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第6章 変化と成長と新たな旅
聖女の決意と魔剣の思い出
しおりを挟む「…………………っう……………」
しばらく泣いて、やっと落ち着いてきた。
やっぱり、アルティア先輩は____ヒロインになるべき人だ。
あんなに不遇な人生を送って、幸せを知らないまま死んで、…………今では人ですらなくなってしまったアルティア先輩。
そんなの、悲しすぎるじゃない。
残酷すぎるじゃない。
幸せになるべき人だ。ううん、私が………………させる。
物語はやっぱり、ハッピーエンドで終わって欲しい。
私は聖女として、同じ転生者として、____友達として。
支えたい。いや、…………支える。
神様、見ていてください。
私は_______必ず、アルティア先輩に幸せをもたらします。
そう決意したフランの顔にはもう涙はなかった。空を見上げ、大声で叫んだ。
「覚悟してよ!神様仏様アルティア様ーーーーー!!!」
_____この物語は、聖女の私ではなく次期龍神様がヒロインで"幸せ"を掴む物語である。
* * *
「覚悟してよ!神様仏様アルティア様ーーーーー!!!!」
「うおっ」
下から聞こえた突然の大声に、青紫の髪、黒い瞳のコート状の着物を着た男_魔剣_ダーインスレイヴはびく、と肩を揺らした。
見ると____目を真っ赤にした聖女・フランがふーっ、ふーっ、と鼻息を荒くして怒っていた。
こんな真夜中に何をしてるんだか…………まあ、あの小娘はいつもあんな感じか。深く考えるだけ無駄だろう。
にしても……………………青春だねえ。若いというか、青いというか………………
俺にもあんな時代があったな。そう、5000年前に……………………………
ダーインスレイヴはごそ、と懐を漁って何かを取り出す。
青い四角の箱。…………これは、この世界では貴重な古い映像再生機だ。
ダーインスレイヴはそれを額にくっつけ、目を閉じた。
* * *
『おい、何撮ってるんだよ』
俺の若い頃の姿_髪が今よりずっと短い、ほぼ坊主な頭_の姿がこちらを向いている。少し映像機が上下に動く。そして、映像機を持つ男の声がした。
『ふふふ、せっかく映像機が手に入ったんだから記念をね』
『おっ、いいなそれは!次期龍神のガーランドでーす!』
ひょこ、とガーランド_こちらは今と見た目が全く変わらない_が現れて、ピースする。若い頃の俺はきっ、とガーランドを睨んだ。
『この旅は旅行じゃないんだぞ!』
『似たようなものだろう?あったま固いね~、将来禿げるぞ?』
『貴様、殺すぞ!』
『やってみろよ、龍神ナメんなよ?に、ん、げ、ん』
『ッ、望み通り切り捨ててやる!』
俺とガーランドが取っ組み合いを始める。映像機の持ち主はすぐさま近づいてきた。
『喧嘩をするな!』
『絡んできたのはコイツだよ、俺ァ悪くねーし』
『貴様…………!おい!サイファー!罰を落とせ!』
『ええ…………私はアレを使うのは嫌いなんだ。痛そうだし、ガーランドが可哀想じゃないか』
『お前がそんなふうに甘やかすから図に乗るんだ!契約者としての威厳を持て!』
『流石サイファー!愛してるぜベイベ…………っぎゃぁぁぁ!!』
ガーランドが唇を尖らせて近づいて来ると、黒い雷__罰が落ちた。
『ハッ、無意識に罰を落としてしまった』
『落とすくらいなら上げるなよ……………』
『ふん、いい気味だ。それよりサイファー、映像機はもういいだろう?早くグレンズスに行くぞ』
『そうだね、行こうか……………ここを、こうすればオフに_____』
そこで、映像が終わった。
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