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第5章 聖女、聖の精霊と次期龍神

日本語を口ずさむ聖女

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 「それで………、でして………!」


 「……………」






 未だに喋り倒すフランを見ながらぼーっとしていた。


 この子良く喋るなぁ。そして私はノー眼中。いっそ清々しい。


 そんなことを思っていると、ラフェエルはぐい、と更に内側に私を抱き寄せた。



 「悪いが、私には婚約者がいる。婚約者がいる男に言いよるのは淑女としてどうなのだ?


 "平民あがり"の貴方は未だに礼儀を弁えないと伺っていたが…………どうやら本当のようだ」


 「……………!」


 ラフェエルはそう冷たい声で冷たい言葉を放った。フランは大きな瞳を更に見開く。そして、私は恐らく顔が真っ青だろう。





 この理不尽大魔王何言っちゃってるのーーーー!?

 相手は皇女で聖女だよ!?そんなに戦争したいのこの人!?怖っ!!!怖っ!!!!


 婚約者を強調した言い方に照れそうになるけどそれ以上にハラハラした。これ絶対、「酷い…………」とか言われ___「えへ!まだ勉強中なんですよ!」…………え。



 フランは笑顔でそう言う。それはもう輝かしい笑顔で。というか嬉しそうにも見えるんですけど?




 「そうですよね、婚約者居るんですものね!不躾でした!


 けど、どうしてもお話したくて……………、その、精霊の話とか」



 「「!」」


 精霊、という言葉に反応する。
 ラフェエルは前に「セイレーン皇国には高確率で聖の精霊がいる」と言っていた。ビンゴである。ならば話はしなくてはならない。



 「…………ラフェエル殿下、お話を聞きましょう」


 「……………ああ、フラン、部屋に案内を頼む」


 「私は"2人で"お話をしたいので、"婚約者"様には席を外して頂きたいのですが_____」



 「は……………」



 私は両手で口を塞ぐ。はぁ?って言いそうになったのだ。何を言っているんだこの子は?精霊と関わりがあるのであれば私の事だって知っているはずだ。



 ラフェエルも同じことを考えたのであろう。予想通りの言葉を発した。



 「……………精霊と関わりがあるのであればわかるだろう?この女のことを」



 「いいえ?"婚約者"としか聞いてませんね。……………まあ、知っていたとしても、その婚約者様を連れて来られるのでしたらお話しません」



 「………………」




 それはもう脅しでは?
 というか、脅しだよねこれ?
 ……………………でも、フランは本気らしい。


 面倒臭い。


 素直にそう思った。
 私は別に精霊の屈服印を欲していない。妖精神だって要らないって思っているわけだし。それよりもラフェエルの体面が心配だ。これで誘いを断って戦争を起こされた方がよっぽど後味が悪い。




 そう結論づけた私は、ラフェエルを見た。



 「……………ラフェエル殿下、フラン様がここまで仰っているのですからお誘いをお受けしたら宜しいのではないでしょうか?


 私は………………大丈夫ですので」



 「…………………!」



 私は、頑張って笑顔を意識して伝えた。
 ラフェエルは紅瞳をこれでもかと見開いてから、次は眉間に皺を寄せた。



 「………………………わかった」



 「では、さっそく____「その前に、この"婚約者"を部屋に連れていく」………そのような些事は従者に任せては?」



 「大事な"婚約者"だからな。…………行くぞ、アルティア」


 「あ、…………」


 私は少し強引に歩かされた。
 ちら、とフランを見た。フランは…………先程と同じしわだらけの顔で言った。



 「ナニソレ…………アノリュウジンハソコマデダイジダトイウノ…………?」

 「……………!」


 ______その言葉は確かに、前世で私も使っていた……………日本語、だった。











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