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第11章 "宿命"を変えるには?
次期龍神と生贄皇子 #4
しおりを挟む私は泣いた。
泣かないって、決めたのに。
楽しい雰囲気で、逃げようって言おうって。
宿命とか役目とか、そういうのがない所にどこまでも逃げよう、って。
でも、ラフェエルに怒鳴られた。
ラフェエルが怒鳴ることなんてほとんど無くて、びっくりしたのもあると思う。
けど、それ以上に____悲しかった。
死ぬと知っていて平然としているラフェエル。
放たれる言葉は私を龍神にする為のものばかりで。
……………死にたくないって、ラフェエルの口から聞きたかったんだ、私は。
私と生きたい、って言って欲しかったんだ。
______ああ、そうか。
泣いている私の両頬を、大きな手が包み込む。そして、優しく持ち上げられる。
月光に当たる綺麗な紅銀の髪、ルビーのように紅い綺麗な瞳、シワができるんじゃないか?と不安になるくらい眉を寄せている、ラフェエルの顔。
______私は、ラフェエルの事が………………好きなんだ。
そう思ったのと同時に______唇が重なった。
* * *
声を押し殺して泣いているアルティアの顔を手で挟んで持ち上げた。
月の明かりを乗せているのにも関わらず黒く真っ直ぐ伸びた長髪、龍神の証である妖精神よりも純度の高い黄金色の大きな瞳、涙に濡れてもなお____美しくて。
気づいたら、唇を重ねていた。
アルティアは、私に身体を委ねた。フライのような浮遊魔法が解かれて、私がアルティアを抱えて飛ぶ。
______どうしようもなく、愛おしい。
_____私だって離れたくない。
______逃げれるものなら一緒に逃げたい。
_____一生、一緒に居たい。
その気持ちを押し殺すように何度も、何度も唇を交わす。
時間よ、運命よ。
できることなら、時間を止めてくれ。
できることなら、私の運命を変えてくれ。
月と星に見守られながら、この気持ちが収まるまで____愛おしい女を抱き締め、熱い接吻を交わしていた。
* * *
「____旅は、やめない」
長く深い口付けが終わり、神殿の頂上に着地したラフェエルはアルティアを横抱きしながらそう言った。
アルティアは未だに熱い顔を背けながら口を開く。
「…………………そっか」
「旅をやめて、平民として暮らしても____運命は変えられない。何も、変わらない。
私たちに逃げ場など、ないんだ。たとえ逃げたとして……………私は、どこで何をしていても………
お前と一緒にいても、幸せを感じる事はないだろう」
ラフェエルの言葉が心に染み渡っていく。…………きっと、こう思っているラフェエルを力ずくで止めても………自分の意思を曲げることはしないだろう。
そんなラフェエルだから、私は好きになったんだから。
アルティアはまだ赤い顔でラフェエルを見上げて、言葉を紡いだ。
「…………………うん。私も行く。
というか、私が行かなかったら意味ない、もんね」
「ああ。最後まで____よろしくな」
「最後じゃないよ」
「?」
アルティアはラフェエルの腕から降りて、振り返る。もう赤く染まった頬ではない。
「____これからも、だよ」
そう言ってアルティアは、笑った。
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