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第5章 聖女、聖の精霊と次期龍神
手掛かり皆無の"祈りの間"
しおりを挟むアルティアは目を閉じている。
ラフェエルを探しているのだ。契約者の特権として与えられた"力"。神経を尖らせるだけで契約者が何処にいるのかわかるのだ。
だけど…………………今回は役に立たないみたい。
全くと言っていいほどラフェエルの気配はない。先程リーブに用意してもらった地図に手を乗せ、手探りで滑らせる。セイレーン皇国を初め、サクリファイス、シースクウェア、ヴァリアース、グレンズス、行ったことすらない国々まで"視た"。
全神経を集中し私が知っている神や生き物__正確にはその神や生き物の持つ魔力だけど_を探す『特殊魔法・地図読解』の契約者版だ。沢山の魔力を世界中に巡らせるから結構疲れるからほとんどやらない上、今回は手がかりすらないからとにかく魔力を広げた。
けど_____何処にも、ラフェエルの気配はない。私の魔力が及んでない場所にいる?それとも死……………………
「アルティア様!」
「!」
そこまで考えた所でコンコン、というノックと同時に部屋の扉が開いた。目を開け見ると、クリスティド、エリアス、リーブ、ダーインスレイヴが部屋にはいってきていた。
本来であればノックと同時に入るのも、部屋にはいるのも許されないが、今は緊急事態。もっと言えば従者は皇居に入ってはならないけれど、ダーインスレイヴに頼み忍び込ませたのだ。
セイレーン皇国の鎧を身に纏った男3人の男とセイレーン皇国のメイド服を着た女に聞く。
「ラフェエルの情報は?」
「だめだ、兵士達の宿舎でそれらしい噂はありませんでした」
人を誑し込むことに関しては天才な爽やか王子・クリスティドは首を振る。
「えと、………、天皇様をはじめとする大臣の周囲に噂などはございませんでした。
ただ、聖女様であらせられるフラン様の行方がわからない、という報告が………」
オドオドしているけれど、唯一女で容易にメイドに扮せられる姫・エリアスはボソボソとそう言う。
「……………………"この皇居内にはいない"」
幽霊であり何処でも出入り可能な私の魔剣・ダーインスレイヴはどこか含みのある言い方で言う。
ダーインスレイヴは何か知っているっぽいけど、どうやら口を割る気はないらしい。この魔剣が喋らない、ということは"この世界に関すること"である可能性が高い。拷問で無理やり聞き出すことが出来たらそうしただろうが相手は幽霊。そして、話さないと決めたことは絶対話さないから当てにならない。"自分で探せ"ということなのだろう。
こういう所までガーランドに似ているな、と心の中で毒づいていると赤い液体を水玉模様のように張り付けているリーブが静かに口を開いた。
「セイレーン皇国のフラン様専属の兵士から少々手荒に話を聞いたところ、恐らく"祈りの間"にいらっしゃるとの事でした」
「……………祈りの間?なにそれ」
聞きなれない言葉に、私は聞き返す。
いかにもRPGに出てきそうな名前だ。
「"祈りの間"___それは"聖女"様が祈りを捧げる聖域です。聖女以外の者は入れず、その場所すら不明で…………こればかりは兵士さえも知らないらしいです」
リーブは悔しげにそう言った。
……………この中でラフェエルを1番に心配しているのは間違いなく彼だ。幼少期からずっと仕えてきて、この危険な旅にもついてくると自らついて行かせてくださいと頭を下げた程大切な主人が、行方不明なのだから。
聖女しか入れない聖域………………………そう言う設定はよくある。加えて今までの妖精神、精霊との戦いを含めて考えると…………そこに聖の精霊がいてもおかしくないように思う。精霊や妖精神の住処ならそれだけで聖域だと私でもわかった。
こじ開けることは可能だが、そもそもその"場所"が分からないのだから詰んでいる。
考えろ、考えろ……………………
いや、待てよ?相手が精霊絡みなら……………………
私はそこまで考えてクリスティドとエリアスを見た。お通夜のような雰囲気を醸し出している2人に向かって、言った。
「クリスティド、エリアス。
_____ここに、妖精神と精霊を呼べる?」
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