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第6章 変化と成長と新たな旅
弱気姫は"幻獣姫"となる
しおりを挟むアルティア様は、『力を貸す』と言ってくださった。
私は下げていた頭をあげる。 アルティア様は口元に笑みを浮かべていた。黄金色の瞳を細めながら言う。
「____とはいえ、"幻獣"は私が知ってる限り"この世界"では見たことがないわね。居るの?」
「いえ、わたくしもわかりかねます。アルティア様の召喚を見ただけです」
言葉にすると、なんとも烏滸がましいことだと再認識させられる。自信がなくなってきた。
しかし、アルティアは気にしないと言わんばかりに『そっか』といって耳朶を触った。しばらくそうしてから、再び言葉を紡いだ。
「じゃあ、やっぱり私の"想像"で作るしかないね……………………うーん、試した事ないから成功するかどうか分からないけど、いい?」
「………はい!」
「うん。いい返事。………………じゃあ、ちょっと失礼」
「………………………?」
アルティア様はそう言って、私の額_丁度森の妖精神様の契約印がある_に人差し指を添えた。何が始まるんだろう。
「エリー、いえ、エリアス。 貴方はどんな幻獣を作りたい?どんな意味を持たせたい?…………それを頭に思い浮かべて」
「は、はい 」
私の作りたい幻獣。
それはアルティア様をお守りするような存在を作りたい。足でまといになりたくない。苦しんでいる誰かを助けられるような、強くて優しい………………アルティア様のような幻獣がいい。
"誰も失わせない"、強い幻獣を_____
アルティアの指にエリアスの魔力が吸い込まれていく。アルティアは目を閉じてボソボソと何かを言った。
「_____!」
そう思った時、魔法陣が現れた。赤色の大きな魔法陣………………でも、魔法陣に描かれているのは治癒魔法の文字………………?
アルティア様は黒く長い御髪を揺らしながら静かに言う。
「エリアス・ラピュード・ヴァリアースの名において____幻獣創造」
パァ、と一際赤色の魔法陣が光輝いた。
そして。
赤い火の粉のようなものが頭上に降り注ぐ中、一際大きな炎の玉が鳥を象っていく。赤い身体に緑、青、金、黄……様々な色が差していき、神々しい生き物が大きな嘴を開いた。
『あなたが私の主人ですか』
「___!」
鳥が、喋った。わたくしは急いでアルティア様を見る。アルティア様は鳥を見ながら言う。
「エリアス、幻獣の声は主人しか聞き取れないの。
そして、主人は貴方。ちゃんと名乗って、名前をつけて、挨拶をして?」
「は、はい……………わたくしはエリアス・ラピュード・ヴァリアースと言います」
『エリアス様………覚えました。
私の力は貴方の力。
私の力は__癒しの炎"です』
「癒しの、炎……………?」
『私が攻撃をする度に、貴方や貴方の守りたい者の傷を癒す力にございます』
美しい鳥はぶわ、と炎の翼を広げる。びっくりするけど、その炎に熱さは感じない。
怖いはずなのに、無意識に近づいて、顔を触れていた。それこそ、アルティア様が聖の力を宿した大きな鳥の幻獣・ヴァルにするように。
同じ鳥の幻獣は大人しくそれを受け、再び口を開いた。
『ぜひ、この私に名前を下さい、エリアス様』
名前…………………何かに名前をつけたことがなくて、どうすればいいかわからない。どんな名前がいいのだろう……………………。人の傷を癒す、それでいて強いこの子の名前………………
「………………リンカネーションなんて、どうでしょうか」
『リンカネーション…………承りました。
私は貴方の幻獣・リンカネーションです。
私を呼ぶ時は、"転生の炎・リンカネーション"と唱えてください』
「転生の炎、リンカネーション……………」
わたくしは、心に刻むように口に出した。
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