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第4.5章 次期龍神は魔剣を手にする
新たな馬車の旅
しおりを挟む翌日、私達は朝一でランテット邸を出た。またまた馬車の旅だ。というかね、冒険って本来こういうものなの?って疑問に思うわけですよ。そりゃあ馬車は楽だよすごく。座って本を読んだりラフェエルと勉強してたりエリアスと魔法についてのお喋りしたり、クリスティドの使う伝達魔法を練習したり、休憩時間はリーブの淹れた美味しい紅茶が飲めるから。
でもイマイチ旅をした気にならない。徒歩で仲間引き連れて森を歩いたり街を歩いたりしたい!モンスターと戦ってお金稼ぎとかしたい!
でも現実はそんなに甘くない。
歩くだけで疲れちゃうから空を飛んじゃうだろうし仲間はみんな王子やら姫やら普通に歩いてたら誘拐とかありそうで怖いしモンスターはいないしお金も作れるし。
前世ではチート能力があったら人生変わるだろうなぁなんて思ってたけど、実際なってみると退屈である。夢も希望もありません、ってか。
さて、そろそろなんでこんなに私がやさぐれているか理由を話しましょう。
「ねえ、アルティア、俺が特別に本を読んであげよう。あ、お菓子が食べたい?さっきリーブに作らせたものがあるんだよ。それとも膝枕かい?」
「……………………」
「……………………」
私とラフェエルは無言になる。このキャッキャウフフな男はダーインスレイヴと言う。昨日なんやかんやで半ば勝手に仲間になった。……………って。
「なんで馬車に乗ってるのよ!というか!ついてくるな!」
「だーかーらぁ、俺はずっと君を待っていたんだって。なんで馬車に乗っているかと言うと俺は"剣"だからね、持ち主の傍にいないと」
さも当然だと言わんばかりの口っぷりである。いくら怒っても冷たくあしらってもずっと引っ付いてる。いい加減にウザイ。ガーランド並にウザイ。実はガーランドだったりしない?
そう感じているのは私だけではないようで、馬車の外からクリスティドとエリアスが声を上げる。
「ダーイン殿、アルティア様が困っております。お戯れをおやめください」
「そ、そうですよ………!アルティア様とラフェエル様は婚約者なのです!他のと、殿方が乗っていると知られたら何を言われるか…………!」
「ラフェエル様、ダーイン殿を切り捨てる許可を」
…………とまあこのとおり、場が荒れています。殺してやろうかと魔法もどきも使いましたが幽霊は全て受け付けてくれません。ラフェエルだけでも手強いのにさらにこの男まで攻撃出来ないとなるとやさぐれますよ。剣とか言ってるけど実は憑依を狙ってる悪霊なんじゃない?とも思います。
「悪霊なんて酷いなあ」
「心が読めるんだったらいい加減察して欲しいんですけど?嫌がってるレディにその態度はないんじゃなくて?」
「でも俺は剣だし」
話が1歩も進みません。いつまでこんな冗談をいうつもりでしょうか?
「…………………………おい、男」
ふと、不機嫌そうに黙りこくっていたラフェエルが口を開いた。ラフェエルは頬杖をつきながらダーインスレイヴを冷たい目で見ていた。
「その剣というのはどういう意味だ?暗に従者だと騙ってのことか?」
「いや?文字通りだけど」
「……………仮にそうだとしても、その女は剣など扱えない」
「うぐ…………………」
私の顔が引き攣った。悔しいけどその通りだ。魔法もどきは使えるけど、剣や武術はからきしだ。教育の一環、と休憩時間、週に3回でやっているけれど私には才能がないらしい。いつもリーブにコテンパンにされている。
剣が使えないなら剣を握ることも無い。盲点だったけど追い払うには丁度いい!
「そ、そうなのよ!私は剣が使えないから!いらないわよ!」
「それなら大丈夫だ、"俺の剣は誰でも扱える"。
…………信用出来ないなら、試してみればいい」
そう言って、ダーインスレイヴは笑った。
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