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第5章 聖女、聖の精霊と次期龍神
次期龍神は聖女と対面する
しおりを挟む38日間の旅を終え、セイレーン皇国の天皇が住む皇居に来た。
私達はすぐに天皇の玉座で挨拶をした。いつも通りラフェエルに全てを任せて、私は礼儀作法に注意しているだけだった。
で、美しい庭園に囲まれた通路を歩く。いつもならこんな美しい庭園を見たらはしゃぐけれども、そんな気にはならなかった。
「………………」
「…………………」
私達の間に会話はない。
公的な場では最低限話すけれども、二人きりの時は全く話さない。今日始まったことじゃない。
あの日___馬車で私よりも聖女との旅の方がいい(的な)発言から今日までずっとこうだ。正直すごく気まずい。あの日から、罰も落ちなくなったし、嬉しいことのはずなのに…………………素直に、喜べなかった。
それどころか凄く寂しくて………………私は、おかしくなってしまったのだろうか。
ラフェエルと契約をしたのは私の意思じゃなかった。一緒に居るのも私の意思じゃない。望んだことじゃない。
なのに。
こんな気持ちになるのはおかしくない?
どうしたと言うんだ、私は………………
「ラフェエル殿下!」
「……………?」
ふと、可愛らしい声が聞こえた。
声が聞こえた方を見ると___黒と白のごまプリンの髪をツインテールにした、黒瞳、白いドレスを着た私より年下の女の子が駆け寄ってきた。ラフェエルも同じように見て、口を開く。
「…………………フランか?」
「はいっ、フランです!お会いできて光栄ですわ!セイレーン皇国へようこそ」
女はぺこり、と頭を下げた。可愛らしい仕草だ。皇女様かな?
そんなことを思っているとぐい、とラフェエルに肩を抱き寄せられた。
「……………お前にはまだ紹介していなかったな。
この女は私の婚約者のアルティアだ。
…………アルティア、挨拶をしろ」
「はじめまして、わたくしはラフェエル殿下の婚約者・アルティアと申します」
ラフェエルに言われて沢山練習した丁寧な言葉で少しドレスの端を持って会釈する、サクリファイス大帝国で貴族がする礼儀作法を行った。お?我ながら上手くできたんじゃない?
けど、一向に女の子の声は聞こえない。ほんの少しだけ顔を上げると_____あからさまに嫌そうな顔をしていた少女。
え?私、間違えたかな?というかさっきの可愛い顔はどうした?凄く顔しわくちゃだけど?けどぱ、とすぐに笑顔に変わった。
「ご丁寧にありがとうございます!私はセイレーン皇国の天皇の娘、"聖女"のフラン・ダリ・ジュエルズ・セイレーンと言います!」
聖女………………!まさかこんなに早くエンカウントするとは…………!確かに凄く可愛い。"聖なる乙女"って感じ!でもさっきの顔は何?
一人首を傾げていると、フランはずい、とラフェエルに近づいた。
「お久しぶりに会えて、フランはとても嬉しいです!ラフェエル殿下!…私、とても寂しかったですよ、ラフェエル殿下に会いたくて会いたくて、枕を濡らしていましたわ……………!
宜しければ、お茶でもどうですか?美味しいお菓子があるのです!」
それはもう激しいマシンガントーク。あれ?この子皇女だよね?聖女だよね?なんか凄くイメージがちがうな…………皇女と言うんだからお淑やかで言葉遣いが丁寧でってイメージを勝手に持ってたんだけど……………
いや、私のイメージはあくまで小説とか漫画とかで培われたものだし、よくよく考えればエリアスだって姫だけど姫っぽくないって思っちゃったし、偏見なのかなぁ。
応援ありがとうございます!
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