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第3章 森の妖精神と次期龍神
森の妖精神は次期龍神に屈服する
しおりを挟む次期龍神___否、もはや龍神といっても過言ではない程の力を有する女の言葉に驚く。
屈服の儀。__それは本来、一体一で己の力を競った末に行われる儀だ。少なくとも、このように軽い空気で渡せるものでは無い。然し女はさも当然のように言う。
「前払いよ。そうしたら私もラフェエルも無下にはできないしね」
『しかし、それではしきたりが…………………』
「じゃあ、やめる?
私は力ずくでもいいけどさ。それじゃなにも変わらないね」
女の言葉に、少し考える。
先程、"泣いているだけじゃなにも変わらない"と言われた。事実、泣いてもグランドは帰って来なかった。待てど待てど、彼は現れなかった。
何かを得るためには何かを差し出さなければならない。
それは自然の摂理だ。人間などは労力を売り、時間を売り、金銭を得る。神には無縁だと思っていたが、そうじゃないのだ。
わたくしが今捨てられるもの……………それは、古いしきたりだ。
グランドに会いたい。
その為ならばしきたりだって捨てよう。
それに。
……………純粋に、勝てる気がしないのだ。
先程の魔法_正確には魔法ではないのだが_を見て、それを悟った。
未だに幼い魂は不可思議な光に包まれている。わたくしが先代森の妖精神から聞かされた穢れた魂ではない。
だが、抗えない。
この龍神は…………………それだけ恐ろしく強大な力を持っているから。きっとこれから他の精霊達を屈服させて更に成長する。末恐ろしいと思うのと同時に____ほんの少しの期待を抱かせる。
この龍神ならば、_____ユートピアを巡る"死の螺旋"から、解放してくれるんじゃないか……………と。
そこまで考えて_____わたくしは、地に膝をついてその御手を持った。
『____わたくし、森の妖精神・リーファ=ユートピア=プレァズは、龍神様に忠誠を誓い、この世界の植物の生命をお預かり致します。
次代の龍神様の、健やかなる成長を』
そう宣誓し、手の甲に唇をつけた。
「おぉお…………!」
私はぶるり、震えた。マリンやアクアに屈服印を貰った時と同じ疼き。けど、あの時と違って冷たいわけじゃない。寧ろふわふわと優しい何かに包まれていく感覚。もしかしたら屈服印を行う属性によって違うのかもしれない。
そんなことを思いながらお腹を見たら緑色の横線が加わっていた。優しい色だなあ。おっと、名乗らなきゃ。
私は服をチェンジし、黒いドレスを身に纏った。そして、馬車の中でラフェエルに罰を落とされながら覚えた口上を口にする。
「___我はアルティア=ワールド=ドラゴン。この世界の頂点である龍神として、リーファ=ユートピア=プレァズの屈服を認めよう。
……………これでいい?ラフェエル」
「………………少し顔が固いが、まあいいだろう」
オッケー貰いました!これで屈服の儀は終わり!
「リーファ。安心して、私がグランドをこの国に帰らせる。
あと、生き返らせた大地はプレゼントよ。泣いてエリアスさんを困らさないでね」
『約束させていただきます、よろしくお願い致します、アルティア様』
リーファはやっと、笑った。
その光景を見ていたエリアスは口元を抑えてた。
………………………凄い…………………
何が?と聞かれても答えられない。何もかもが凄かった。リーファ様は温和な方ではあるけれど、妖精神様だ。その妖精神様が地に膝をつき、美しい黒髪と黄金色の瞳を持つ、自分よりも年下の少女に敬意を払っているのだから。
アルティア=ワールド=ドラゴン……………………私も、彼女のように、気高く美しい、強く優しい人間になりたい。
心の底からそう思った。
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