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第10章 生贄皇子救出大作戦、始動
僅かに芽生えた感情
しおりを挟む『お前達龍神は人を殺すのになんの感情も抱かないのだろう?だから生贄などということができるのだ。
そんな者が守る?…………笑わせるな』
「っ、ぁあ…………!」
空の妖精神はレイピアで縦に肉を割いていく。
痛みの中、ぼんやりと思う。
………………その通りだ。
私は、人を殺すことをなんとも思わない。
人間は嫌いだった。
神様も嫌いだった。
それは根深くて、未だにその気持ちはある。
……………………だけど。
目を閉じれば、みんな___共に旅をする仲間の姿と、関わった妖精神や精霊の姿_____そして、ラフェエルの顔が浮かんだ。
『____!』
スカイのレイピアが動くのを辞める。アルティアが……………刃を手で掴んでいた。
そして、言葉を紡ぐ。
「殺すのになんの情も抱かないよ……人の心なんて、もうないのかもしれない………でもねえ、大切な人は____居るよ、沢山」
『ッ、離せ!』
「ッグ…………」
アルティアは掌から血を流しながらもそれを掴んで話さない。口からも血が流れているってことは、内蔵やっちゃったのかな………………でも、いい。そんなの、構ってられない。
「ラフェエルは…………ううん、ラフェエルだけじゃない……………私の大切な人全員死なせない…………………
その為に、私は____アンタに勝つ!」
『_____!』
アルティアはスカイを思いっきり蹴ってダーインスレイヴを握る。青紫の剣はドクン、と脈打った。
『よく言ったね、アルティア。
いい子な君に_____プレゼントだ』
「ッう!?」
剣のダーインスレイヴが光った。防御力、回避力、瞬発力、攻撃力、超攻撃力………………沢山のステータス向上魔法が勝手に溢れ出す。
……………魔法は使わないって決めてたのに…………ダーインスレイヴ、あんたはとっても勝手な人ね。
『お前には負けるさ。ほら、行こう』
うん_____うん!
「うぉおおおおおお!」
アルティアはスカイに向かって走る。スカイのレイピアが伸縮自在に、沢山の幻影を纏って放たれる。
アルティアは全てかわした。多少の切り傷で乗り切り懐まで来て_____
『ぐぁ………………ッ!』
スカイの胸元を一閃、切り裂いた。
空色の血が飛び散る中、アルティアの黄金色の瞳は____仄かに煌めいていて。
黒、空、黄金の色が___混ざりあって、とても綺麗だった。
* * *
_____私は、負けたのか?
地面に倒れるスカイは、オレンジ色に染まっていく空を見上げながら、思う。
私は龍神にまた負けたのだ。
ガーランドと言う男_今では現龍神だ_に負けた時のことを思い出す。あの時も、第1皇太子を巡ってだった。
私は___サイファーが、好きだった。
ずっと空から彼を見ていた。生まれた時からずっと見守っていた。
生贄として生きる第1皇太子は、初代ゼグスからずっと血にまみれていた。それが宿命だと酒池肉林を極め、戦場では沢山の命を奪う。そんな人間は嫌いだった。
けど、サイファーは違った。
死を受け入れつつも、それでもいつでも優しかった。第1皇太子としての教養を持ちながら、人をほとんど殺したことがなかった。
当時の龍神は不満だったようだが、それでも私はサイファーが好きだった。
興味から恋慕になるのは簡単だった。
___けど、サイファーはガーランドに命を捧げると言っていた。反対してガーランドに襲いかかった。それで負けて…………サイファーは、ガーランドと共にワールドエンドの地を踏んだ。
サイファーを助けると言っていたガーランドは、結局私との約束を破り龍神になった。
だから、私は_____…………?
不意に、身体が優しい光に包まれる。
光の方向を見ると_____憎きガーランドの娘が、治癒魔法を使っていた。
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