひみちゅ
しおりを挟む「んちょちょ………」
「リング!少し早すぎるのではないか!?」
「………十分ゆっくりですよ」
あわあわと私の後ろで慌てるガーランドを他所にリングは面倒臭そうにそう言って本当にゆっくり歩いている。
はい、こちらアルティアです。現在3歳の私は歩く練習をしております。この前5ヶ月だったのにもう3歳って早くない?まあこの3年ただただガーランドに褒められまくった毎日でした。パパと発音すればお祭り、ハイハイすればお祭り、離乳食を食べればお祭り………もう毎日がお祭りです。多分、ガーランドの頭はわっしょいわっしょいなんでしょうね。
それはともかく、それにしては歩くのが遅いと思った人もいると思います。答えは、つい最近まで空飛んでたんですよ。空中歩行は完璧なんですが、それだと筋肉はつかないんですよね。発育に宜しくないなと。今までなかったけど、これから魔力が尽きる事があるかも、と思うとね。必要な訓練ではあるのです。
けど、いい加減ガーランドが五月蝿いです。龍の姿は黒くて大きくて、RPGに出てきたら確実に召喚獣よりも大きい生き物だと思うんですが、その姿で慌てられたら地面が揺れる。もう地震ですよ、歩行練習の邪魔です。
「だからガーランドうるさい」
「パパと呼ぶんだ!アル!」
「やだよ、べー」
私は歩きながらあっかんべーをする。パパと呼んでたのはほら、ガーランドと発音するよりはよっぽど言いやすいからであって他意はない。他意はないよ。いや本当に。
「アルティア様、転びたいんですか?」
「アッ、しゅーちゅーするからてをはなさないでくだしゃい……」
「都合のいい時だけ赤ちゃん語しないでください」
「……ぶぅ」
* * *
「さて、今日はなんの絵本が読みたい?」
夜、同じベッドでにこにこしながら『シンデレラ』と『おやゆび姫』の絵本を見せるガーランド。
「……またいせかいいったの?」
「いいや?カイテルにお願いして買ってきて貰った」
カイテルと言うのはガーランドの右腕とも言える悪魔だ。いや、右腕というよりは犬だな。ワンワン。なんでも言うこと聞くワンなワンダフルな悪魔である。
でも子供なので絵本というのは魅力的だ。この世界の文章は全く読めなくて不安になるけど、日本語なら読める。…けど、その前に。
「わたし、りゅーじんのはなし、ちゃんとききたい」
「……!」
龍神の話。それはずっと疑問だった。龍神とはそもそもなんなのか。いや、それだけじゃない。この世界はどうなってるのか私は未だに知らない。ガーランドは殆どこのアトランティスに居る。居ないとしても意識だけ。本体は此処に居る。加えて、この世界に生まれ落ちてから人間を見たことが無い。死んだのが18歳な訳で、数え年では21歳。大人な話も理解出来る……はず。
だから、聞いてみたのだ。
「りゅーじんてなに?このせかいってなに?にんげん、いるの?」
「………そうだねえ。アルはまだ3歳だよ?早いんじゃない?」
「はやくない、もうにじゅち」
21も言えない私、なんとも不甲斐ない。都合のいい時だけ3歳になるのよくないな。けど、ガーランドには通じたようだ。
「まあ、中身は大人だけどね。けどそうか~。気になるかぁ。」
「おしえて」
「やだ」
「………………」
「無言で炎の槍向けるの辞めようね?ベッドが燃えちゃうよ?
………大丈夫だよ、焦んなくていいんだ。まだまだ先は長いんだから。」
ガーランドはぽん、と私の頭に手を置いた。炎の槍が消える。……ガーランドはムカつくけど、この手は好き。温かくて大きくて。
「アル、この世界はね、秘密が沢山あるんだ 」
「ひみちゅ?」
「そう、ひみちゅ。我が知っている事を話すのは簡単だ。けど、それは我が見た"世界"だ。もしかしたら、アルには違う"世界"に見えるかもしれない。
我の見た世界を教えて、下手に先入観は持って欲しくないな。」
「なら、わたし、じぶんでみにいきゅ。あした!」
「明日はだぁめ。もっともっと大きくなって、……少なくとも、ちゃんと言葉が喋れるようになって、前世と同じくらい大きくなってから、ね?」
「 ………ぶぅ 」
私はむくれる。けど、魔法は使わなかった。だって。
ガーランドがとても優しくて、悲しい瞳をしたから______
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