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第8章 氷の精霊、星の妖精神と次期龍神
人狼少年は氷の精霊に愛される
しおりを挟む『ぐずっ、ガロ、情けないところを見せてしまったな…………』
1時間ぶっ通しで泣いたシヴァは大量の鼻かみテッシュを横目に目の周りを赤くしながら言う。ガロはふるふる、と首を振る。
「だいじょぶ、アル様、ゴセンゾサマが、力を分けてくれたおかげ、ちょっと強くなった、ラフェーさん、言ってた。
恩人、大事、あと、ガロ、ゴセンゾサマ、嫌いちがう」
ガロは覚束無い口調で一生懸命フォローする。手足を動かして必死に言葉を紡ぐ姿にシヴァはふ、と笑みを零した。
「ははっ、ガロは本当に優しくて可愛い奴だな。…………ただユミルに似ている人狼、俺の血を色濃く受け継いでいるだけだったら俺はこんなこと言わねえが………………その綺麗で純粋な優しさに免じて俺が"いいもの"をやろう」
「?いいも______んっ!」
一瞬、何をされているのかわからなかった。
いや、今もわからない。
ボクは____シヴァとキスをしていた。
キスをするのが初めてなわけじゃない。奴隷だった時に無理矢理されてきた"ソレ"。けど、シヴァに嫌悪感やいやらしさは感じない。
「…………__!」
銀色の大きな魔法陣が産まれた。ボク達を囲んだ魔法陣の文字が自由に動き出す。
魔法文字はくるくると2人の周りを回ってガロの背中に染み込んでいく。
背中____冷たい。
ひやり、とした感覚が身体を震わす。
ぶるぶると震えるガロから、シヴァは離れた。その顔にはしてやったり、と書いてある。
『よし、これでいい』
「っぷは、な、なに、…………?」
『ん?"契約"だ』
「契約………………………………?」
未だに戸惑いを隠せないガロにシヴァはけたけたと笑いながらガロを撫でた。
『精霊も妖精神も気に入った人間に"加護"を渡せる。でも加護は繋がりが浅いからあまり役に立たねえ。
が、"契約"は___加護以上に繋がりが強固な行使力のある代物だ。困った時に呼べたり、魔力が強くなったり…………つっても、屈服印には劣るがな。
それをお前に授けたんだ。背中にちゃんと刻んでやったよ』
契約のことは知っている。クリスさんやエリーさんに聞いたことがある。それはとても凄いこと、なのに………………
「そんな、尊いもの、ボク、ふさわしくない」
『そんなことねえ。俺の血を濃く受け継いだ子孫で、人狼だ。弱点を強いてあげるとするならまだ子供だということぐらいじゃないか?
その証拠に、お前ピンピンしてるじゃねえか。普通、"契約"した直後は倒れるものさ』
「………………でも、ボク、まだ、なにも、しらない」
『知らないってことはまだ伸び代がある、って事だ。
お前は龍神に仕えると決めたんだろう?
……………本当は物凄く止めたいんだ。
龍神の歩む覇道は……………………過酷過ぎる。痛い事がいっぱいだ。深く傷つくことだってある。
あの嬢ちゃん_アルティアと言ったか_を哀れむほどにな』
シヴァはそう言って目を伏せた。泣いてた時よりもずっとずっと悲しそうだ。けれどそれはほんの少しだけで、すぐにニカ、と笑った。
『まあ、ガーランドの娘で、傍にあのダーインスレイヴもいる。
我が友・ゼグスが期待をしているし俺もそうだ。きっと何かが変わるのだろう。
その覇道を共に歩むというのなら契約の1つや2つ送りたくなるというものさ。
人狼であり氷の精霊の血を引くガロよ、お前のこれからの側近人生に幸あれ』
シヴァはそう言ってガロの額にちゅ、と唇を落とした。
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