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最終章 We are Free !
その時、生贄皇子は
しおりを挟む私は、アトランティスで立ち尽くしていた。
アルティアが_____初代龍神を巻き込んで、吹き飛んだのだ。
何も考えられなかった。
「アルティア様……………!」
「ううっ、……あぁ…………ッ!」
「ッ……………」
「なんで…………なんでなのよ………!」
「え、え?」
すすり泣く声と、戸惑いの声。
それらが"アルティア"が居なくなった事を物語っていた。
アルティアは____塵すら残さず、死んだのだ。
戦いは終わった。龍神ももう居ない。
私は自由になった。
けれど。
そこには___アルティアが居ないんだ。
「…………………………」
そこまで考えて、膝が崩れ落ちた。
震える手を見る。右手首には、黒い宝石が埋まった縁の紐。
それが虚しく光っている。
_______アルティアは死んだ。
______もう居ない。
______泣いても、騒いでも、帰ってこない。
______死のうと思った時は諦められただろう?
なのに、今は…………………諦められなかった。
認められなかった。
あの馬鹿面笑顔がないのが、あの生意気な顔がないのが、…………あの唇の感触がないのが……………認められなくて。
「……………アル。
アル。来い。
罰を落とすぞ、早く私の元へこい」
何度も、何度も契約印に魔力を込めて呼ぶ。いつもならこれで来る。…………でも、来ない。
嫌だ。
嫌だ。
…………いやだ!
「アルティア!隠れてないで出てこい!命令だぞ!なんで出てこないんだ!
死ぬなんて認めない!出てこい!…………出てきてくれ……頼む……!」
胸がはち切れそうだ、喉がカラカラだ、呼吸が出来ないんだ。
………………そうだ、一つだけ、会う方法がある。
ラフェエルは剣をすらり、と抜いた。
そして、自分の首筋に付ける。
_____アルティア、今、私もそっちに『させねーよ』…………!
動脈を掻っ切ろうとした剣を持つ手に褐色の手が乗った。見ると、太陽神・ドゥルグレが居た。
ラフェエルはぎろり、と睨む。
「邪魔をするな。……………俺はアルティアに逢いに行くんだ」
『だから、逢えねえっていってんだよ』
「巫山戯るな!これしか…………アルティアと会う方法などないだろう!」
『巫山戯ているのはどっちだ』
ドゥルグレの手の上に、白い手が乗った。空の妖精神・スカイがそこに立っていた。スカイだけではない。妖精神、精霊が揃い踏みだった。
「私が死ぬ邪魔をするなら、妖精神だろうが精霊だろうが許さん。
いっそお前らが私を殺せッ!」
ラフェエルの大声が、虚しくアトランティス内に響く。シン、と静まり返った雰囲気の中、口を開いたのは星の妖精神・ゼグスだった。
『お前が死んでも、アルティアはそこには居ないよ。
今、アルティアは____お前の右目に、"まだ"居るのだから』
「____!」
私の、右目に…………………?
自分の右目に触れる。それを見て、海の妖精神・マリンは言った。
『契約、まだ切れてないわよ。____今なら、復活させられるけど、どうする?』
契約印に居る……………?
わからない、何を言われているのかわからない。
けれど。
______アルティアに、逢えるのなら。
ラフェエルは右目から手を離して、妖精神達を見た。
「勿論_____復活させたい」
ラフェエルの右目にある黒い契約印が光った。
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