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第1章 異世界転生と出会い
春の月の18 #次期龍神視点
しおりを挟むやっぱり月日が経つのは早い。
そんな事をぼんやり思いながら化粧をされている。リングではない。名前のない骸骨のメイドが数十人。昼から念入りに支度をされています。いつもは支度など簡易的なことしかしない癖に、今日はねちっこい。だけど。
___今日はガーランドから聞いた2年後の春の月の18なのだ。
この様子だと、"何か"が行われるのは確か。その"何か"は結局聞かせて貰えなかった。
自分で見ろ、感じろってさぁ………
そりゃあ私は18歳なわけで、1から10まで教えてもらう歳ではない。でも大事な日のことくらい教えてくれても___『オジョウサマ、ジュンビガデキマシタ』
「あ、うん。ありがとう」
私は仰々しく頭を下げるメイド達にお礼を言って、部屋を出た。ガーランドは龍の姿をしていた。
『来たか。………今日は一段と美しいな、アル』
「お褒めにあずかり光栄ですわ、ガーランド」
『そこはお父様だろう?』
「死んでもお父様なんて呼ばないので悪しからず」
私はにっこりと笑ってそういう。ふっ、私は大人になったのだ。ギャンギャン吠えていた数年前とは違う淑女。変態カイテルのセクハラを躱しながらも励んだ私の精神修行は成功と言っていいだろう。それよりも。
「ガーランド、首が痛いから人間になってくれない?見上げるのが辛いわ」
『悪いが、今日はそれが出来ないのだ』
「あら、珍しい。私が嫌がっても人間になってくっつくのに」
『本当は我も人間になってお前を抱き締めたいのだがね。………ほら、お客様が来たようだ』
「………?」
大きな門が、開いた。え、なに?あの門使えるの?
私が生まれてこの方、あの大きく立派な装飾のされている門が開くことはなかった。おまけにそこに辿り着くまでの道のりがない。空を飛ぶしか向かい側に行く方法なんてない、と人目で分かるくらい大きな亀裂があった。というか、私達がいるこの地面が浮いている。だからこそ使えないのでは?と疑問に思っていたが、それは杞憂だったよう_____だ?
「え……………………………?」
門が開いただけで、驚きなのに。更に驚きを与えてくる。門の向こう側にはリングと___彼が居た。
久しぶりに見た彼は、相変わらず綺麗な紅銀の髪とルビーのような紅色の瞳を携えていた。精悍さが増している。それだけじゃない。
沢山の宝石が散りばめられた豪華な王冠に、今まで見てきたどの服よりも王子様っぽい格好をしていた。
は?は?は?なんで……………?何が起きるっていうの?
頭が混乱している私を他所に、ガーランドは今まで聞いてきた声とは比べ物にならないくらい低く冷たい声を出した。
『…………名乗れ、サクリファイスの生贄よ』
「…………サクリファイス大帝国第1皇太子、ラフェエル・リヴ・レドルド・サクリファイスだ。
此度の、龍神殿の贄である」
彼___ラフェエルは亀裂の前まで来て堂々と名乗った。皇太子……つまり、やっぱり王子だった、って訳だよね?でも。
「贄、って……………?」
戸惑いを隠せない私に、そ、とガーランドの尻尾が触れた。
『文字通り___生贄だ』
「なに、それ…………」
「……………龍神殿よ、その女は貴公の一体なんなのだ。よもや本当に娘と言うわけではあるまい。
生贄の事さえ知らぬなど………」
ラフェエルが私を睨みつける。鋭い眼光に少しだけ怖くなった。いつも目つきは悪かったけど、別人みたい…………
『正真正銘、娘だ。……死にゆく貴様に知らせる事など何も無いと思っていたが………娘の後学の為、また、貴様の知りたがっていた我の存在について少々話してやろう』
ガーランドは、静かに笑った。
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